井筒和幸監督、8年ぶりの新作「ずっと青春の名残りを追い続けてきた」
井筒和幸監督の8年ぶりの新作『無頼』が、関西地区では12月18日から順次公開。一般映画デビュー作となった『ガキ帝国』(1981年)から『岸和田少年愚連隊』(1996年)、『パッチギ!』(2005年)などの作品で、やんちゃな活力にあふれた、1970年前後の大阪、京都の若者たちを描いてきた井筒監督。
『無頼』はそれらの作品とは違い、およそ40年間を背景に、ひとりのアウトローの生き様から戦後日本を映し出す渾身の大作だ。あえて今、なぜ「昭和のやくざ」に焦点を当てた作品を手がけたのか・・・監督に大阪で話を訊いた。
取材・文/春岡勇二
「昭和史を映画で残しておかなければいけないと・・・」
──ひとりの男の半生を追って、やくざ社会を正面から描くというのは、監督のこれまでの作品になかったですよね。
10代の不良ばっかり描いてきたからね、ここらで大人の不良を撮ろうと思った。いや、そうじゃないな。それよりも、やくざとして生きたひとりの男を通して、「昭和」という時代そのものを見つめ直してみたかったというのが本当かな。
──企画というか、作品の構想というのは以前からあったのですか?
10年ぐらい前だけど、前作の『黄金を抱いて翔べ』(2012年)の準備をしている頃、先輩のジャーナリストの人たちと座談会というか飲み会があって、昭和のやくざの話をいろいろ聞いて面白かったの。それをいつか映画にしてやろうとは思ってた。
今回の脚本は、年代記の軸になっている20人ぐらいの主な登場人物たちに、先輩たちから聞いたやくざのキャラやエピソードを振り分けて書いたんだけど、皆な生き生きとしてきて愉しかった。あと、自分の思う戦後昭和の理想と夢の時代を残しておかなければいけない、という気持ちもあった。これは強かったね。
もしもだれかがやってくれて、それが納得できるものだったらやらなかった思うけど、だれもやってくれないから、こうなったら自分でやるしかないなと。
──なぜ「昭和」なんでしょうか?
欲望と虚栄の時代だから。戦争で1回ぺしゃんこになって、奇跡の経済復興を果たして、オリンピックやって万博やって、ついには狂乱の資本主義に踊って弾けて。その間には安保闘争があって、学生運動や三菱重工爆破事件やロッキード事件があって、オイルショックみたいなものまであって。劇的な出来事がいっぱいあった。
こういう時代には、良くも悪くも個性的な無頼漢が現れる。文化人でも経済人でも政治家でも。また、終りも一遍に来るんだ。昭和が終わると美空ひばりまで亡くなってしまうんだな、なぜか。その後の平成の30年。目新しい事なんて実は何もない。電話がスマホに変わっただけ。強烈な個性の人間も出てこない。平成はやっぱり映画の物語においても空白な30年なんだ。
──そういう気持ちで臨まれた今回の作品の現場ですけど、若い俳優さんたちは大丈夫だったんですか。昭和の出来事など知らない世代ですよね。
栞(しおり)を作ったよ(笑)。昭和の出来事が書き込まれた、歴史の栞。映画現場という冒険旅行に行くんだから、修学旅行の時に持ってくようなやつ。うちの助監督たちはいつも時間をかけて丁寧に作ってくれる。俳優たちはそれ一生懸命読んでたよ。けっこう必死で勉強してくれてたな。
──昭和を見つめ直すのに、やくざとして生きた男、アウトローの人生を通したのはなぜですか?
日本が戦後復興を遂げたのは、誰もが欲をむき出しに資本主義を全うしたから。資本主義は、悲しいかな、この映画の主人公のようなやくざ者を生み出してしまう。
富める者があれば、その周りにはたくさんの貧しき者がいる。彼らは貧しさゆえに社会の周辺に追いやられてしまう。けれど、彼らももちろん生きていかなきゃならない。誰にも頼れず、どこにも頼れず、徒手空拳で。いわば「寄る辺なき者たち」ですよ。
そんな男の、なぜそんな生き方をしたのかを描けば、そこには、1950年代から90年代までの昭和史そのものが見えてくる。
──「寄る辺なき者たち」、監督の言われるところの「無頼」ですね。
そう。「無頼」というと「ならず者」みたいな悪いニュアンスと、一方で、ほかを顧みず、自分の我を貫いて生きる、傍若無人だけどかっこいいみたいな捉えられ方をしているけどそうじゃない。
「無頼」は、誰にも、なんにも頼ることができない、ひとりで生きていくしかない人間たちのこと。頼らないではなく、頼れない者なんだ。そんな人間たちが生きるための疑似家族を求めて徒党を組むんだ。
『無頼』
監督:井筒和幸
出演:松本利夫(EXILE)、 柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、升毅、木下ほうか
主題歌:泉谷しげる 「春夏秋冬〜無頼バージョン」
製作・配給:チッチオフィルム 配給協力:ラビットハウス
関西での上映:出町座、京都みなみ会館(以上12月18日(金)〜)、第七藝術劇場(12月19日(土)〜)、豊岡劇場(2021年1月15日(金)〜)、神戸アートビレッジセンター(4月予定)
(C)2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム
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