自然界の摂理をアートに昇華、神戸で

2017.3.23 07:00

床の低い位置に設置され、波立つような動きを見せる《風》(2016年)

(写真3枚)

兵庫県三田市にアトリエを構え、風や水などの自然エネルギーにより動く彫刻作品で国際的に知られている美術家・新宮 晋(1937〜)。彼の大規模な個展『風と水の彫刻家 新宮 普の宇宙船』が兵庫県立美術館(神戸市中央区)で、5月7日までおこなわれています。

本展では美術館を一つの宇宙船に見立てて、新作を中心とする18作品を発表。同時に、過去のプロジェクトの映像、作品の模型、自然の力で自立する未来の村「ブリージング・アース」のプランなどを展示しています。作品は、風を受けて動くものと水を受けて動くものに大別できます。前者の多くは天井から吊るされており、室内の空気の流れを受けて軽やかに揺らぎます。後者は水を循環させた浅いプールの上に設置されており、シャワーのように降り注ぐ水を受けて複雑な動きを見せたり、作品本体の中に溜まった水を排出する際にゆったりとした動きを見せます。

水を吐き出しながらゆっくり回転する動きと共に、壁面に美しい反射光を描き出す《小さな惑星》(2016年)
水を吐き出しながらゆっくり回転する動きと共に、壁面に美しい反射光を描き出す《小さな惑星》(2016年)

作品が風や水を受けて動く。ただそれだけのことなのに、観客は目が釘付けになり、その場からなかなか離れることができません。その理由の一つは千変万化する動きの面白さです。そしてもう一つは、自然界の摂理が感じられることでしょう。二度と同じ動きを見せない作品を見ながら、我々は無意識のうちに自分を取り巻く環境や自然界の摂理に思いを馳せているのです。

《雲の日記》(手前、2016年)、《空のこだま》(右、2016年)、《小さな宇宙》(左手前、2014年)、《星空》(左奥、2013年)
《雲の日記》(手前、2016年)、《空のこだま》(右、2016年)、《小さな宇宙》(左手前、2014年)、《星空》(左奥、2013年)

新宮の作品はバリバリの現代美術ですが、世代を問わず説明抜きに楽しめるので、家族で出かけることをおすすめします。また、兵庫県立美術館の広大なスペースをフル活用しているのも大きな特徴で、安藤忠雄が設計した建築空間との響き合いも見どころのひとつです。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『風と水の彫刻家「新宮 晋の宇宙船」』

期間:2017年3月18日(土)〜5月7日(日) 
時間:10:00〜18:00(金・土曜〜20:00)※入場は閉館30分前まで 月曜休 ※3/20開館、3/21休館
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
料金:一般1300円、大学生900円 
※高校生、高齢者、障がいのある方には割引制度あり、詳細は美術館へ問い合わせを。中学生以下無料
電話:078-262-0901(代表)
※会期中に関連イベントあり。詳しくは公式サイトにて

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