濱口竜介監督、柴崎友香の小説を映画化

「カメラもマイクも、実は記録するためのもの」(濱口監督)
──むしろ、言いたいことと裏腹なことを口にしていると?
いや、嘘をつこうと思って言っているわけではないんです。言っている人物たちも、自分はこういう人間だなと思いながら言っているんじゃないか、と。でも、「あ、自分は本当はこういう人間じゃなかった」と、あるとき急に分かってしまう。そんな人物たちばかりを書いているという意識はあります。
──とすると、ヒロインの女性の口数が極端に少ないのは、言っていることと言いたいことが違っているのに気づいていて、そのことに慎重になっているのかもしれませんね。
そうですね。彼女はともかく聡明で、さらに自分の感情に率直であろうとする人ですから。本当のことしか言わないと必然的に口数が少なくなるんだと思います。

──同じ顔をもった男性(丸子亮平、鳥居麦)を、東出さんが一人二役で演じています。彼の主演は初めから決まっていたのですか?
ええ、企画書を立ち上げるときからのファースト・チョイスでした。まず、圧倒的に華があるわけです。パリコレのモデルでもあるという。その一方で、パッと見ただけで、「こいつ、いい奴だよな」と思わせるものがある。今回、二役を演じてもらったわけですが、外見は十二分に美しく、内面にはもう少し柔らかいものを感じさせるものがあって、この特性はもうそのまま使えるなって感じでした。
──東出さんに、初めから二面性を感じていたわけですね。
そうですね。表裏があるというわけじゃなく、外見と内面のギャップですかね。彼が黙ってるとミステリアスに見えるけど、一緒に話してみると親しげに見える。その振り幅的な意味でですね。
──一方、ヒロインを演じた唐田えりかさんはオーディションで選ばれたわけですが、その決め手となったのはなんだったのでしょうか?
まず声。それと、しゃべり方ですね。劇中で「わたし、亮平のこと好きやで。めっちゃ好き」というセリフがあるんですが、オーディション参加者全員に本読みして言ってもらったのですが、彼女だけが抑揚をつけずにフラットに言えたんです。ほかの人は気持ちを込めてというか、感情がつのった感じで「めっちゃ好き」って言うんです。ところがこの「めっちゃ好き」は、気持ちを込めれば込めるほど、そうは聞こえてこない(笑)。他の人が飾らないとダメだと思っているセリフを、彼女だけがポンと言葉だけを出してきた。そういった感じが、オーディションのときだけでなく、撮影中ずっとありましたね。

──そう言えば、東出さんもどこかのインタビューで、本番まではともかくセリフを棒読みで言うように監督に指導されたと語ってました。
そうですね。現場に入ったら、セリフに感情が入っても構わないと言っています。その場でわき出た感情だったら問題ないということです。でも、起きてないことを起きてるように言ってしまうと、これもちゃんと嘘だって観客には見破られてしまう。テキストの意味を伝えるという仕事をしてもらって、そこにその場で本当に起こった感情がきちんと加わったら、それはいいシーンになるということです。
──本番までに準備したり、練習したりしてきた感情は要らない。本番の現場で本当に起こった感情が映ればいいという。つまりは記録、ドキュメンタリーですね。
まさにそうです。カメラもマイクも、実は記録するためのものですから。だから、その場でちゃんとなにかが起きるように整えていけば、カメラとマイクがそれを素直に観客に届けてくれて、そこでもし観客がなにかエモーショナルなものを感じてくれるのなら、それでいいということです。
──なるほど。実際に撮られてみて、メインキャストの2人はいかがでしたか?
素晴らしかったと思います。それもやはり相互作用によるものなんです。唐田さんがいいなと思うのは、東出さんが唐田さんに対して発したものになにか込められていて、それが唐田さんからいいリアクションを引き出し、そのリアクションがまた今度は東出さんに作用する。2人の相互作用が見える、恋愛映画としていいものが出来たと思っています。
映画『寝ても覚めても』
2018年9月1日(土)公開
監督:濱口竜介
出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、ほか
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス
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