瀬田なつき監督「すれ違いが好きかも」

2017.4.26 21:00
(写真4枚)

東京「井の頭恩賜公園」と吉祥寺の街を舞台に、50年前の楽曲に込められた恋人たちの記憶、現代に生きる3人の若者たちの夢とリンクする青春音楽ムービー『PARKS パークス』。若者たちを演じるのは、橋本愛、永野芽郁、染谷将太という若手実力派。そして、メガホンをとるのは、2011年の長編デビュー映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』が国内外に衝撃をまき散らした瀬田なつき監督だ。実に6年ぶりとなった長編作品について、映画評論家・ミルクマン斉藤が瀬田監督を直撃した。

取材・文/ミルクマン斉藤

「映画自体、どの次元に在るのか判らないのがいいなと」(瀬田なつき)

──映画の冒頭に『井の頭恩賜公園100年実行委員会100年事業企画』と出ますけど、公園から依頼された企画ではないそうですね。

そうなんです。最初は、吉祥寺の「バウスシアター」(2014年に閉館)の社長だった本田さん(拓夫、本作の企画者)の、「井の頭公園」の映画を作りたいっていう思いから企画がスタートしたんです。吉祥寺の街に、映画の文化を残したいという思いと、ちょうど100周年ということがつながり。

──でも、物語は50年前から始まるんですよね(笑)。女子大生・純(橋本愛)の部屋に、父の元恋人の女性を探して女子高生ハル(永野芽郁)が尋ねてくる。そして、その女性の孫・トキオ(染谷将太)が遺品のなかからオープンリールテープを発見し、そこにはハルの父親たちによるラブソングが収録されている、という。テープが劣化しているため、途中までしか聴くことができず、その続きを3人が作ろうとする。

資料などを調べていると、50年前の公園の風景が、今とそこまで変わっていなかったので、ギリギリ可能かなと(笑)。

──50年前というと、フォークがビートルズの影響を受けて変わっていった頃だし、日本でも1966年のビートルズ来日を機にグループサウンズが出てきたあたりで、ちょうどダイレクトに今に繋がってる感があってこの題材にはぴったりですね。それに今回はいつにも増して、音楽と音響のコラボレーションが繊細で。

トクマルシューゴさんが音楽監修をしてくださって、その繋がりでたくさんのミュージシャンを呼んでいただいたっていうのがやっぱり大きいです。

──トクマルさんは実験的なポップミュージックで注目を集めていますよね。脚本段階から関わってられたということですが。

最初の段階では、何かを探すために公園を巡る話にしようと思っていました。そこから音楽を探すことをメインにしようと思いついて、「50年前に途中まで出来ていた曲を、50年後に完成させる」というストーリーが出来たあたりから、トクマルさんに音楽監修で加わっていただくことにしました。音楽史的な時代考証を含め、当時の若者が作る曲を、ビートルズ前だとこういうメロディかなとか、こんな風な歌詞かなとか、アンサンブルの編成もこんな感じが流行ってたとか。現場では純のギターの見せ方なども確認してもらい、音楽に説得力を持たせてくださいました。

映画『PARKS パークス』の音楽監修を担当したトクマルシューゴ
映画『PARKS パークス』の音楽監修を担当したトクマルシューゴ

──プロローグからとても音楽的ですよね。まず満開の桜の公園を純が走り抜けるという。それにしても瀬田さんは自転車シーンが好きですよね(笑)。

そうですね(笑)。自転車のスピード感があるし、これで一気に街というか、公園を紹介できるなと。

──で、そのとき純がメロディをハミングすると、そのハミングが伴奏音楽に組み込まれ、それが別の場所でトキオがプログラミングしている音に入りこんでいく…といった音のリレー。

はい、ちょっとずつ曲が重なっていきます。

──重なっていって、ひとつのうねりをを作りだしていくのは、ちょっと大林宣彦さんの作劇を思ったりしたんです。大林さんも音から映画作ったり、画と音と同時に考えて作られるタイプの人だから、そういう方法論というか、ノリのようなものが似てるなあと。

それは考えてなかったんですけど、試写を観た人からたまに言われたりして、「あ、そうなのか」って思いました。

──未完成の1曲・・・ここでは『PARK MUSIC』と仮に名づけられてるものですが、その1曲を映画全体を通してだんだん形にしていくという、変則的なミュージカルになっています。試行錯誤ののち、やがてラストで60年代のテイストと現代的なテイストが交じり合うというプロセスがいいですね。

まさに、「60年代のものをそのまま作り直すわけじゃなく、そこから今、未来(的な音楽)につながっていくような広がりをもったものにしたいです」とトクマルさんに言ったら、本当にそんなイメージの曲を作ってくださって。

映画『PARKS パークス』 © 2017本田プロモーションBAUS
映画『PARKS パークス』 © 2017本田プロモーションBAUS

──その試行錯誤の過程が面白い。純とトキオが『吉祥寺グッド・ミュージック・フェスティバル』に出るためにオープンリールの曲を一旦まとめたとき、「(60年代に元曲を)作った人の想いなんて本当のところ判らない」とか、「昔の曲を僕なりに再構成した」というようなことを言うじゃないですか? あれって、イマ的な要素が安易に入りすぎちゃったりするカヴァー曲に対するアンチテーゼに聞こえたんですけれども。

シナリオを書いているときには、あの曲をどういうアレンジにするかというのはまだできてなかったんですけれど、ちょっと方向が違ってる、自分がやりたいこととちょっとズレているけど気付いてない、みたいなところに持っていきました。

──そのズレたところもトクマルさんは、そのときの状況・心情に合わせて音楽を作っていられるわけですね。

「全然間違った方向の曲にしてしまっても、それはそれで成立してる曲じゃないとダメだね」って相談して。結局、「ロキノン系」っていう今風の流行りというか、そういう方向にしました。何も知らないで聴いたら普通にカッコいいし、永野さんは「こっちのほうもイイ」って言ってました(笑)。

──劇中でハルは、その曲を聴いて「違和感が・・・」って言うのに(笑)。確かにそれはそれとして成立してると思うんだけど、すごく見ていて痛々しいんですよ、あのズレ方が。そういうところもいかにもリアルなんです。この映画自体の構成にも、ズレが意識的に取り込まれてますよね。終盤になって、ハルが書いていた「小説」が現れるところで、メタ映画的な次元にいきなりぶっ飛ぶ。

そうです。でも、最初から純がモノローグを喋っているわけだし、この映画自体がどの次元に在るのか判らなくなるみたいに見えるといいなと思って。

──あそこで物語の根幹が揺れ動き、混乱することで、純とハルの同一性というか共時性というか、ちょっとシスターフッド(女性同士の連帯)的なところが浮かび上がってくる。

そう言われるとそうですね。どこにいるのか判らないけど、通じ合っているみたいな感じに見えますよね。別れた2人がカットバックされるところとか。

映画『PARKS パークス』

2017年4月22日(土)公開
監督:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽衣、染谷将太、ほか
配給:boid
シネ・リーブル梅田(5/6)、京都シネマ(未定)、神戸国際松竹(5/13)にて上映
© 2017本田プロモーションBAUS

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