国立は開館しているのに・・・2度も会期中閉幕した奈良県学芸員の悲しみ

2021.5.29 09:05

会期半ばでの閉幕に観覧希望の声が多くの声が寄せられたことから、急きょ5月27日~29日の3日間限定で観覧できるようにした奈良県立美術館(5月26日撮影)

(写真4枚)

緊急事態宣言を受け、ミュージアムを取り巻く状況は混乱。国立は開館するが、県立などは閉館するという不思議な状況が生じたのは、奈良県も例外ではない。そんななかで2度も自身の担当とした展覧会が会期途中で閉幕を余儀なくされた「奈良県立美術館」の担当者の思いを訊いた。

県の独自措置である「新型コロナウイルス感染症奈良県緊急対処措置」が4月27日に策定され6月20日まで実行中の奈良(5月28日再延長が決定)。それに伴い奈良市も「新型コロナウイルス奈良市特別警戒警報」を発出。そんななか、同館の深谷聡学芸員は「国、県、市町村がすべて同じ方向を向いてくれたら、良かったのですが・・・」と話す。

というのも「奈良国立博物館」は、『1400年遠忌記念特別展 聖徳太子と法隆寺展』を開催中だか、徒歩約10分に位置する同美術館は、臨時休館中という状況になってしまっているためだ。

「訪れる方にとっては、運営が国だから、県だからどうというのはないと思うので、曖昧な理由で振り回されるのは、美術館に限らず、『人に来ていただくこと』が仕事になっている方々にとっては不本意だというのが共通した思いだと思います。特に公共施設は一貫性なく、開けたり閉めたりするのは来館者にも運営側にも良い状況ではないと思います。個人的には正直、渾身の力の振り場を失ったという気持ちです」と深谷さん。

そんな深谷さんは、2020年は来館者を着実に伸ばしていた『田中一光 未来を照らすデザイン』も担当し、手応えを感じていたなかでの突然の閉幕を経験。そして、今回は4月17日〜5月30日まで予定していた『生誕130年記念 髙島野十郎展』が5月1日から休館となってしまった。

展覧会を開催するには、準備に数年かかるのも当たり前。テーマを決め、展示作品を集め、資料を選定し、展示会場のレイアウトや関係機関への資料提供依頼、後援依頼など下準備。担当学芸員だけでなく多くの関係者の尽力がある。

「それぞれの展覧会はどちらも渾身の力を込めた展覧会でした。どちらもコロナの影響で厳しい状況でしたが、そんななかでも(入館者数をみても)良い展覧会になるという手応えがあった。非常に無念ですが単純に悔しがることはできないです。私は学芸員であると同時に、奈良県職員という立場です。県立美術館が開館することで感染者を増やすことにつながってしまう訳にはいかないですから」と深谷さん。

新型コロナウイルス感染拡大で2度も自身の担当した展覧会が会期半ばで閉幕したことについて、奈良県職員として、学芸員として複雑な胸中を明かしてくれた奈良県立美術館の深谷聡学芸員

また「奈良国立博物館」のように事前予約制が導入できなかった理由について、深谷さんは、「急な休館だったので、それに対応する時間が無かったです。予約システムなどを準備、そして対応する人員も足りない状況でした」と説明する。

ただ、今回の『生誕130年記念 髙島野十郎展』会期半ばでの閉幕に観覧希望の声が多くの声が寄せられたことから、同館と県庁で慎重に検討を重ね、急きょ5月27日~29日までの3日間限定で特別公開されることに。鑑賞できるようになった人々のSNSからは、「構図がすばらしくて、興奮した。素敵な出会いになって、本当にうれしい」といった声も。

巡回展として、最多115点を展示し、全国初公開作品11点をすべて鑑賞できるのは同展のみ。当日9時45分から正面玄関入口にて当日分の整理券を配布(当日分のみ)。入館時間は、10時~15時の間で30分単位(各単位10人上限)。

取材・文/いずみゆか

『生誕130年記念 髙島野十郎展』

特別公開:2021年5月27日(木)〜29日(土)・10:00〜15:00
会場:奈良市登大路町10-6 奈良県立美術館
料金:一般1000円、大・高生800円、中・小生600円

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