妖艶美の画家・岡本神草、京都で回顧展

2017.10.27 06:00

岡本神草『拳を打てる三人の舞妓(未成)』大正9年(1920) 京都国立近代美術館

(写真6枚)

大正から昭和初期の京都で活躍した日本画家・岡本神草。独自の画風を追求しながらも、道半ばで早世した彼の画業を振り返る回顧展『岡本神草の時代』が、「京都国立近代美術館」(京都市左京区)で11月1日から始まります。

岡本神草は明治27年(1894)に神戸で生まれました。大正4年(1915)に京都市立絵画専門学校(現在の京都市立芸術大学)に入学。大正7年に卒業制作の『口紅』が『第1回国画創作協会展』に入選して、一躍新興美人画家として注目を集めます。祇園の舞妓をモチーフにしたその作風は官能性に富み、毒気すら感じるほどです。実は彼の同級生たちも同種の作品を制作し、神草と競い合った画家・甲斐庄内楠音も官能的な作品を発表していました。この時期、京都画壇の一部で特異な流行が起こっていたのです。

岡本神草『口紅』大正7年(1918) 京都市立芸術大学芸術資料館

その後神草は菊池契月に師事し、作風が変化します。官能性を前面に押し出すことをやめ、そこはかとなく漂わせるスタイルに移行したのです。しかし、新しい画風を確立することは叶わず、惜しくも38歳の若さで病没しました。

甲斐庄楠音『横櫛』大正5年(1916)頃 京都国立近代美術館

早世の画家であるため、作品数が限られる岡本神草ですが、本展では彼の本画を可能な限り集めて展覧。素描、下絵、資料も加えて画業を展観します。また、師の菊池契月や同時代の作家も合わせて紹介することにより、神草作品の時代性や特異さが浮き彫りにされています。

文/小吹隆文(美術ライター)

『岡本神草の時代』

期間:2017年11月1日(水)〜12月10日(日)※月曜休 
時間:9:30〜17:00(金土曜〜20:00)※入館は閉館30分前まで 
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町26-1)
料金:一般1000円、大学生500円、高校生以下・18歳未満無料 
電話:075-761-4111

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