「女の敵は女じゃない」・・・男の浮気から、女子の関係性を描く注目作

2021.3.7 17:15

兄の浮気相手を激写しようとする主人公の高城洋子を演じる笠松七海。(C)2019「おろかもの」制作チーム

(写真8枚)

結婚間近の兄が浮気をしているのを目撃したら、高校生の妹はどうするのか・・・浮気相手に「結婚式、止めてみます?」とふいにした言葉から、不思議な関係性が築きあげられていく二人を中心に描いた自主制作映画『おろかもの』。

若手映画監督の登竜門である和歌山『田辺・弁慶映画祭』でグランプリを含む史上初の最多5冠を獲得するなど、数々の映画祭で絶賛されてきた同作品。関西では3月12日から順次公開。

鈴木祥監督と共同監督を務める芳賀俊(はがたかし)監督に、初めて今回映画を撮り始めた理由から、作品に描かれた実体験まで、映画通ならではのエピソードを交えて話を訊いた(一部ネタバレあり)。

取材・文/ミルクマン斉藤

「日本映画界の縦社会的なところが好きではない」

──なにより素晴らしくおもしろい傑作で驚きました。でも芳賀監督と鈴木祥監督の共同監督になってますよね。そもそもは日本大学芸術学部出身という縁ですか?

日芸の1年生の頃、入学した初めにレクリエーションで、みんなで軽井沢に行って、そこで写真を撮ったり、いろいろ打ち解けるという会があったんです。

その時に、今回の脚本を書いた沼田真隆くんが僕の隣に座ってて、そこで好きな映画の話とか話して。沼田くんは日本映画がすごく好きで、僕は洋画が好きで、お互い影響し合ったんですね。鈴木くんとは軽井沢に着いて写真を撮りあってるときに出会って、なんともすごい写真を撮りまくってるなと思って。

──どんな写真を撮ってたんですか? 鈴木さんは。

人形をカップ麺のゴミがある場所に突っ込んで足を撮ったりね(笑)。そこから付き合いが始まって、2年の実習、3年の実習、4年の卒業制作と、僕は撮影だったんですが3本とも鈴木監督と組みました。

これってけっこう稀で、みんなコロコロ変えていくんだけど、僕からこの監督を盗ったら許さんぞ、とずっと一緒にやって た(笑)。卒業したあと、いろいろ映画作りたかったんですけど、卒業制作の資金繰りとか大変だったんで、しばらく僕はプロの現場で技術とか学んでいました。

──なるほど、修業時代があったのはこの映画の出来から見て分かります。

でも「もっと良くできるんじゃないか?」と思う瞬間が現場ではたまにあって、フラストレーションがどんどん溜まっていってしまった。

今の自分たちで、良い面子を集めて少人数で撮ったらもっとおもしろいものが作れるのでは、と昔の仲間を結集して、この作品を作ったんです。

映画・CM 等で撮影助手として活動し、今回が初監督砂浜となる芳賀俊監督

──なるほど。2016年製作の『空(カラ)の味』(撮影が芳賀監督、照明が沼田さん)というのも同じ仲間の映画なんですか?

そうですね。『空(カラ)の味』は塚田万理奈監督に撮影をやってもらえないかと頼まれて、じゃあクルーを集めるねと沼田や仲間のスタッフを呼びました。鈴木にも助監督として参加してもらいました。

塚田組はあくまで塚田が中心なんですけど、今回はみんな直列繋ぎと言うよりは並列繋ぎなので、同じような感覚でやってるような感じでした。

──では、監督二人と沼田さんと三人で雁首そろえて作ったというような感じなワケですね。沼田さんももともとは撮影専攻だったとか。

撮影コース出身なんですけど、脚本のセンスがすごく高くてですね、学生の頃に自主映画を撮ろうというときに沼田くんが脚本を書いた作品があって。クライマックスで遊郭が燃え落ち、煤だらけの顔で彼女は笑いながらどうのこうの、みたいな。撮れねえじゃん、こんなの(笑)。

──あははは、予算無視、観念先行(笑)。

確かにおもしろいけど撮れないからって、それは採用されなくてですね。でもすごいの書く人だなと思っていました。

彼もとにかく映画が好きで、映画観た後で「あれ、おもしろかったね」って話すると、「でも、これをこうしたらもっとおもしろかったんじゃない?」ってアイデアを言ったりして、天才じゃんって思った。

──台詞のセンスが素晴らしいよね。この映画、トップシーンからサスペンスがあふれてるじゃないですか。兄さんの彼女にキャメラを構えてる彼女のアップから。なのにだんだん笑えてくる。サスペンスと笑いが同居してるんですよ。決して重くさせない台詞のセンスがちょっとズバ抜けてるなと。

そうですね、面白い台詞を沼田くんがパッと書いてくるんです。でも、脚本になかった台詞を役者がポンと言ったりとか、私はもっとこういう言い回しがしたいとか、そうした連携も合わさって、本当に全員で作った映画が生まれたという印象です。

僕が「台詞は全部一字一句絶対変えないで」みたいなことをしてたら生まれてない台詞もあったりして。そういう日本映画界の縦社会的なところが好きではないところもあるんで。役者にもっと自由にやらせてたらもっと良くなるんじゃないか、ってのもあったんです。

僕が行った良い監督の現場では助監督がぽろっと言ったことを「それ、おもしろいね。やってみよう」って言ったりするんですよね。それがすごく素敵だなぁと思っていて。実際にハリウッドとかでもそうしたスタイルでやってるチームが沢山あるので、よっぽどの天才で無い限りそれで良いんじゃないって思ってます。

『おろかもの』

監督:芳賀俊、鈴木祥 
脚本:沼田真隆
出演:笠松七海、村田唯、イワゴウサトシ、猫目はち、葉媚、ほか
配給:MAP+Cinemago
(C)2019「おろかもの」制作チーム

関西の映画館:京都みなみ会館(3月12日〜)、シネ・ヌーヴォ(3月13日〜)、神戸アートビレッジセンター(4月17日〜)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

写真ランキング

エルマガジン社の本