フランス宮廷磁器展、現代美術とコラボも

2018.4.29 07:00

煮込み肉用の容器と受け皿(「小壺と花綱とデュ・バリー夫人のイニシャルのセルヴィス」より)1770-1771年

(写真6枚)

フランスの高級磁器「セーヴル」。その300年にわたる歴史と名品の数々を紹介する展覧会が、「大阪市立東洋陶磁美術館」(大阪市北区)で7月16日まで、開催中です。

「セーヴル」の歴史は、1740年にパリ東端のヴァンセンヌに生まれた軟質磁器工房に始まります。国王ルイ15世とポンパドゥール侯爵夫人の庇護を受けた同製作所は、パリとヴェルサイユの間に位置するセーヴルに移転して王立の磁器製作所となりました。1769年には硬質磁器の製作に成功。国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットに製品を納めたほか、外交上の贈り物としても用いられ、各国の王侯貴族を魅了します。その後フランスは幾度かの帝政と共和制を経て現代に至りますが、「セーヴル」はその地位を保ち続け、現在もフランスを代表する高級磁器として高い評価を受けているのです。

「雄山羊のついた楕円壺」と「雄山羊の頭部のついた壺」1766-1767年

本展では、18世紀後半から現代までの名品約130件が見られます。時代の流行によりフォルムや絵付け、色遣いは様々ですが、全体に共通するのは圧倒的な華やかさと豪華さ。真っ白な磁土に映える繊細で色鮮やかな絵付けに金の縁取りや装飾が加わり、文字通りの「高級感」が器全体から発せられているのです。フランス文化の栄光を体現する磁器。少々大げさかもしれませんが、そんなプライドすら感じられます。正直、我々庶民の生活には縁遠い世界ですが、美術館で鑑賞すれば貴族気分にたっぷり浸れます。

テーブルセンターピース《静物》ジム・ダイン(1935-)1998年

一方、現代の「セーヴル」は現代美術作家やデザイナーとのコラボレーションを進めており、本展でもアレクサンダー・カルダー、ジム・ダイン、エットレ・ソットサス、草間彌生、深澤直人らによるアーティスティックな作品が見られます。300年の歴史を持ちながら、ただ伝統を守るのではなく、積極的に新たな価値観を創造していく。その姿勢こそ、高級ブランドが現代まで続いてきた最大の理由でしょう。料金は一般1200円ほか。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年』

期間:2018年4月7日(土)~7月16日(祝・月)※月曜休(4/30・7/16開館) 
時間:9:30~17:00 ※入館は16:30まで 
会場:大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区中之島1-1-26)
料金:一般1200円、大高生700円
電話:06-6223-0055

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