大阪一の「生中」激戦区、駅前ビルに潜入
大阪駅前ビルは、JR大阪駅前の一等地にある雑居ビル。大阪万博が開催された1970年に第1ビルが完成し、以降、1981年までの間に第2〜4ビルが完成した。上層階はオフィスとして利用され、地下1~2階は飲食店がひしめき合う、大阪のランドマークのひとつだ。
そして、界隈の働き盛りのサラリーマンを支えているのが、飲食店が軒を連ねる地下1階。「生中」が200円以下で飲める店があるがひしめき合い、大阪一の「生ビール激戦区」となっている。その実態を調べるべく、8月の花金・夕方5時頃から大阪駅前ビル飲食店を訪れてみた。
まだ、オープンしていない店もちらほらあるものの、すでに看板は出ているのでウロウロ歩いてみる。すると、ちょこちょこと190円の店を発見。18時までで、フード1品注文という制限がある。コチラも190円! あ、でも19時までで別途200円のお通し付き。190円のお店は基本的に、時間制限と1品オーダーの縛りがあるよう。
生中190円のお店が密集しているのは、大阪駅前第3ビル・地下1階だ。最も多いのは、タイムサービス制で、最短が18時半、最長で19時10分くらい。混雑がピークを迎える前のサービスにしているところが多く、曜日によって180円で提供するところも。そんななか、制限無しで180円のお店も発見。その安心感からか、18時頃ですでにかなりの賑わい。飲んだくれるのはサラリーマンばかりだ。
生中1杯の原価は、約150〜200円と言われている。飲食店の儲けを考えれば、190円がいかに破格か分かるだろう。とあるお店のスタッフに、安さの秘密を訊いてみると、「どこの店舗も価格を下げているから、うちも下げざるを得ない」というのがほとんど。しかしながら、制限無しのお店のドリンクメニューを見てみると、飲料メーカーとのタイアップのような雰囲気も。1日に何千人もの人が行き交う立地だけに、各店の試行錯誤がうかがえる。とはいえ、200円以下で生中が飲めるなら、なんだってOKという客がほとんどだろう。
ちなみに地下2階の飲食店と第4ビルは、生中380円以上がほとんど。その値段なら適正価格、いやいや、普通の居酒屋よりも安いぐらいだが、「なんだ190円じゃないのか」と感じてしまうから人の慣れとは怖いものだ。店構えもすぐに入れるようなオープンなお店ではなく、こだわりの料理と店構えで独自の客層を狙っているようだ。
ちなみに、この取材時の界隈最安値は、美人姉妹が切り盛りしていると評判「居酒屋 1969」の生ビール100円(17〜20時)。これは17周年のキャンペーンで、チャージ500円(お通し付き)がセットに。生中5杯飲んでも、1000円ポッキリ(税別)。スタッフ・ナミちゃん(オーナーの娘さん)を大フィーチャーした選挙のような告知ポスターが、実に大阪らしくてステキだ。
ほかのお店もみんな、財布にやさしい酒場ばかりなので、気分よく盛り上がっている。取材中、「ねーちゃん何してんの? そういう仕事なん?」と絡んできた50代サラリーマンに話を聞いてみると、ほとんどの人がビル界隈の常連。どこの店はいくらで、何がうまい、これが売り、などほとんど把握している。「自分で探すより、道歩いている人に聞いた方が早いで!」と、絵に描いたような関西のノリ。オシャレなビルが乱立し始めた大阪だが、生中200円以下の「大阪駅前ビル」だけは「飲みニケーション」文化は健在のようだ。
取材・文・写真/岡田由佳子
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