地下アイドルの闇にサンリオキャラ潜入、侮れないアニメ『アグ烈』

2020.9.13 19:15

烈子の仕事仲間、バリキャリのゴリ部長と社長秘書の鷲美。Netflixオリジナルアニメシリーズ『アグレッシブ烈子』シーズン1~3独占配信中。(C)2015, 2020 SANRIO サンリオ/TBS・ファンワークス

(写真5枚)

見始めたら止まらない動画配信ドラマを、映画評論家・田辺ユウキがセレクト。今回紹介するのは、サンリオのキャラクターを主人公にしたNetflixオリジナルアニメシリーズ『アグレッシブ烈子』。日本以上に海外人気が高く、欧米、南米などの支持率がとにかくすさまじい。はたして、その魅力とは何なのか?

2016年4月から2018年3月まで情報番組『王様のブランチ』(TBS系)内で放送され、2018年4月からNetflixで新作シリーズがオンエア。丸の内の一流商社に勤務する主人公・レッサーパンダの烈子が抱える仕事のストレスや恋愛の悩みを描く。1話約15分という見やすさ。

見どころは、烈子のストレス発散場面。イライラが頂点に達したとき、カラオケや脳内でデスメタルを熱唱するのだ(デスメタルは何を歌っているか内容がよく聴き取れないので、文句を言ってもバレないというのが理由)。

シーズン1の第1話では、いまだに女性社員をお茶汲み係として扱う男性上司への不満が爆発。「権力に粋がる上司は男尊女卑のアナクロ男児」と、会社のトイレで吠えまくる。それでも「10数えたら、私は従順な会社員」と自分に言い聞かせ、10秒後に気持ちを切り替えて社会へと再び溶け込んでいく。

セクハラ、パワハラ、ブラック企業などの社会問題を織り交ぜたリアルな内容。ただ、サンリオキャラクターだから、もちろんかわいくて、残酷になりすぎない。適度なユルさとコミカルさがあって楽しめる。

8月27日に公開されたシーズン3では、「地下アイドルのリアルさ」に迫っている新シリーズ。筆者も実際、地下アイドルの取材だけでなく、地下アイドル映画『くぴぽSOS!』企画・制作した身として目の当たりにした出来事が多い。

地下アイドルとして活躍するOTMGirls。(C)2015, 2020 SANRIO サンリオ/TBS・ファンワークス

やりがい搾取、物申す系ヲタク・・・リアルな地下アイドル描写

シーズン3では烈子はVRゲームにハマり、虚構世界のなかの主人公にベタ惚れ。ゲームアイテムを買うために、実生活で課金地獄に陥る。この「虚構と現実」が今シリーズのひとつのテーマとなっている。

烈子はある日、ちょっとしたトラブルに巻き込まれ、その弁済がわりに、地下アイドルグループ「OTMガールズ」の運営スタッフをやらされることに。ここで描かれる地下アイドル業界が現実味たっぷりなのだ。

烈子はグッズの売上などを管理する経理部長をつとめるのだが、プロデューサーが無能すぎて赤字続き(SNSの公式アカウントの管理もろくにできない!)。そんな台所事情もあって3人のメンバー、そして烈子は無給で活動。やりがい搾取ってヤツだ。さらに出演料を払ってくれないプロモーター・・・と、地下アイドル業界にはびこる深い闇がそのまんま描かれている。

また、歌って踊るだけでは活動資金が調達できないので、チェキ(インスタント写真)や握手券入りCDなども販売。アイドルとファンの「接触」が活動を支える重要なカギであることも、ちゃんと説かれている。

ヲタク(ファン)たちはそれを分かっていて、「自分たちから真面目に金を搾取するつもりはあるのか」と抗議する場面がおもしろい。握手会の時間を使ってアイドルにダメだしする物申す系ヲタクの登場も「あるある話」だ。

ネジがぶっ壊れていないとやっていけない世界

さらにシーズン3では、「アイドルとして生き残るにはどうすれば良いのか」という点にも触れられている。

実際の話、活動だけで1カ月10万円以上を稼げるアイドルは、決して多くない。それなのに土日など休日は必ずライブがあり、拘束時間は長い。遊ぶ時間はほとんどない。割に合わない部分がたくさんある。アイドルたちは、アルバイトなど別の仕事で生計を立てながら活動をおこなっている。

OTMガールズのエース、マナカは「ネジがぶっ壊れていないとやっていけない世界」と核心をついた発言をする。運営から搾取をされたり、安い給料で活動をしたり、そういった状況でもあきらめずに続けるには「ぶっ壊れていないといけない」のだ。これはかなりシビアな指摘だ。

全国に数千組が存在すると言われている地下アイドル。たとえ地下アイドル界でバズったとしても、芸能界でさらに売れることができるのは、ほんの一握り。

5話目でも鋭い指摘がある。プロデューサーとマナカが新曲の打ち合わせをするカラオケボックスの場面。自分たちの曲がカラオケ配信されるようになったとしても、27万曲が入っているなかではただの1曲に過ぎず、「砂漠に砂を1粒落とすみたいなもの」と表現される。

どうすれば埋もれず、見つけてもらえるのか。プロデューサーはそこで烈子の特異性に目をつける。普通にやっていても売れる可能性は低い。どうせやるなら、失敗を恐れず「自分たちにしかない唯一無二の武器」を押し出して勝負を仕掛けた方が良い。OTMガールズはどんどん賭けに出ていく。烈子のバックアップが功を奏し、無能な運営の判断が冴えていく。

カラオケルームに入ると、デスメタルでシャウトする烈子。(C)2015, 2020 SANRIO サンリオ/TBS・ファンワークス

ファンシーな殻をかぶった狂暴アニメ

アイドルという夢や虚構の世界と、その舞台裏にある金などの経営事情。さらにアイドル本人の自宅バレや勤務先バレの問題(ファンのストーカー化)。全編で語られるオモテとウラの話。

先述したように烈子はVRゲームのアイテムをたくさん購入するが、現実の世界に戻ると、貯金が底を尽きてしまって生活がままならなくなってしまう。いい歳をして、親からの小遣いをアテにしなければいけないくらい困窮を極める。

また、烈子にとって頼れる上司であるゴリ部長は、タワーマンションを購入してゴージャスに見せるが、実はインテリアは百均で買い集めたものばかり。ゴリ部長と社長秘書・鷲美は仲が良いように見せかけて、お互いの知らないところで相手の難点を言っていたりする。みんな表面上で生きていて、さまざまな裏事情を持っている。

『アグレッシブ烈子』のシーズン3がすごいところは、それらを綺麗事として描かない部分。だれもが目を背けがちな物事をいちいちあぶり出し、ズバッと切り込んでくる。マナカの「だれも傷つけずに幸せになろうとしてない?」という烈子への問いかけは、鑑賞するこちら側にまで突き刺して来る。

サンリオというファンシーな殻をかぶっているが、その中身はかなり狂暴。まったくもって油断がならないアニメ作品である!

文/田辺ユウキ

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