震災復興を願い子どもらに歌い継がれる曲、神戸市歌に指定へ
阪神淡路大震災の復興を願って作曲され、多くの子どもたちに歌い継がれてきた歌『しあわせ運べるように』。この曲が、神戸市の2番目の市歌として指定されることが、1月14日の市長定例会見で発表された。
1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災の直後に、神戸市内の小学校に勤める音楽教諭・臼井真さんが作詞・作曲した同曲。臼井さんは震災で自宅が全壊し、避難先の親戚宅で神戸の街が変わり果てた様子をテレビで見て、衝動的に作曲したという。
完成した歌はまたたく間に市内に広がり、いまでは学校や震災追悼行事だけでなく、ルミナリエ、神戸マラソンのスタート前など、さまざまなシーンで歌唱。
また、東日本大震災や熊本地震が起こったときには、歌詞の「神戸」の部分を各地名や「ふるさと」に変えて歌われ、地域を越えて人びとを元気づけた。
会見で久元喜造神戸市長は、「震災を経験した人が少なくなり、震災の記憶をどう継承するかは、いつも議論になっている。記憶はその人だけのものだが、この歌は震災後に生まれた子どもたちの学校でずっと歌い継がれてきた」と紹介。
また、「四半世紀を超えた区切りとして市歌に制定し、音楽の力で震災の記憶を風化させることなく将来の世代に伝えていきたい」と、制定理由を説明した。
会見では臼井さんのビデオメッセージも。「震災直後に、ふるさと神戸が『消えてしまった』という想いから、子どもたちに希望を託して作った歌。26年経ち、認めていただいたことがとてもうれしく、想いを込めて歌い継いでくれた神戸の子どもたちに、感謝の気持ちでいっぱいです」とコメントした。
ところで、「2番目の」市歌ということは、すでにひとつ目の市歌があるということ。現在の市歌は1951(昭和26)年、戦災からの復興を願って作曲されている。
しかし、神戸で生まれ育った筆者もこの歌を知らず、久元市長は「年配の方は愛着をもつ方もいるが、全体としては知らない人が大半」と現状を認めたうえで、「存在する以上は、できるだけ歌っていただきたい思いはある」と話す。
震災を経験した人が『しあわせ運べるように』に涙し、励まされたように、きっとひとつ目の市歌も、戦後復興において大きな役割を果たしたのだろう。今回の市歌制定で、この市歌の存在が浮かび上がる機会になるかもしれない。
『しあわせ運べるように』の神戸市歌制定は、阪神淡路大震災の発生から26年を迎える1月17日を予定している。
取材・文・写真/合楽仁美
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