供給不透明の抗体カクテル療法、拡充希望する大阪府に策は?

2021.8.22 13:15

大阪府庁(大阪市中央区)

(写真1枚)

軽症に使える世界初のコロナ治療として注目され、政府が医療機関に対し投与を推奨している抗体カクテル療法。大阪府では定例会見で吉村洋文知事も、「感染が急拡大している今、集中して投与すべき」と発言しているが、調達量が限られているなか対策は練られているのだろうか。

軽症・中等症の患者に投与することで、重症化を防ぐ効果が7割認められている抗体カクテル療法。使われる投薬は中外製薬による「ロナプリーブ(以下:同薬)」で、その効果は高い。

国からの通達(事務連絡)では、各医療機関で使いやすいようにこの薬剤の扱いが緩和。これまでは、投与が必要な患者数を「ロナプリーブ登録センター」に申請して、1日から2日後、土日祝を挟むとさらに遅れて配送されるという形態で、薬剤が到着する間に重症化し適正投与のタイミングを逃すというのが課題だった。

しかし、8月17日の会見で菅総理は「きわめて効果が高い画期的な治療薬。十分な量を確保し、当初は申し込みがあってから届くまで3日かかっていたがすべてやめさせた。必要なところには事前に届き、初めて使うところでも次の日には必ず届けるように体制をとっている」と課題が解決されていることを説明した。

「一気に拡充、医療体制の悪循環を防止したい」

翌18日におこなわれた府の定例会見では、陽性になった人がすぐに抗体カクテル療法を受けられるよう一気に拡大させる方針を発表。

病院で1日〜2日の短期入院で同薬の投与を受ける「短期入院型医療機関」と、宿泊療養施設内に臨時医療施設を作って同薬の投与をおこなう「医療型宿泊療養施設」の2パターンで、適用患者にはすぐに打てる体制を強化するという。

「短期入院型」では府内12医療機関で1日50人、「医療型」では1日20人、このほか軽症中等症患者受入医療機関の9割となる113医療機関(8月18日時点)が投与できる体制を整備。

拡充を急ぐ理由について健康医療部の藤井睦子部長は、「中等症の病床がひっ迫すると重い方を優先して入院させるため、軽い方の早期治療ができないという悪循環を生みだしてしまう。大阪は、早く入院し早く治療していただくというのは現時点(8月18日時点)でなんとかおこなえているが、これから先は厳しくなる。そのための整備」と話している。

「陽性者全員が打てるわけではない」

吉村知事は、「感染が急拡大している今、集中して投与すべき。投与できる人が限定されているが、そのなかで出来る限り投与していく」と強気モードだが、供給量はどうだろう。

製造元の中外製薬に確認すると、「私共は5月10日に政府と合意をしております。具体的な供給量に関しては申し上げられませんが、2021年度分に関しては合意の下、しっかりと供給していきたい」と広報担当者。

一方、府の担当者によると、「供給量に関して我々はまったく把握していません。ロナプリーブを発注するのは病院自体なため、打った後でないと把握できません。現時点では2つの施設の運用に向けた準備を早急に整えることに集中しています」と、供給は不透明ながらも準備を進めている様子だった。

国が確保している在庫は20万、現時点では7万と少数である報道もある。連日、各地で過去最多の新規陽性者が発生しており、実際に供給が間に合うのか不安な点もある。

しかし、実際に抗体カクテル療法を受けられるのは、国が基準を示す「適用患者」。まず第一に、酸素投与を必要としない中等症1以下の症状であること。また陽性後7日以内で、重症化リスクがあるなどの要件があり、最終的には医師の判断となる。ちなみに無症状だと、有効性と安全性が確認されていないため受けることができない。

同薬を投与できる人数は分母に比べて少ないが、前出の藤井部長は「軽症中等症でも100以上の病院が打てる状態で待機している。入っていただいたら点滴できるので、カバーできると思う」と話している。

取材・文・写真/岡田由佳子

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