【追悼寄稿】樹木希林さん、京都で語る・前篇

2018.10.6 07:00

京都「建仁寺」でおこなわれた献茶式に出席した樹木希林さん(7月31日・京都市内)

(写真3枚)

「これはもう、日本の損失ですね」(樹木希林)

──お茶を勉強されてみて、なにか感じられたことはありましたか?

それはやっぱりね、日本人のDNAに組み込まれているレベルで、美しいと感じるものがありましたね。畳の間もそうだし、床の間も、床の間の花もそうね。戦後、日本の家がこんなに醜くなっちゃったのは、やっぱり蛍光灯と、あとなんだ、ビニールとか、そういうものが入ってきちゃったせいね。昔はどんな貧乏な家でも、床の間には花が生けられていて、掛け軸を季節ごとに換えて楽しんだものですよ。今はもう全部なくなっちゃった。これはもう、日本の損失ですね。

──ほんとに、この映画を観て驚きました。お茶って、ある意味、日本の美学の集大成みたいなものなんだなって。

あと、季節ごとの変化を楽しむ感覚もそうですね。季節ごとに違う色と匂いと音。同じ風の音でも、秋の風と春の風と違う。まあ、違うんだよね、これがまた。ただ、茶道の場合、あんまり形式がすごいから手を出しにくいってことはあるけれども、原作者の森下先生のような立場で付き合っていかれたら、案外、いまの若い人たちも親しめるんじゃないかしら。



──確かに。季節の変化で言うと、映画の主な舞台になっている、一般的な日本家屋内に設えられたお茶室、あの部屋を仕切る戸や障子も季節ごとに変わって、丁寧に撮影されているなと思いました。

あの部屋は映画のために造ったのね。だから使い勝手が良かった。夏の戸とか、葭簀みたいなものの使い方も良かった。やっぱりああいうものを季節ごとに使う、そういう感性をなくすと、人間も雑多になっていくのよね。

──お茶というものを通して、改めてそういうことを教えてくれる映画ではありましたね。

そう、それはありましたね。

──先ほどの記者会見では、「今度生まれ変わったら、旦那さまとお茶を嗜むような静かな時間を持ちたい」とおっしゃってましたが。

それは口で言うだけ。

──そう書いてもいいですか(笑)。

もちろん。

左より、多部未華子、黒木華、樹木希林さん © 2018「日日是好日」製作委員会

──実際に共演されてみての黒木さんはいかがでしたか?

思っていた通りしなやかで、可愛らしくって、そして力がありましたね。これからいいんじゃないですかね。

──力があるというのは、どういうお芝居をされることなんでしょうか?

ホン(脚本)を読む力があるということ。やっぱりホンを自分のものにしていないとね。

──多部未華子さんはいかがでした?

うん、いいですね。いわゆる現代っ子ていうのもちゃんと表現できるし、ある意味大胆なところもあるし、そうかと思うとつつましいところもあるし。彼女も残っていってほしい女優さんですね。

(後篇に続く)

※同記事は、7月31日に取材したものです。樹木希林さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。同インタビューをまとめた記事は、2018年10月1日発売号の『ミーツ・リージョナル』に掲載中。

映画『日日是好日』

2018年10月13日(土)公開
監督:大森立嗣
出演:黒木華、樹木希林、多部未華子、ほか
配給:東京テアトル、ヨアケ
テアトル梅田、なんばパークスシネマ、イオンシネマほか

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