気鋭の監督・横浜聡子、初めて描く家族愛は「母親にも伝わってました」

2021.6.30 19:30

主人公・いとを演じた駒井蓮(左)、横浜聡子監督

(写真9枚)

『ジャーマン+雨』『ウルトラミラクルラブストーリー』など、新進気鋭の評判を一身に集めてきた横浜聡子。実に6年ぶりとなる長編は、生まれ故郷・青森を舞台に2つの「家族」を描いた『いとみち』だ。メイド喫茶で働く主人公・いとと血の繋がった家族とメイド喫茶での擬似的な家族の2つをテーマに、初めて「家族」の形を描く横浜監督といと役の女優・駒井蓮に話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤

横浜監督「『何も判らない幼虫』の方が自由で好き」

──まず、『いとみち』の『第16回大阪アジアン映画祭』グランプリ受賞おめでとうございます。

横浜:ありがとうございます。びっくりしました。

──僕は今年も(アジアン映画祭の)ほぼ全作品観ましたけど、とりわけコンペディション部門の密度は尋常じゃなくて。日本映画の受賞は初でしたから。でも『いとみち』って発表になったら「あぁ、そかそか当然ね」って、みんな納得するという。横浜さんの故郷・青森で津軽弁で描いた作品って『ウルトラミラクルラブストーリー』はじめ、4本くらい短編含めてあるじゃないですか。けれども、僕は今回がいちばんアヴァンギャルドだと思ったんですよ(笑)。

横浜:確かに。

──すっごく難度が高いというか。僕は最初に『アジアン映画祭』で観たから英語字幕が出ていて、ついそっちを読んでしまうっていう(笑)。

横浜:あ~、そうですよね~(笑)。

父(豊川悦司)と祖母(西川洋子)とともに暮らすいと(駒井蓮) (C)2021「いとみち」製作委員会

──で、今回英語字幕のないバージョンを拝見すると、確かに全然分かんないところはけっこうある(笑)。でも話を理解するのには全然支障がないし、おばあちゃんのギャグとかも分かるし。お父さん役の豊川悦司さんみたいに、東京出身だからいまだ100%は理解できないけど暮らしてられる、って感じが実感できますね。

横浜:おばあちゃんの使う津軽弁はすごく難しいっていう。

──まぁ、iRobotのところなんか爆笑ですけど。

駒井:あれ良いですよね~。

──横浜監督も青森出身とのことですが、撮影現場ではお2人で喋ってると津軽弁になったり?

横浜:なります。ずっと津軽弁でした。東京の打合せの時から(笑)。『ウルトラミラクルラブストーリー』(横浜監督の過去作・2009年)のときもそうでしたね。松山ケンイチさんも訛ってるし。青森に行くとそっちの言葉になっちゃいますね。

──『ウルトラミラクルラブストーリー』然り、横浜さんの映画は「不機嫌なヒロイン」の映画が多いんですよね。『いとみち』もその系譜に連なると思うんですよ。

横浜:同じです。サナギから脱皮したいんだけど、脱皮したところでどこに行けばいいか判らない。何も分からない幼虫の方が自由で好きですね。

──そこでもがいて、ちょっとサナギの皮から顔を出してみたのがメイドカフェっていうのがいいですよね。でもバイト先の話が進むにつれ、これは2つの家族の話なんだってことが明確になってくる。ひとつはもちろん、お母さんが欠落してしまった血族の家族。もうひとつはメイドカフェの店員による疑似家族。それにしても横浜さんが映画でここまで家族を扱うって珍しいですよね。

横浜:あまりというか、ほぼないですね。あるんですけど誰か1人欠けていることがほとんどです。

映画『いとみち』

全国の劇場で公開中
監督:横浜聡子
出演:駒井蓮、豊川悦司、黒川芽以 ほか
配給:アークエンタテインメント

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