588人と対戦、坂口拓「戦えなくなることが俺の負け」

「一生傾いていたい」と語ったアクション俳優・監督、ユーチューバー、忍者としての道を歩む坂口拓
2000年以降の日本映画におけるアクションのパイオニアのひとり、坂口拓。2001年のデビュー作『VERSUS-ヴァーサス-』で世界中を驚愕させ、それから本物のアクションを武器にして『あずみ』(2003年)、『RE:BORN』(2017年)などに出演。またアクション監督として『リアル鬼ごっこ』(2015年)、『HiGH&LOW THE RED RAIN』(2016年)なども担当。
近年はユーチューバー活動も注目されており、坂口がマスターした零距離戦闘術「ウェイブ」をはじめ、刀や手裏剣を使ったアクション企画などで人気をあつめ、登録者数は23万人超え。
そんな坂口が挑んだ、最新主演映画『狂武蔵(くるいむさし)』が8月21日公開。77分ワンカットで映し出す588人対1人の前代未聞バトルで、坂口は宮本武蔵役、山﨑賢人演じる武士・忠助を含む吉岡一門と「リアルファイト」を繰り広げる。今回はそんな同作について話を訊いた。
取材・文/田辺ユウキ 写真/バンリ
「『売れるから』とかではなく、好きなことを貫き通す」
──映画のなかでは77分ワンカットで558人斬りに挑戦されましたが、撮影中に指、肋骨が折れて、翌日起きたときには奥歯が砕けていたという壮絶さだったそうで。こんなことを言っちゃうと元も子もないんですけど、映画のためとはいえ何でそんなことをやろうと思ったんですか!
ハハハ(笑)。はじめは自分の生き様を表現したくてやろうと思ったんです。でも、ワンカットのアクションが始まって5分で(敵の)刀が指に当たって骨が飛び出し、それをはめ直したけど、「まだ70分ある」という段階で体力もなくなり、心が折れました。
ただ残り15分あたりでは力が抜けてどうでも良くなる状態というか、生き方よりも自分がどうやって死ぬか、死に様の方を考えるようになりました。
──これまでも映画のアクションシーン、トレーニングなどでいろんな目に遭っているはずですが、死を覚悟したことはありましたか。
たくさんあります。映画の撮影では必ず骨を折っちゃうし、膝が割れたこともある。カット割り(編集)、CG、ワイヤーを使ったアクションも素敵ですけど、自分は19歳のときからリアルアクション道を突き通してきたんで、死ぬのは覚悟の上。俳優としてならもっと楽な道もあったはず。でも、俺はいばらの道を選びましたね。

──相当、過酷な道ですよ。
ドラマで「お前のことが好きだ」と言っている俳優の道の方が良かったかもしれない。『VERSUS』でデビューして、あの映画が大ヒットしたとき、そういう役のオファーがたくさんきたんです。でも当時はトガっていたこともあって、「俺はアクションじゃないと生きられねえから」と断っていました。
──坂口さんが当時、25、26歳くらいの頃ですね。
結構、良い枠のドラマで。そうしたらテレビ局のプロデューサーに言われたんです。「じゃあ、お前は売れないよ。はっきり言うけど、テレビで売れてから、好きなことをやれば良いんだよ」って。
でも「売れるから」とかではなく、好きなことを貫き通してやったヤツの方が格好良いし、何よりも自分のアクション道に嘘をつきたくなかった。だから「売れなくても良いから好きなことをやります」と断りました。
今でもいろんなオファーを断っています。山﨑賢人に出会うきっかけだった『キングダム』(2019年)でラスボスをやっちゃったから、前以上にオファーがたくさんきちゃって(笑)。ただまあ、俺は決して役者をやりたいわけじゃないんですよね。

──とはいっても、役者としてキャラクターを演じるというのは、これまでも数多くやっていらっしゃいます。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』(2008年)の赤軍派・塩見孝也役なんかは印象的でした。
あの作品も最初は、「台本が覚えられないから無理です」と言ったんです。そうしたら若松孝二監督が「坂口、俺の最後の映画だから出てくれよ」とおっしゃるんで出たんです。
でもセリフもたくさんあったし、大変だった。それに若松さん、あれが全然最後じゃなかった。あの後も何本も映画を撮っていたし(笑)。
──良い話ですね(笑)。先ほど「ワイヤー、カット割りも悪くないけど」という話もありましたが、坂口さんのYouTube番組『たくちゃんねる坂口拓』で、格闘家・朝倉海選手とコラボしたときも、そのようなお話をしていらっしゃいましたね。
海さんもすごいチャンピオンじゃないですか。スパーリングをしましたが、俺はチャンピオンを倒したいわけじゃなくて。どうやったらチャンピオンを本気にさせられるか、どう(相手の力を)生かすか。それを考えていました。
最初にカウンターを出したとき、海さんがフッと笑ったんですよ。あのときに心が通じ合った気がしました。「いいっスよ。全然きて大丈夫っスから」って感じで。戦うのって会話なんです。言葉じゃない会話の方が楽しい。男に言葉はいらないというか。
──「少年ジャンプ」のような世界ですね。
この令和の時代、剣術家でも強い人はたくさんいる。だけど言いたいことは、「合戦に出たことはありますか」ってこと。自分が本物か偽物かなんて死なないと分からないし、他人が評価するもの。でも本物でありたいんですよ。そのために何をやるかなんです。
『狂武蔵』
2020年8月21日(金)公開
監督:下村勇二
出演 : TAK∴(坂口拓)、山﨑賢人、斎藤洋介、樋浦勉
原案協力:園子温
配給:アルバトロス・フィルム
関西の上映館:シネ・リーブル梅田(〜8/27)、イオンシネマ茨木、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸(8/28〜9/3)、イオンシネマ西大和、イオンシネマ和歌山
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