川下りもアートに、大阪の美術家集団

2016.11.11 13:00

《IE Picnic:THE PLAY HAVE A HOUSE》 2015年(展示風景写真)

(写真4枚)

1967年から関西を拠点に活動を続けている美術家集団「プレイ(THE PLAY)」。彼らの大規模な個展が大阪の「国立国際美術館」(大阪市北区)で開催されています。

プレイの中心メンバーは、池水慶一、小林慎一、鈴木芳伸、二井清治、三喜徹雄の5人ですが、ほかのメンバーは流動的で、過去に関わった人数は100人を超えています。また、彼らの作品は何かを「作る」ことではなく、「体験する」ことです。行為を計画し、準備し、実行し、報告する。そのすべてがプレイの作品なのです。

《雷》1977年〜1986年(展示風景写真)
《雷》1977年〜1986年(展示風景写真)

たとえば彼らの代表作のひとつ「雷」では、山頂に丸太で約20メートルの塔を立て、雷が落ちるのを10年間待ち続けました。また、「現代美術の流れ」では、発泡スチロールで矢印形の筏を作り、京都から大阪まで川下りを行いました。こうした表現は、1960年代後半に起こった「オフ・ミュージアム」や「オフ・ギャラリー」(ともに既成の権威を疑い、美術館や画廊以外の場所で表現を行うこと)の流れを汲んでいます。当時それらは「ハプニング」と呼ばれ、現在の「パフォーマンス」や「プロジェクト」の原型となりました。

《現代美術の流れ》1969年/《ナカノシマ現代美術の流れ》2011年/《La Seine/現代美術の流れ》2012年(展示風景写真)
《現代美術の流れ》1969年/《ナカノシマ現代美術の流れ》2011年/《La Seine/現代美術の流れ》2012年(展示風景写真)

本展で見られるのは、印刷物、記録写真、記録映像などの資料が中心です。ただし、「雷」の塔や「現代美術の流れ」の筏など、一部の作品は復元されています。資料展はつまらないと思う人がいるかもしれませんが、それは大間違い。何の見返りも求めずに芸術とも遊びともつかない行為を、約半世紀にわたって続けてきた人たちがいた。その熱い息吹が資料を通して伝わり、見ているこちらも胸が高鳴ってくるのです。

《VOYAGE:Happening in An Egg》1968年(写真奥・展示風景写真)
《VOYAGE:Happening in An Egg》1968年(写真奥・展示風景写真)

プレイの活動のベースにあるのは、何事も自分たちで行う「do it yourself」の精神であり、「自由」への憧れです。それはきっと誰もが持っている、でもなかなか実現できないものでしょう。だからこそ我々はプレイに共感するのです。今の自分が飽き足りないとを考えている人、殻を突き破りたいと思っている人に本展をおすすめします。

※会期中に関連イベントあり。詳しくは公式サイトにて

文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『THE PLAY since 1967 まだ見ぬ流れの彼方へ』

日時:2016年10月22日(土)〜2017年1月15日(日)
10:00〜17:00(金・土曜~20:00) ※入場は閉館30分前まで 
月曜&12/28〜1/4休 ※1/9開館、1/10休館
会場:国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
料金:一般430円、大学生130円、高校生以下・18歳未満・65歳以上無料
※金曜19:00~20:00、土曜17:00~20:00は無料
※11/19・11/20・12/3・2017年1/7は無料観覧日
電話:06-6447-4680(代表)

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