吉岡里帆「見えない設定だからこそ慎重に」

2019.9.28 19:00
(写真5枚)

「カメラマンさんの言葉に愛情を感じました」(吉岡里帆)

──どこか、その境遇から抜け出したいという思いもありつつ、でも、抜け出せない弱者であるということを同居させた感じでしたね。

そうですね。ジレンマですよね。ずっと葛藤して、葛藤してっていう、すり切れるような思いみたいものは抱えていようと思いましたし、そういう意味で盲導犬・パルの存在というのはなつめにとって大きいので、パルの前と、ほかの人の前での表現は変えようとは決めてました。

──パルとのコンビもそうでしたが、今回は高杉さんとのやり取りが、物語の推進力にもなっています。高杉さんの印象はどうでしたか?

真面目で誠実。なんていうか、2人の間には「同志」って感覚が生まれたと勝手に私は思ってるんですけど(笑)。

初共演となった吉岡里帆(右)と高杉真宙

──高杉さんとは初めてですよね?

初めてです。この作品を少しでも良くしようという強い意識を共有できた感覚があったので、現場では何でも話せました。なつめを演じる上で悩んでいたことも話せたし、逆に意見も聞いたし。春馬もなつめも社会から孤立した弱者だったので、そういう人物が強く突き進んでいく様は見ていて爽快だし、そこは一緒に頑張りたいと思っていました。

──ネタバレすると映画を観る楽しみががっつり減ってしまうのですごく説明しづらいと思いますが、印象に残っているシーンについて聞かせてください。

印象的だったのは、電車での逃亡劇。1週間くらいかけて撮っていて、とにかくずっと走り続けるんですけど、撮っても撮っても終わらないという感覚がなんとなく現場に漂ってて。

「撮っても撮っても終わらない」と振りかえった逃亡シーン

──それはなぜ?

一番スリリングなシーンですし、そこでお客さんにハラハラしてもらうためには、さまざまな効果的なカットが必要で。スタッフさんが「撮っても撮っても終わらないねぇ」ってボソッとおっしゃって、「そうですねぇ」って言いながらみんなでシュークリーム食べて、「もういっちょ!」ってまた撮って。みんなが走ってるので。カメラマンさんも。あのシーンを撮ってるときは、いい現場だなってしみじみ思いました。

──カメラマンは、近年注目作を撮り続けている高木風太さんですよね。

そうです。現場には大阪から通われていたので、お子さんに会いたいとボソッと漏らされていたのが印象的でした(笑)。高木さんは私に対して、「もっと大きく、自由に動いても、ちゃんと撮るから」と言ってくれる方で。「ここの導線はこう動かなきゃいけないとか、スタッフ側のことを気にしてるクセがあるけど、そういうことはしなくていいよ」って言ってくださったのが、すごく、すごくうれしくて。そんなこと初めてだったんです。その言葉に愛情を感じました。

「いい現場だなってしみじみ思いました」と吉岡里帆

──そこで救われるというか。

もう、めっちゃ救われました!

──だからこそ、スタッフ、キャストが一丸となって作った現場だったという実感が・・・。

いやぁ、ありましたね。それこそクラインクイン2カ月前に取材が始まった時点で、いろんな部署の人たちと一緒に資料映像を見ながら話し合いましたし、本物の盲導犬に会いに行ったときも親身になってくださりました。すごくいい現場でした。

──だからこそ、その思いがスクリーンに如実に表れた『見えない目撃者』。多くの人に観てもらえるといいですね。

ホント、そう願います。

映画『見えない目撃者』

2019年9月20日(金)公開
監督:森淳一
出演:吉岡里帆、高杉真宙、ほか
配給:東映 R15+

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