評論家鼎談、邦画の2019年下半期ベスト3

映画『宮本から君へ』のメインビジュアル
「もっとも評価すべきなのは松坂桃李」(春岡)
春岡「『宮本から君へ』と並んでエポックメイキングだったのが、『蜜蜂と遠雷』だよ。あの天才少年役の鈴鹿央士はびっくりしたよ」
斉藤「あの松岡茉優を上回るという。いや、松岡茉優もすごく丁寧にちゃんとお芝居しているんだよ。松岡、鈴鹿は僕が考えるところの自然な演技をしている。でも、鈴鹿央士の自然さは本物なんだよ」
田辺「クラシックをあつかった音楽映画としても最上級でしたよね?」
斉藤「そう! 僕ははっきり言ってクラシックマニアで、プロコフィエフのピアノ協奏曲2番と3番なんて大好きだからそれだけで盛り上がれるんだけど、ちゃんと映画のクライマックスで響く音が『天上の音楽』として聴こえるんだよね」
田辺「4人のキャラクターの生い立ちや生活背景が演奏にもあらわれるという」
斉藤「だから、クラシックマニアに対しても『文句は付けさせん』というのがはっきりわかる。けっこう長いカデンツァをピアニストにごっそり任せる課題曲があるやん? こういうパーソナリティーの人ならこういう音を弾くやろうなっていうのを、個々に芸風が違うピアニストをちゃんとアテてるんだよね」

春岡「一方でさ、会場から抜け出してみんなで浜辺に行くところが良いんだよなぁ。砂のところをずーっと歩いて行くところ。コンサートの試練から離れてみんなで海辺に行くという、あの砂浜から浜辺に行くまでの一連のカットがすばらしい」
斉藤「あれでそれぞれのヒエラルキーがわかる。音楽的な才能でどこまでいけるかという。松坂桃李くんの役なんかは、これ以上はいけないというのがちゃんとわかるという」
田辺「その松坂桃李も抜群に芝居が良い」
春岡「そうなんだよ、この映画でもっとも評価すべきなのは松坂桃李。松岡茉優とか、本来は共演者を完全に食っちゃう人だけど、『蜜蜂と遠雷』に関しては松坂桃李をはじめとする男性3人が松岡を食っちゃうんだよ。しかも松坂は、周りの芝居を受ける“受け”に徹しながらだよ」
田辺「画作りもすばらしかった。雨の降り方もそうだし、遠雷にしてもあんな雷の場面は今まで見たことがない。『愚行録』もそうだったけど、石川慶は日本映画の映像スタイルのあり方に変化をもたらす人だと思っています」
斉藤「さっき松岡茉優の話が出たけどさ、白石和彌監督の『ひとよ』では松岡茉優が完全にみんなを食っていたよね。いや、御大(田中裕子)は別格として。この『ひとよ』は、確かに舞台原作ではあるけども、白石監督がオリジナリティを発揮した作品として初めての傑作。彼の2019年ベストだと思う」
春岡「あまりにも田中裕子がすごいんだよね。田中裕子は、もう少し押さえた方が周りのみんなが生きるのかも知れないけど、のびのびやることで周りものびのびとなって。対田中裕子で役者たちが頑張っているから、みんなすごいのよ」
田辺「白石監督にインタビューしたとき、オープニングで、田中裕子が夫を殺すところで、ネクタイの歪み方が良かったんで『あの衣装が見事でした』と言ったら、『自分もそう思ってたら、田中裕子さんが事前にこの角度を決めて縫い付けてきたんです』と言っていて。マジかと思いましたよ」
春岡「田中裕子がまったく意に介していない感じもいいんだよね。佐々木蔵之介なんかは、田中裕子のすごさがわかっているから、あえてぶつかっていってない。俺は俺で良いんだ、自分のレースをやるんだという。筒井真利子、MEGUMIも自分たちのポジションに徹していてすごく良かった。主演の3人もぶつかっていくけど、まずは『私たちは、私たちの戦いをする』という感じだね」
斉藤「白石監督はある意味、いろんな作品を撮ってきてここまで力をつけてきたよね。今泉力哉監督もそうなんだよね。昔から力はあって、『愛がなんだ』でも今までと同じことやってるんだけど、岸井ゆきの、成田凌を起用してなんかすごく進化した。俳優とのコラボレーションで進化しちゃう人はいるよね」
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