行定勲監督も絶賛「松本潤が映画を広げてくれる」(前篇)

「集大成だと思っている」と言い切った行定勲監督
「松本潤にやらせたかった、彼の持っている憂いというか」(行定監督)
──シャブロルのDVDと一緒に、ジャン・コクトーの『オルフェ』とかも先生から借りてましたしね。先生の家の棚にも、シネフィルだけが読んでいた雑誌『イメージフォーラム』(ダゲレオ出版)がズラリ並んでたり(笑)。
あの棚に並んでいる先生のDVDって、俺の家から持ってきたものばかりだし。
──だからキム・ギヨンのDVDボックスがあったりする(笑)。 ※どぎつい作風で60~80年代に活躍した、韓国映画史上有数のカルト監督。後の映画作家に多様な影響を与え、代表作『下女』(1960年)は現代の名匠イム・サンスが『ハウスメイド』(2010年)としてリメイクした
やっぱり! それを指摘した人は初めて。だってあれは、ミルクマンさんのためにやったんだからね(笑)。(映画の背景となる)時代的にはあそこにキム・ギヨンのDVDボックスがあるのは本当はおかしいんですよ、その翌年くらいに発売されてるから。あえて置いたんです、あそこに(笑)。
──挑戦ですかあ?(笑)。気づけてよかった。
いやいや、ホントに。撮影のとき言ってたんですよ。(撮影の)福本淳さんが「これ、撮って大丈夫?」って言うから、「うん、本当はあり得ないけど、あえて入れて」って。「ミルクマン斉藤ならわかるだろうから、端っこの方に置いとこう」と(笑)。
──そうしたDVDとか、泉が通う名画座のラインナップに「行定勲の映画史」を読み取るのもこの映画の面白いところで(笑)。
奥さんは好きだけど葉山は嫌いだっていう映画に、原作で『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が選択されているというのは、かなり重要なんですね。でも今、当時の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のDVDのジャケットをそのままは使えないんですよ、権利の問題で。でも「どうしてもこの画じゃないとダメなんだ」と言って、結局は(監督の)ラース・フォン・トリアーの制作会社に訊こうと連絡したんだけど、2週間無視されるわけ。

──どうしたんですか?
で、「撮影近づいてるよ、どうする?」ってなったときに、(本作のプロデューサーの小川真司さんが)「俺はトラン・アン・ユンの『ノルウェイの森』のプロデューサーだ。今、日本で映画を作っているんだが、あなたたちの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のパッケージを撮りたいんだよ。撮っていいか? 返事が無かったら勝手に撮って使うからな」ってメールしたんです。そしたらすぐに返ってきて、「『ノルウェイの森』はすごくリスペクトしてる!どうぞ使ってくれ」って(笑)。
──いい話ですねえ(笑)。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観てる人には、なぜ葉山があの映画が嫌いで奥さんが好きだったのか、わりと事細かく想像できちゃいますしね。
そこはやっぱりこだわりたいから。ただ(権利的に)OKをもらえる古い映画だと嫌だったんですよ。それは違う。現代に近いところ、2000年くらいの作品じゃないと。
──奥さんの崩壊の兆しがうかがえる、というか、彼女の精神の崩壊を促したんじゃないかとさえ想像できる怖い映画って、そうそうありません(笑)。
葉山と奥さんが別れるきっかけになった裏付けが、細かく成されているような映画だとは思っていますね。
──映画繋がりで言いますと、泉と葉山の2人が再会したときに、これは原作にはなかったと思うんですけれど、不意に泉がフランソワ・トリュフォーの「『隣の女』観ましたよ」って言うじゃないですか? あれも相当怖いですねえ(笑)。なんせ、かつての恋人と偶然再会したその場で失神してしまう女の映画だから。
「私はあなたに会ったとき、本当はあんな気持ちだったんだ」っていう。だから葉山はあの映画の最後で墓碑に書かれていた「あなたと一緒では苦しすぎる。でも、あなた無しでは生きられない」って言葉を、ほとんど無自覚に言ってしまうんですけどね。
──その無自覚さが、観ていてイライラするんですけど(笑)、でもそれは男と女の性差でもあって。それを今まで観たことがない目をした松本潤さんが口にするというのが。
わかって言っているのか、わかってなくて言っているのか、っていうのを松本潤にやらせたかったんです(笑)。彼の持っている「憂い」というかね。
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