未曾有の事態でどうする?関西の劇場の挑戦〜KAVCの場合

新開地をアートの力を通じてさらに活気あふれる街にしたいという想いから1996年にオープンした「神戸アートビレッジセンター」
「地域社会に関わりながら方向性を探る」(大谷)
大谷はKAVCの良さを「いろんな施設があり、しかも1階は誰もが出入り自由なこと」だと言う。コロナ以前は、近所の小学生がロビーで宿題をしたり、1階のカフェで来館者たちがくつろいだりと、近隣住民のフリースペースになっていた。その地域の人たちへの敷居の低さと、さまざまなジャンルの表現者が集う特性を、今後さらに活かしていきたいと、大谷は意欲を見せる。
「『ART LEAP』という、現代美術家を対象にした企画では、ポールダンサーと彫刻家がコラボレーションしたり、新開地の地域資源を作品に取り込むなどの試みが出ています。演劇の方も、本当はそういうことができたらいいなあと思うんです。新開地が舞台の芝居を書いてもらったり、美術家とのマッチングを進めたり。さらにdBを始めとする、神戸の民間劇場と何らかの形で連携するなど、いろんな方法を通じて、新しい『公共』を探っていきたいと思います」。

「dB」とは、大谷がエグゼクティブディレクターを務める「Art Theater dB Kobe」(神戸市長田区)の略称。ここでは、地域の住民たちが若手アーティストに無償で展示場所を提供するなど、地域と劇場が一体となってアートを盛り上げることに成功し、劇場のある新長田に移住するクリエイターが増えているという。
大谷はそれと同じことを、KAVCのある新開地でも実現することで、「神戸ブランド」と言える、独自の舞台表現が生まれるのではないか、と期待する。
「新開地も新長田も、多様性が非常にある街なんです。在日外国人や高齢者の率が高いけど、それはそういう人たちが生きやすい寛容性がある、ということ。そんなエリアでこそ、新しい神戸のアイデンティティを持つ、演劇やダンスが作れるんじゃないかと思うんです。三宮や北野のようにオシャレじゃなくても、多様性のある地域だからこそ生まれてくる表現。それを実現するには、アーティストがひとりで籠もって作るのではなく、地域社会に関わりながら『今の社会に求められる表現は何か?』という方向性を探る必要が出てくるでしょう。そのひとつのコモンズ(公有地)として、KAVCが機能するというのが、これからの理想かなあと思っています」。

木下に、KAVCプログラム・ディレクターではなく、イチ演出家として「この時代に、どういう演劇を作ろうと思うか?」と聞いた所、こんな答えが。
「今も舞台を上演してるんですが、全員がマウスシールドをしたり、あまり身体に触らないようにしていて。それって役者にとって、結構ストレスだと思うんです。そのせいか観客側も結構緊張してて、なかなか没入感が出ないなあと感じます。これまで以上に観客を引き込む力が、演出にも役者にも求められる時代ですね、今は。でもマウスシールドの使い方を工夫するとかそういうことではなくて、純粋に演劇の核になる何かをビルドアップさせていけば、きっと面白くなるだろうと思って、日々トライしています」。
ちなみにKAVCでは、10年以上演出作品を上演していない木下。最後に、ここまでの話を考慮した上で、この劇場でどんな作品を作ってみたいか? を聞いてみた。
「実はもう、具体的なプランがあるんです。僕はこの劇場の、客席と舞台の関係性にやっぱり興味があるので、それを見つめるような作品をやってみたい。今の時代に合ってるっちゃ、合ってるようなアイディアですし。ただね、単純に作るのに時間がかかりそうなんです(笑)。このコロナの騒動が落ち着いた頃合いで、ゆっくり作っていきたいと思います」。
『KAVC FLAG COMPANY 2020−2021』は、11月から2021年3月までの開催で、参加団体はAhwooo、努力クラブ、安住の地、オパンポン創造社、劇団不労社、うんなまの6劇団。公演ごとの個別チケットは劇団ごとに設定され(詳細は公式サイトにて)、すべての公演を観劇できるパスポート10000円は11月13日まで販売される。
取材・文・写真(人物)/吉永美和子
『KAVC FLAG COMPANY 2020-2021』
日程:2020年11月~2021年3月
会場:神戸アートビレッジセンターKAVCホール(神戸市兵庫区新開地5-3−14)
料金:観劇パスポート10000円、個別チケットは劇団ごとに設定
電話:078-512-5500
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