西洋水彩画の仕掛け人、和歌山で展覧会

《富士を望む》1897年 島根県立石見美術館蔵
小中学校の授業で習った水彩画は、日本人にとって最も馴染み深い美術の一つかもしれません。では日本に水彩画を広めたのは誰か。「和歌山県立近代美術館」(和歌山県和歌山市)で2月10日から始まる展覧会を見れば、その答のひとつが分かります。
水彩画家・大下藤次郎(1870〜1911)は東京の商家に生まれました。家業の跡継ぎを期待されていましたが、芸術家になる夢を抑えがたく、21歳の時に画家の道に進みます。当時、たいていの洋画家は油絵を描きましたが、大下は水彩画に関心を持ち、日本各地の風景を熱心に描きました。持ち運びが簡便で絵具の乾きが早い水彩画は、屋外の制作に向いており、その辺りが彼の心を捉えたのかもしれません。

また大下は水彩画の普及活動にも熱心でした。1901年(明治34)に技法書『水彩画の栞』を出版し、1905年(明治38)に水彩画専門誌『みずゑ』を創刊、翌年には水彩画を教える場として「水彩画講習所」を設立しています。その結果、明治の日本に水彩画の一大ブームが巻き起こったのです。

大下はその後も活躍しましたが、全盛期に病を患い、41歳の若さで亡くなりました。彼がもう少し長生きしていたら、日本の近代美術史は現在とは少し違っていたかもしれません。本展では「島根県立石見美術館」(島根県益田市)の協力を得て、大下藤次郎の水彩画約120点と関連資料を展示します。心穏やかにゆったりと芸術に触れたい人におすすめの展覧会です。期間は3月25日まで、料金は一般700円ほか。
文/小吹隆文(美術ライター)
『明治150年記念 水彩画家・大下藤次郎展 島根県立石見美術館コレクション』
期間:2018年2月10日(土)〜3月25日(日)※月曜休(2/12開館、2/13休館)
時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
会場:和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上1-4-14)
料金:一般700円、大学生400円
電話:073-436-8690
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