絵本ファン必見、京都でいわさきちひろ展

2018.11.10 07:00

《小犬と雨の日の子どもたち》1967年 絵雑誌『こどもの世界』1967年7月号 至光社 洋紙、水彩、クレヨン、鉛筆 ちひろ美術館蔵

(写真6枚)

あどけない子どもたちの姿を水彩やクレヨンで描いた作家、いわさきちひろ(1918〜1974)。彼女の生誕100年を記念した個展が、「美術館「えき」KYOTO」(京都市下京区)で、11月16日よりおこなわれます。

いわさきちひろは子どもの頃から絵が得意で、女学校時代には画家の岡田三郎助に師事していました。戦時中は東京の自宅を空襲で失い、長野県松本市に疎開。戦後は日本共産党に入党し、新聞記者として働きながら童画家として活動を始めます。1960年代前半には油彩画をやめて水彩画に移行、徐々に独自の作風を確立しました。

《絵をかく女の子》1970年代 洋紙、パステル ちひろ美術館蔵

作家としての地位を確立する過程では、当時まだ地位が低かった絵本画家の著作権を守るための活動を熱心におこなっています。晩年には原爆やベトナム戦争のなかで傷つき死んでいった子どもたちをテーマにした作品を発表しますが、1974年に肝臓癌のため死去しました。没後40年以上が経つというのに、その詩情豊かな世界は今も多くの人に愛されています。

本展の前半は、いわさきちひろが絵本画家になるまでのストーリーで、戦争体験や子どもの頃に憧れた絵雑誌、新聞記者時代、画家の道を選んでからの活動が、彼女に影響を与えた人物や当時の文化とともに紹介されます。後半はテクニックにフォーカスしており、特徴的な水彩画技法や表現の変化に着目しています。

展示総数は約200点。絵描きのいわさきちひろがどのような文化的背景から生まれ、どのような技術をこらして制作しているのかが分かる内容となっており、これまでの作家像を更新するような意欲的企画です。これまでに何度も彼女の展覧会を見てきた人も、きっと新たな発見があるでしょう。期間は12月25日まで、料金は一般900円。

文/小吹隆文(美術ライター)

『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』

期間:2018年11月16日(金)~12月25日(火)※無休
時間:10:00~20:00 ※入館は閉館30分前まで  
会場:美術館「えき」KYOTO(京都市下京区 烏丸通塩小路下ル東塩小路町 ジェイアール京都伊勢丹7F隣接)
料金:一般900円、大高生700円、中小生500円
電話:075-352-1111(大代表)

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