芦田愛菜の主演映画「演技が適確だからこそ、意図しないものを」

『まほろ駅前多田便利軒』『セトウツミ』『光』なども手掛けた、大森監督
「ステレオタイプな少女にはしたくなかった」
──実際に芦田さんに会ってみて、どうでした?
やっぱりすごく頭のいい人だなって感じました。ただ、それがちょっと心配でもありました。事前にものを考えすぎて来ちゃうんじゃないかっていう気配を感じたんです。実際に撮影に入ってしばらくはそういうことがありました。
──例えばそれは、どういったところですか?
彼女は現場に迷惑を掛けまいとして、台詞も完全に入れてきて、「ここはこういう言い方でいいですか」みたいに訊いてくることがあったんです。そんなときは「それは現場で、共演者とのやりとりで生まれてきたものでいきましょう」って答えました。
──現場で生まれる感情を大事にしてほしいということですね。
そうです。また、彼女は身長があまり高くないのですが、それで共演者と並んだりして同じ画面に映ると身長差があるんです。それって大事で、それによって彼女自身の肉体性とか他者との関係性が映画のなかに生まれるわけで、こっちはそれをしっかり丁寧に撮りたいわけです。
──芦田愛菜が主人公を演じることによって生まれるものを撮りたいということですね。
彼女は経験も技術もあるので、本人が役柄に近づいていこうとするのですが、そうではなくて、役柄を本人に近づけてほしいと、そんな感じのことは言いました。
──彼女がふとした瞬間に見せる表情が丁寧に捉えられていると思いました。
窓辺でたたずむ彼女の顔とかですよね。あの顔は現場で見ていて、急に撮ることにしたんです。だから、彼女自身もどんな表情をしていいのかわからない様子で、それがよかった。ただ、急に撮ることになってスタッフは慌ててましたけど(笑)。
──少女の揺らぎを撮りたいけれど、役柄の少女のものというより、その役を近づけた芦田愛菜本人の揺らぎを撮りたいと。
そうでないと観ている人に訴えないですよね。でも、実は芦田さんの経験に助けられた部分も随分ありました。彼女の演技はともかく適確でしたから。演技が適確だからこそ、こっちはその背中や一人でいる様子など、彼女が意図していなかったであろうものを狙うことで、観ている人にいろいろと考えてもらう映像が撮れたと思います。
──主人公の役柄が、10代の多感な時期に大好きな両親が新興宗教に熱心で、少女自身はフラットな立場にいるけれど、周囲からはいろいろと言われる、難しい役ですよね。
面倒くさいところに身を置かれてますよね。ただ、少女自身は身体も心もいたって健やかで元気なんです。他人とのコミュニケーション能力も決して低くはない。むしろ中学3年生にしてはしっかりしています。それに、両親も少女のことをすごく愛しています。健やかなのはその証しですよね。

──少女が学校で、親友やその親友を好きな男の子と3人でいるときなど、ほんとに活き活きとしていて、ごく普通の、どこにでもいる女の子の印象です。
悩みを持っている子は暗く沈みがち、なんていうステレオタイプな少女にはしたくなかったですから。分かりやすくするためなのか、映画ではそういった決めつけられたキャラクターが多いですよね。
実はいま、自分が何本か映画を撮ってきて思うのは、映画にはもう少し、いろいろなものが描ける可能性があるんじゃないかってことなんです。そのためにも、初めから意味や印象を限定してしまうようなものは外していかないと。
──多くの映画で、人間が一面的に描かれているのは残念です。ところで、親友を演じた新音(にのん)と、彼女を好きな男の子役の田村飛呂人がいいですね。
3人揃うと、撮影していないところで爆笑とかしていて、ほんとのクラスメートみたいでした(笑)。前2作の男の子同様、飛呂人も演技経験がほとんどなかったですが、芦田さんがうまく受け止めてくれて、そういうところも助かりました。
結局は、映画全体として芦田さんの経験とこちらが撮りたかったものが、うまく合致してくれたように思います。
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