元宝塚雪組トップスター・杜けあき「男役のときの歌は私の宝」

「もはやこれで、思い残すことはござらん!」(『忠臣蔵』)という名台詞を残し、鮮やかに宝塚歌劇団を去った杜けあきが久しぶりに代表曲を披露する
「自分としてはまだまだ、心だけは120%込めて」
──いま、コンサートに向けて稽古されるなかで感じることは?
私は宝塚を離れて28年目ですが、女優の仕事をしていると、まずあの声で歌うことはないわけですよ。当時は練りに練った男としての声、ときにつぶしたりもして創り込んだ「声」を土台に歌っていましたし、そんなに歌自体を掘り下げるというよりも、深く考えずにすごく気持ちよく歌っていたなーと思います(笑)。
いま歌稽古をしていると、ショーの歌はそうでもないのですが、お芝居の歌はやはり男らしい義経や内蔵助など、役の背景まで入らないと男役の声にならないので大変です。
──役を入れ込んで歌う感じなのですね。
そうです、あのときこういう気持ちだったなと、義経の品や内蔵助の心を思い出さないといけない。また、発声も音程の高い女優の声と男役の声とでは違います。
宝塚OGの方の中には、どちらも同じような声帯で歌われている方がいらっしゃると思うのですが、私の場合は全く違うので、自分の声を蘇らせるのに苦労します。
──でも卒業後に何度か歌われているのを聴かせていただいても、そのようなご苦労を感じさせない歌声だと思いました。
いえいえ、自分としてはまだまだで・・・! 寺田先生に叱られそうなのですが、心だけは120%込めて、と思っています。いまになって、男役の主題歌ってこんなにパワーがいるのだなと感じますね。
──実際、杜さんはどのように歌の力をつけていかれたのでしょうか。
もともと歌うことは好きだったのですが、テクニックがあるわけではなかったんです。これは下級生時代の話なのですが、大勢の歌稽古で寺田先生が私に「カリンチョ、歌に大切なことはなんやと思う?」と訊かれて、「心です!」と答えたら、先生は「違う、歌は音程や!」と(笑)。明るく仰られたのですが、深いお言葉でした。
──寺田先生からも色々なことを教わられたのですね。
はい。ただ、宝塚を辞めてから歌とは遠ざかっていた時期があり、やはり喉の筋肉はほかの筋肉と同じで使わないと衰えるんですね。男役の声は、毎日あのような発声をしているから出るのであって、また歌うとなると苦労しました。
今回も稽古しながら「うわー、大変!」と思うのですが、やっぱり男役のときにいただいた歌は私の宝だなと実感しました。本当に名曲ばかりで、歌い続けなければもったいない。昨年からコロナ禍で結構時間ができたので、歌と向き合う時間が増えたこともあり、よく歌っています。

──ご自宅で歌われるのですか?
そうです。こんなふうに稽古などの目的もなく、ただ歌いたいと思って歌ったことは、これまであまりなかったです。歌えば歌うほど、おもしろくも難しい。
宝塚の歌から、出演してきたミュージカルの歌までいろいろ歌うのですが、高い音程の歌と男役の歌を続けて歌うと、喉がびっくりします(笑)。全く発声が違うので、両立する大変さはありますが、逆に両立していける醍醐味もあるわけです。できれば両方の声を失わずにやっていけたらいいな、という「欲」がいまは出てきました。
──杜さんの前向きなスタンスは、著書『人生アドリブ活用術ー88の「愛言葉」ー』などで披露されている「愛言葉」からも感じます。
自分でも「前向きだな!」って思うことがよくあります(笑)。私のなかでは「生きる」ということは「前へ進むこと」というイメージがあって・・・。一歩でも半歩でも3cmでも前に進みたい。それは歌に関しても同じです。昨日より良くなっている自分を感じるとすごく喜びがあります。
──特にいま、心にとめている言葉はありますか?
一日たりとも同じ日はないなかで、「普通は尊い」ということを感じます。これまで長年、私は普通じゃない生活をしてきたと思うんですね。女性でありながら男性を演じることもそうですし、女優としてさまざまな女性を演じることもそう。
刺激的な日々が長かったなか、コロナ禍で必然的に家族と普通の時間を過ごすことがとても増えて、非常に幸せを感じました。このコンサートでも、普通に歌えることがなんて幸せなんだと感じるはず。劇場にお客さまがいらしてくださるのはとてもありがたいことなので、心を込めて務めたいと思います。
◆◆◆
同コンサートは「梅田芸術劇場メインホール」にて6月26日~27日、「Bunkamura オーチャードホール」にて7月1日~2日に開催される。出演者は日替わりで、杜は6月26日17時、27日12時、7月1日17時、2日17時の回に出演。チケットはS席12000円ほか、6月5日発売開始。
『寺田瀧雄 没後20年メモリアルコンサート All His Dreams“愛”』
日程:6月26日(土)~27日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:S席12000円、A席8000円、B席5000円
チケットは6月5日(土)発売
電話:06-6377-3800(梅田芸術劇場)
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
華やかスイーツ!神戸のいちごビュッフェまとめ・2026年版
NEW 2025.10.20 14:00 -
華やかスイーツ!大阪のいちごビュッフェまとめ・2026年版
NEW 2025.10.20 11:00 -
大阪アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.10.16 11:00 -
大阪・関西ランチビュッフェ2025年版、ホテルの食べ放題を満喫
2025.10.16 10:00 -
京都「オーバーツーリズムって何?」#空いてる国宝萬福寺[PR]
2025.10.15 18:15 -
【大阪・関西万博2025】半年間ありがとう!地元編集部が取材した人気グルメから穴場スポットまとめ
2025.10.13 11:00 -
淡路島の「日本酒」に注目!秋の旬と味わう旅へ[PR]
2025.10.10 17:00 -
京都アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.10.8 11:00 -
港町の心地よさに浸る、OMOろい旅 in 函館[PR]
2025.10.7 16:00 -
大阪スイーツビュッフェ・リスト2025年版、ホテルで甘いものを満喫
2025.10.6 00:00 -
現地取材で発見!知らなかった宇治の魅力【2025年最新版】
2025.10.1 08:30 -
なぜこんなに「宇治抹茶」が世界的に人気なのか?[PR]
2025.9.30 08:00 -
写真を撮って…豪華賞品ゲット!期間限定コンテスト[PR]
2025.9.29 19:00 -
話題の新作ノンアルビール、飲んでみた[PR]
2025.9.24 11:30 -
Osaka Pointでおいしくたのしく大阪めぐり[PR]
2025.9.22 17:00 -
万博・ポーランド館で人気、現地さながらの体験とは?[PR]
2025.9.12 13:30 -
万博で日本一やかましい祭!?三重の魅力を1日で堪能[PR]
2025.9.12 07:00 -
神戸アフタヌーンティー2025年最新版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.29 10:00 -
大阪から行く高知のおでかけ・グルメ2025最新版
2025.8.22 17:00 -
大阪ビアガーデン2025年版、編集部取材のおすすめポイントも
2025.8.22 12:00 -
京都・滋賀のおすすめビアガーデン2025年最新版
2025.7.23 13:00