高畑充希「朝ドラの後は絶対に舞台」

NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で、一躍国民的女優となった高畑充希。だが実は、10代の頃から立ち続けた演劇、特にミュージカルこそが彼女のホームグラウンドだ。朝ドラ後、初舞台となるミュージカル『わたしは真悟』は、楳図かずおのSF漫画が原作。主人公は、純粋に愛し合う小学生の真鈴&悟。2人は大人たちによって仲を引き裂かれてしまうが、2人の遊び相手だったロボット「真悟」に人格が目覚め、彼らを助けるために人知を越えた進化を遂げるという物語だ。演出は、アルベールビル冬季五輪のセレモニーや、ドイツW杯の開会式を手掛けた鬼才フィリップ・ドゥクフレ。楳図ならではの強烈なビジュアルと、哲学的かつ難解なストーリーにも注目が集まる本作について、高畑に話を訊いた。
取材・文/吉永美和子 写真/木村正史
「映像だと想像がどこかで止まっちゃう気がします」(高畑充希)
──『とと姉ちゃん』の次は、かなりハードそうな舞台を選びましたね。
私にとっては、連ドラの方がハードかもしれない(笑)。舞台はもともとライフワークというか、年に2本ぐらいやれたらな、と思っていて。でもやっぱり朝ドラで間が空いてしまったので、1度自分をリセットしたいというのも含めて「朝ドラの後は絶対に舞台」と決めてました。ちょうど『わたしは真悟』みたいな変わった作品のオファーをいただいたのは、すごくタイミングが良かったです。
──原作を読んだ時に「舞台向きだ」と思ったそうですが。
漫画って、コマのなか以外の部分の風景を想像することで、作品が無限に大きくなる気がするんです。舞台も同じように、お客さんが想像を膨らませることで、無限に空間が大きくなる。そう思うと『わたしは真悟』は、想像できるところがすごく多いから、むしろ舞台じゃないと難しいんじゃないかなと思いました。映像だとリアリティは出ると思うけど、多分想像がどこかで止まっちゃう気がします。
──確かに歌舞伎版『ワンピース』のように、スケールが大きすぎて人間が演じる姿が想像できない漫画の方が、舞台化したら意外に面白かったという例は多いですし。
そうですよね。特に今回はフィリップ・ドゥクフレが演出ですし。フィリップは人間の身体だけで、時間でも機械でも、いろんなモノを表現することにすごく長けている振付家さんなんです。普通のお芝居の演出家ではない方が演出をするというのは、『わたしは真悟』にはすごく合ってると思います。

──しかもフィリップは、サーカス芸を芝居に取り入れたり、ライブ映像でプロジェクションマッピングをしたりと、かなり自由でビジュアル性の高い舞台を作る人だから、そこも相性が良さそうですよね。稽古はどんな感じですか?
フィリップの言うことを待つというより、全員で想像して作ってる感じです。「こんな風にやったらどうだろう?」と思ってチャレンジしたことを、柔軟に取り入れてくれますし。だから稽古でいろいろ提示しながら、フィリップの思い描く「絵」にハマれるよう、みんなが探っているところです。多分フィリップには、私たちには想像できないような、この作品の「絵」が見えていると思うので。
──特に、見かけは産業用のロボットアームでしかないけど、物語が進むに連れてどんどん神的なモノに近づいていく「真悟」をどう表現するのかが、本当に気になりますね。
そこはやっぱり、観てからのお楽しみです(笑)。真悟が一番なんとでもできるというか、縛りがない役なので。ロボットではあるけれど、どんどん人格を持っていくわけだから、だからこそそれを人間が演じる面白さが出てくるはず。そのなかでも一番見やすくて面白い表現を、まだ探している最中です。

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