京都の若手職人の呟きに反響、SNSが伝統工芸を救う?

2020.9.5 19:45

螺鈿職人の野村拓也さん。リングに細かく切ったアワビ貝を1枚ずつ、もっとも輝く角度を見極め、慎重に貼っていく

(写真11枚)

青、緑、赤・・・角度により幻想的に表情を変えるシルバーリング。「これは何色なんだ?」「ステンドグラスみたい」と、美しさがツイッターで話題に。その商品を制作したのは、京都・嵯峨野の螺鈿(らでん)職人である野村拓也さん(33)だ。

貝の内側で輝く真珠質の部分を薄く削り、漆地や木地にはめこむ伝統的な加飾技法「螺鈿」。野村さんが5年前に初めて作った螺鈿リングを、始めたばかりのツイッターで7月15日に紹介したところ、いいねが7000超えに。

さらにその約1カ月後、「本当に世界が変わりました。皆様とご縁を頂けて本当に感謝です(原文の一部)」と、コロナ禍で売上げがほとんどなくなるなか、ツイッターきっかけで来客が増えたことを投稿すると7万6000いいね、2万リツイートもの反響があったという。

「1日に6万以上アクセスがあったり、夜、寝ようとしたときに400人ぐらいの方がどんどん注文ページを見てくれているのを目にすると・・・ありがたい気持ちになります」と、野村さん。

客層も広がり、今まで1番多かった60~70代以外にも20代が増加。イヤリングやネックレスなど、人気のアクセサリーに加え、最近は実物を目にした客が万年筆や何十万もする茶道具を購入することも増えたと話す。

野村さんはスポーツメーカーでの勤務を経て家業に戻り、螺鈿職人としては5年目。父で伝統工芸士の守さんは、1910年創業の螺鈿専門店「嵯峩螺鈿 野村」(京都市右京区)の3代目で、姉のまりさんとともに3人が職人として商品作りをおこなっている。

以前から、店名義のフェイスブックなどで情報を発信していたそうだが、「個人の方が感情や人間味が出て、親しみを持ってもらえるのでは」と、日常生活での思いなども交え、1カ月で約2400ツイートを投稿。

また、作業中の写真や動画も細かくツイート。「職人さんの苦労や愛情が伝わるので、商品ができあがるまでの過程を知れるのはうれしい」「とても繊細な仕事だ」「こんなに丁寧にされてるってわかると、値段も納得だし、吟味して欲しくなる」など、反響が多く寄せられている。

「若い世代にも新たな可能性を分かりやすく伝えられたら。例えば、伝統を継ぐ以外にも何ができるかなど、この先職人になりたい方が増えたり、職人の地位の向上につながればいいですね」と、日々職人として生きていく姿を発信している。

(左から)「螺鈿グラデーションシルバーリング」(2万6000円・税別)、「螺鈿ネックレス ステンドグラス調」(2万円・税別)。リングは男性からの予想外の注文も多く、ツイッター開始後の1カ月で約150個が購入され、現在5カ月待ちという人気ぶり

虹色、玉虫色など、さまざまな色で表現される螺鈿。野村さんは「人間は自然に触れると、心が安まったり元気になれると思います。天然ならではの表現しがたい色味が、螺鈿の1番の魅力なのでは」と話し、京都で唯一の専門店として、貝の本当の美しさを伝えていきたいと意気込む。

商品は店舗(営業9時~18時)とオンラインストアで販売。店舗では螺鈿と蒔絵の体験も受け付けている。

取材・文・写真/塩屋薫

「嵯峩螺鈿 野村」

住所:京都市右京区嵯峨釈迦堂大門町26
営業:9:00~18:00
電話:075-871-4353

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