「２人とも弱いから、強気にならなきゃ生きていけない」（黒宮れい）

自身のスタンスを持って活動を再開した２人だが、世間の目は優しくはない。「今、MVでニッポン饅頭以上の再生回数は伸びなかったりするから、ナメられることもあるし、否定的な意見も結構言われる。でも逆にそれでいいんじゃないかなって思うんですよ。だって、普通だったらいきなり海外でウケて･･･みたいなことにならないし。だからこそ今はちゃんとした順序で進んでるから、もしこれで頑張って売れたらめっちゃ見返せるなって思うんで」（金子）

４月12日に発売された２ndシングル『Pelo』は、「舐めたらヤバイ！」というテーマで作られた曲。「見返してやる」と燃えたぎる、そんな彼女たちの「今」が詰まった楽曲になっているという。「作詞の只野菜摘さんが、私たちがこう思ってるっていうことをニッポン饅頭の頃から見抜いてくれてて。だから歌詞を読んだら、わかってくれてる、と思ってすごいうれしかった」（黒宮）。「もう毎日、ナメんなよって思ってる。誰かの生きる希望になれたら、もうそれでアイドルだと思うんですけど、世間のアイドルのイメージってキラキラしててかわいらしいって思ってる人がやっぱり多くて。ほんとアイドルの概念をぶち壊したい。私たちが自分を説明してもそのアイドルってジャンルのなかにいることは否めないし、もし逆にそのジャンルのなかにいるんだったら、こっちから飛び抜けてやるよって感じ」（金子）

そんな彼女たちのライブは重低音が響き、ファンを煽り暴れまくる攻撃的なステージだ。「ステージに立てばこっちの勝ちだから、２人がしたいようにしてる。ファンのみなさんと、どっちが暴れられるかっていうライブをしたくて。完璧なパフォーマンスよりも、どれだけ来てくれてる人と交わせるかが大事だと思うから、ライブに来て元気が出たって言われるとうれしい。日々鬱憤たまってる人はうちらのライブに来てほしい」（金子）。「爆音のなかでヘドバンしたり叫びまくってるから、アイドルのイベントとか出ると、かわいくてキラキラしてるアイドルを期待してる人からは『怖い』って言われて全然ウケないけど（笑）」（黒宮）

自分たちのやりたいことをやる──信念と覚悟を持って活動する彼女たちのファンは、アイドルのなかでは珍しく、大半が10代の女の子。４月１日に大阪「ATC海辺のステージ」でおこなわれた『Pelo』のリリースイベントにも、多くの若い女性ファンが集まった。２人の好きなところを聞くと、「他人と比べずに自分たちのやりたいことをしてるところが好き」「ありのままの感じが好き」「ライブとか、大人じゃなくて、自分たちでファンと一緒に築きあげていくところが好き」「かわいくて、かっこいいところが好き」と話す女の子たち。

「私たちと同年代くらいの女の子は、何かにぶち当たってるような子がすごい多いんですよね」（金子）。最近の若者は、言いたいこと呟くTwitterや、信頼関係を築くはずのLINEですら、スクリーンショット（画面撮影）で友人に晒されるのを恐れ、本音を言えなくなっているという話を聞く。人と繋がりやすくなった反面、簡単に切り捨てることもできる、不安定な世の中だ。そんな２人もまた、不安を抱える10代の女の子。「目標は、あえて決めないようにしてます。目標を達成したときに、ファンの人に『もういっか、ここまでいけたし』って思われるのが嫌だから。まあ保険ですよね（笑）。私たち、不安だらけなので」（金子）。「２人とも弱いから、強気にならなきゃ生きていけない」（黒宮）。学校での友人関係や過多な情報に押しつぶされそうな現代の女の子たちは、見た目は華奢な女の子ながらも堂々と世の中と戦っているような２人の姿に共感し、希望を持つのだろう。

「２人になって気にするものがほんとに無くなったというか。決められてるものを出していくアイドルもいるけど、うちらみたいなアイドルもいるっていうのを知ってもらいたいんです」（金子）。そう語る彼女たちの目は、不安に立ち向かいながらも、10代の女の子たちの「アイドル」としての強い決心で満ちていた。