写真家・森山大道の秘密に迫る映画「普段の佇まいを」

ふと目に留まったものは次々と撮影していく森山大道。(C)『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい写真家 森山大道』フィルムパートナーズ
Tシャツにジーンズ姿、街を徘徊しながら、コンパクトカメラを手に提げて、思いのままに撮る、撮る、撮る。「スナップショットの帝王」という異名を持つ、世界で最も前衛的な写真家・森山大道、82歳(撮影当時は80歳)の日常だ。
1968年、『にっぽん劇場写真帖』で、写真のタブーだった、アレ・ブレ・ボケをフィーチャーした作品を発表し衝撃のデビュー。以後の高い評価は国内にとどまらない。2012年には、アメリカの巨匠写真家ウィリアム・クラインと森山を対峙させる企画展『William Klein + Daido Moriyama』がロンドンの「テート・モダン」で開催されてアート界の話題をさらい、写真のノーベル賞と呼ばれるハッセルブラッド賞も受賞した。
2021年7月にはユニクロ「UT」とのコラボも控える森山大道。ただ、半世紀を超える長い間、メディアにすすんで出ることはなく、「生きた伝説」として神秘のベールに包まれてきた。
そんな彼をその作品と内面にクローズアップするドキュメンタリー映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』が4月30日から関西で順次公開。監督、撮影、編集を手掛けたのはこれまでテレビのドキュメンタリー番組を手がけてきた岩間玄監督。彼に映画を撮った背景や、森山の魅力について訊いた。
森山大道の決定的名作『三沢の犬』に導かれて
1996年に美術番組『路上の犬は何を見たか? 写真家 森山大道1996』を制作したのが森山との初めての仕事だったという岩間監督。そもそもの出会いは、偶然に見かけたというかの有名な作品《三沢の犬》だったそうだ。

「僕自身は、写真に興味があったわけでなかったんですが、20代に人生の岐路に立って、落ち込んだり、ちょっとやさぐれたりしていたとき、たまたま入ったギャラリーで《三沢の犬》を見たんです。誰が撮ったのか、どんなに有名な作品なのか、そのときは全然わからないまま、『これは俺だ!』と思ったんですよ。しかも、それから折に触れて、あの《三沢の犬》が自分の眼の前に現れる。面白いのは、そのときの自分の気持ちの持ちようによって、犬の面構えが変わって見えてくるんです。そこで、森山大道という、すごい表現をする写真家がいると分かった」。
「スナップショットの帝王」の、意外すぎる素顔
当時、テレビ番組の制作に携わっていた岩間監督。思うような仕事ができず「最後にすごく会いたい人に会いに行って、その番組を1本作ったら、仕事を辞めよう」と思いつめていた。その「会いたい人」とはもちろん、森山大道。
「ネットもない時代ですから、まず情報がないんです。大道さんがどんな人か、どこにいるのか。作品はパンクでアグレッシブな感じがするし、『大道』という名前の字ヅラからして、なんか怖い(笑)」。断片的な情報をたどって、探して、展覧会の会場で、緊張の対面を果たした。「こちらは悲壮な覚悟だったんですけども、森山さんは写真から受ける印象とは違って飄々としていて、またやさしくて、とても繊細な人でした」。
撮影にあたって、当時29歳の岩間監督は、覚悟を決めた。「自分には経験も実績もない。ただひたすら好きだという思いで追いかけてゆくってことしかない。大道さんがスナップされているところについて行って、その後ろから撮らせてもらったんです。そうすることで、背中から大道さんの写真に対する姿勢や考え方、普段の佇まいが、自然に撮れた」。
この映画でも、説明もナレーションもなしで延々と映し出されるのは、森山のスナップ風景だ。新宿、池袋、秋葉原、渋谷、青山と場所を変え、街や人に反射するように素早くシャッターを切る動きは、疲れを知らないハンターのようだ。写真家と街とのエンドレスな交感が、スクリーンの上に流れて行く。
劇中で森山が「写真撮ってて、生活して、そこでヒリヒリヒリヒリするものって感覚しますよね」と言う。そんな「スナップショットの帝王」の胸の内が、言葉なくして映し出されている。
『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』
2021年4月30日(土)公開
出演:森山大道、神林豊、町口覚ほか
監督・撮影・編集:岩間玄
音楽:三宅一徳
配給:テレビマンユニオン
関西の上映館:京都シネマ(4月30日〜5月6日 /再映予定あり)、神戸アートビレッジセンター(8月14日〜8月27日)、シネ・リーブル梅田(6月4日〜)
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