神戸・長田の下町に根付くアート祭典

長田を見渡せる旧保育所の屋上。残されていたスチール製外用遊具で形つくられた「積木組(テツタロウ)」(森村泰昌)
神戸・新長田エリアの空き家や路地を舞台に、現代アートの展示やパフォーマンスを展開する『下町芸術祭2017』(神戸市長田区)が、11月3日に開幕した。
2015年、震災から20年がたち、復興は進んだものの空き家や空き店舗が目立つ長田地区。行政のおこなうイベントも20年を区切りに打ち切られ、長田に人が集まる催しがなくなってしまう。そんなとき、自分たちで人を呼べるイベントをと、2年に1度の『下町芸術祭』は始まった。今年で2回目の開催となる。
国内外のアーティスト作品を町のいたるところに展示するのはほかの芸術祭と同じだが、そこに地元の人が編み込まれているのが『下町芸術祭』の特徴であり魅力だ。地元の人たちは「アートなんてわからんけどな(笑)」と言いながらも、ダンス・パフォーマンスに手拍子をしたり、訪れる人々に道案内をしたり、チラシのホッチキスどめを手伝ったりする。芸術祭のテーマは「境界の民」。境界は、ある。本人にその気があれば、あいまいにもなる。その滲みを来場者も、アートやパフォーマンスを見ながら路地を歩き、商店街でコロッケを買い、飲食店に入ることで感じることができる。それがおもしろい。

長田で代々漁業を営んできた漁師の尻池宏典さんは、自然と芸術祭に関わるようになり、ダンスにも参加する。「今まで経験したことのないことなので楽しいです。最初はなんだろう?という感じで見ていたけれど、いい活動だなと。このあたりは高齢者が多く、子どもが少なくて活気がない。そのなかで地道にコツコツしていることが町おこしになっている」と話す。演劇では船も出すそうだ。尻池さんのように、出会いと交流から協力する人が増えていく。「漁師をしているので、どこかに移り住むこともない。これからもずっと関わっていくと思う」と語った。

芸術祭は大きく4つのプログラムで構成される。細い入り組んだ路地の空地や空き家にアートが展示される『Dialogue on the Borderline』。ダンス・パフォーマンス『新長田にあるアジア、家族の系譜より』。「下町とは何か?」を考える3カ年プロジェクト『森村泰昌「下町物語プロジェクト2017~2019」』。瀬戸内海の町の取り組みを共有する10年プロジェクトのスタートとなる『瀬戸内経済文化圏 OPEN SUMMIT』。国籍も年齢層もさまざまな参加者が、長田で作り上げる芸術祭をより楽しみたいのなら、一歩踏み込んでみることをおすすめする。そこにはおおらかな暮らしがある。
取材・文・写真/太田浩子
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