若き名匠・白石和彌監督を徹底解剖(3)

2018.5.20 19:00
(写真4枚)

「見つける努力をしてない、今の映画人は」(白石和彌)

春岡「ロマンポルノの後期、『ロマンX』だったかな、日活がやけくそにみたいにやったとき(1980年代後半)、そのときにガイラさんの本でやった映画があって。『箱の中の女 処女いけにえ』ってさ」

斉藤「小沼勝監督が実在した監禁事件を映画化したやつ。素っ裸の女優を本物の下水道で走りまくらせる大怪作」

春岡「その後に、北野武初プロデュース作で、ガイラさんの一般映画初監督作品『ほしをつぐもの 』(監督・脚本)で初めてガイラさんに会って。そのとき聞いたのが、新宿のジャズ喫茶(ヴィレッジヴァンガード)で、3人シフトでバイトに入るわけだけど、その3人が北野武と永山則夫と俺だったって。それ聞いて、『ホントですか!』って感動したの覚えてるもん」
※永山則夫:1968年、連続射殺事件をおこした犯人(当時19歳)

白石「そこに、吉積めぐみさんもいたんですよ。めぐみさんが助監督になって、炊き出しやエキストラ集めをしなきゃいけないときに、たしか『新宿マッド』(1970年)かな。北野武さんを呼んでるらしいんですよ」

春岡「えっ、そうなんだ!」

白石「映っているという話を聞くんですけど、ただ、何回か観たんですけど見つけられないんですよね」

大阪・某所に集まった白石和彌監督(右から2番目)と3人の映画評論家たち

田辺「いつ公開になりそうですか?」

白石「テアトル新宿では今年の秋ですね。大阪もそろそろ決まると思うんですけど」

春岡「変な話だけど、万が一つまらなくても、絶対泣くなっていう」

白石「いやいや、大丈夫です(笑)。そんな変な映画にはなってないんで」

斉藤「つまんないことがないからね、今のところ」

春岡「もう、足立さんとか大和屋さんとかだけじゃなくて、ガイラさんまでちゃんと出てる時点でそれだけで俺はもう・・・」

白石「沖島勲監督も出てますよ」

春岡「沖島さんも出てるんだ!渋いなぁ、分かる人は少ないと思うけど(笑)」

白石「当然ですよ」

斉藤「僕ら、沖島さんと言ったら『まんが日本昔ばなし』の脚本の人やからね」
※沖島勲:若松孝二監督の助監督などをつとめ、ポルノ映画を含む前衛的な映画監督として有名。1975年からは『まんが日本昔ばなし』のシナリオを千本以上手掛けた

白石「それをくすぐるエピソードも入ってます(笑)」

斉藤「それに、秋山道男さんと言えば、デザイナーで編集者の秋山さん。そういう世代やからね、僕は。とにかく『若松プロダクション』はちょっとした梁山泊だったんですよ」
※秋山道男:チェッカーズの総合プロデュースや無印良品全般のプロデュース、数々の雑誌の編集を手掛け、スーパー・エディターを名乗った

白石「『止められるのか、俺たちを』もぜひ期待してください! 早く関西で試写組まないと。そのときは泊まりがけで来ますから、また飲みましょうよ」

──では、また秋にもこのメンバーで集まりましょう。で、この3人は白石作品に対してすごく熱いんですけど、東京とかはどんな感じなんですか?

白石「いや、同じですよ。『映画秘宝』とか」

田辺「エルマガはそこに括られるんですか(笑)」

白石「いや、括ってるわけじゃないですけど(笑)。でも、この映画は長らく東映がやれなかったこととか、今の映画に不満を持ってることとか、そういう人たちは支持してくれていて。こういう映画がなきゃダメだよね、という感じはあると思います。これは応援するとはみなさん、言ってくださってるんで」

春岡「実際、深作さんが『仁義なき戦い』シリーズを撮ってから、なんでないんだっていうさ。東映がやらなくてどうすんだって思ってた映画ファンは多いはずだよ」

斉藤「橋本一監督で『仁義なき戦い』は一度復活したけど、あれは橋本監督の本領じゃなかった」

田辺「やっぱりコメディが得意な監督ですよね、ちょっとエロの入った」

春岡「あとは、曽根晴美みたいな顔をした役者さんが出てくれると、言うことないよね」

白石「それはホントにそうなんですけど、なかなかいないんですよぉ(苦笑)」

斉藤「でも、『孤狼の血』では勝矢が結構いい感じまでいってたじゃない。曽根晴美まではいかないけど」

白石「若干、志賀勝さんみたくなってきて(笑)」

斉藤「あ、そうやね。次第に志賀勝化していく(笑)」

白石「でも、竹野内豊さんが、かつて千葉真一さんが演じた大友勝利になれるって、今回の発見だと思うんですよね」

白石作品は、『彼女のその名を知らない鳥たち』に続き2作目の竹野内豊 © 2018「孤狼の血」製作委員会

斉藤「『彼女がその名を知らない鳥たち』もそうだったけど、竹野内さん面白いよね。役者として、特にここ数年」

春岡「だいたい、千葉ちゃんが大友をやったときもビックリしたもんね。こういう役をやるんだって」

斉藤「千葉さんのそれまでの出演経歴から見ると大友は浮いてたもん。浮いてたけど、結果として、実録モノのキャラクターのひとつの典型になっちゃった」

白石「そういうのを見つける努力をしてないですよね、今の映画人は」

斉藤「東映のスター・システムのなかで作られたとはいえね」

春岡「たまたまの話だけど、曽根晴美と千葉真一って、デビュー直後にコンビになってるんだよね。「拳銃コンビ」なんて名前で。それが深作欣二監督のデビュー作なんだ。ニュー東映時代。(同席した東映のスタッフに)ニュー東映とか知ってるか?、『風来坊探偵』シリーズとか知ってるか?」

田辺「やばいやばい、絡みが始まった(笑)」

──まあ、とりあえずこのへんで。秋に再集合ということですが、まずはこの『孤狼の血』をね。

白石「これ、出来上がってから、いろんな役者から『出たかった』と。『これだけはやりたかった、なんで監督、呼んでくれなかった?』と。超言われましたよ。リリー・フランキーさんにも」

斉藤「狂犬リリー(笑)。いいですねえ。続編には役所さんにも違う役で出てもらわないと」

白石「当然です(笑)」

春岡「役所さんとリリーさんの『ポン中』兄弟とか、それだけで観たいよ(笑)」

映画『孤狼の血』

2018年5月12日(土)公開
監督:白石和彌
出演:役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介、ほか
配給:東映

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本