奈良・正倉院展が開幕、コロナ禍だからこそ観るべき展示に

2020.10.27 06:15

今年のポスターを飾ったペルシアに起源をもつ「紫檀槽琵琶 (したんのそうのびわ)」

(写真7枚)

『第72回正倉院展』が、「奈良国立博物館」(奈良県奈良市)で10月24日に開幕。今年は新型コロナウイルス感染防止のため、日時指定の前売りチケット制でほぼ完売したが、『ならはくチャンネル』を設け、初のオンライン配信を無料でおこなっている。

約1300年守り伝えられてきた奈良時代の聖武天皇(しょうむてんのう)遺愛の品や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)で使用された品など、約9000件にも及ぶ正倉院宝物。本展では、そのうち59件を観ることができる。

注目は、古代の薬物や、武器・武具類がまとまって出陳されていること。煌びやかなものだけではない、宝物の多様性が分かる。今のコロナ禍の世との関連性をも思わせる。

新型コロナウイルスのパンデミックが起きた現代のように、奈良時代にも天然痘とみられる疫病が発生した。なかでも、天平9年(737)の大流行では、藤原不比等(ふじわらのふひと)の息子たちである藤原四兄弟(武智麻呂/むちまろ、房前/ふささき、宇合/うまかい、麻呂/まろ)が亡くなるなど、多くの人命が失われた。聖武天皇が東大寺の大仏(盧舎那仏/るしゃなぶつ)を造立した背景にも、この疫病の影響があったとされる。

聖武天皇亡き後、妻の光明皇后(こうみょうこうごう)がその遺愛の宝物を東大寺の大仏に献納した際、「もし病人で薬を必要とする者があれば、役僧に連絡して用いて良い」と記された目録『種々薬帳(しゅじゅやくちょう)』とともに薬物60種類を献納。

漢方薬として用いられた象の歯の化石「五色龍歯(ごしきりゅうし)」

本展では、漢方薬として用いられた象の歯の化石「五色龍歯(ごしきりゅうし)」や現在でも生薬として用いられ、免疫力活性化や抗菌、抗炎症作用がある「大黄(だいおう)」など現存する38種類のうち、8種類が出陳されている。これら献納された薬物は実際に宝庫から出蔵され治療などに使われたものも。

関連して、天平9年の疫病により長門国(現在の山口県)で税が免除されたことなどが記された文書(『正倉院古文書正集 第三十六巻 周防国正税帳、長門国正税帳』)の展示もある。

「たまたまですが、コロナ禍の社会と奈良時代の天然痘と重なる部分があります。光明皇后が疫病退散・平和・安寧を願う心は1300年経っても同じ」と同博物館の松本伸之館長。

また、薬物とは違い、殺生にかかわる武器・武具類がなぜ献納されたのかについて、「(藤原仲麻呂の乱平定のため多くが持ち出された結果)今あるものが当時のものかはっきりしないのですが、平和を願い喜捨の精神で献納されました」と説明する。

ほかにも『平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)』等の正倉院を代表する煌びやかな宝物について「技巧の極致、1300年前のかつての美をご覧になって、今のぎくしゃくした生活での心に潤いを持っていただけたら」と見どころを語った。会期は11月9日まで。

現在、近鉄奈良駅の北側「きたまちエリア」では、同博物館と協力し、「正倉院があるまち、きたまち」「聖武天皇陵・光明皇后陵があるきたまち」として、ゆかりの史跡やお店をめぐるマップ付きのチラシを配布。館内や奈良公園バスターミナルに置かれたこのチラシを持参すると、一部店舗で特典を受けられる。

取材・写真/いずみゆか

「第72回正倉院展」

期間:10月24日(土)~11月9日(月)※会期中無休
時間:9:00~18:00(金土日祝は〜20:00)※入館は閉館の60分前まで
会場:奈良国立博物館 東新館・西新館(奈良県奈良市登大路町50)
料金:一般2000円、中・高・大学生1500円、小学生以下無料(無料用の「前売日時指定券」の予約・発券が必要)※観覧には「前売日時指定券」の予約・発券が必要
電話:050-5542-8600

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