奈良の寺社が拝観停止延長、静かな祈りに包まれる

2020.5.5 06:00

奈良県内で最も早く拝観業務を停止。だれも居ない興福寺境内(写真は東金堂と五重塔 4月18日撮影)

(写真4枚)

5月4日に「緊急事態宣言」の延長が発表された。奈良県内の寺社も5月末ごろまで拝観、参拝停止の延長(一部を含む)を決めるところが出てきた。

すでに3月の時点で、「薬師寺」(奈良市西ノ京町)が12年かけて史上初の全面解体修理をおこなった国宝「東塔」の大修理落慶法要(4月22日~)、東塔大修理落慶慶賛法要(5月1日~)の開催を当面延期すると発表したことを皮切りに、多くの寺社が6月末までの伝統行事や特別拝観の中止・延期を決めている状況であった奈良県内。

県内で最も早く、4月14日の時点で拝観業務停止を発表した「興福寺」(奈良市登大路町)。阿修羅像で人気が高い同寺は、まだ全国に緊急事態宣言が発令される前にも関わらず、中金堂、東金堂や国宝館の拝観停止だけでなく、南円堂納経所や勧進所でのご朱印、お守りなどの授与も停止。無料休息所や各売店の営業も停止するという徹底的な対応をとった。

観光客の姿がない興福寺周辺(猿沢池から)

興福寺の担当者は、「(拝観停止を決めた14日時点で)すでに東京や大阪など主要都市に緊急事態宣言が出ていたことから、参拝者や職員の安全確保のために決めました」と説明。拝観停止後は、毎日12時半に東金堂の薬師如来前にて新型コロナ終息等を祈願する法要をおこない、森谷英俊貫首が「同時刻に薬師如来にお心を馳せてお祈りいただければ幸いです」と呼びかけもおこなっている。

奈良県生駒郡斑鳩町の世界遺産「法隆寺」「法起寺」「中宮寺」は5月20日まで拝観停止を延長。

また、新型コロナウィルスの影響は、神体山や山岳信仰にも及んでいる。日本最古の神社とされ、本殿がなく御神体の「三輪山」を拝殿の奥にある三ツ鳥居を通して拝することで知られる「大神(おおみわ)神社」(奈良県桜井市)では、三輪山への登拝を4月18日から当面の間の中止に。国内で唯一女人禁制の伝統が残り、修験道の根本道場である「大峯山」で、毎年5月3日に行われる戸開式(頂上にある大峰山寺の本堂の扉を開ける儀式)も中止になった。

4月上旬に、奈良の大仏様で知られる「東大寺」が、宗教・宗派を超えた全宗教関係者に対し、ともに新型コロナ終息等を願う「毎日正午の祈り」を呼びかけたことで、全国多くの宗教者が賛同の意を表明。同様の祈祷が、東大寺や先ほどの興福寺だけでなく、奈良県内の様々な寺社ですでにおこなわれており、奈良県内は静かな祈りに包まれている。

取材・写真/いずみゆか

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