熊切和嘉監督「自分なりのニューシネマ」
2016.9.2 18:00

熊切和嘉監督「自分なりのニューシネマ」

「やりたいことが存分にできた手応えがある」(熊切監督)

──康さんは、中島哲也監督の『渇き。』(2014年)にも一瞬だけ出演されてましたね(笑)。今回とても良かったと思ったのが、敵役の須賀健太さんでした。故国の体制に追われ、日本でアウトローとなって犯行を重ねながら流れて行く中国人留学生崩れの青年。まさにかつてのニューシネマの主役ですね。彼のキャスティングは初めから想定されていたのですか?

いや、中国人青年の役なので、最初は中国人の俳優さんで探していたんです。そんなとき、なにかの資料写真で彼の笑う顔を観て、彼、笑うときに片方の口角だけがあがる癖があって、なんだかズルそうでいいなって思ったんです。俳優として力があるのはわかっていましたが、今回も本当に頑張ってくれて、映画の後半は彼が引っ張っていってくれてますね。

留学生犯罪組織の周と林を演じた、須賀健太(右)とNOZOMU(左)<br /> © リチャード・ウー、すぎむらしんいち・講談社/映画「ディアスポリス」製作委員会
留学生犯罪組織の周と林を演じた、須賀健太(右)とNOZOMU(左)
© リチャード・ウー、すぎむらしんいち・講談社/映画「ディアスポリス」製作委員会
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──須賀さんの相棒を演じているNOZOMUさんも迫力がありました。

彼は身長が191センチあって、小柄な須賀くんとのコンビネーションもよかったですね。国際的に活躍しているモデルさんです。

──松田・浜野のコンビが須賀・NOZOMUのコンビを追う。追う方も追われる方も2人組の男です。

それは初めから考えていました。バディムービー(仲間映画)の雰囲気ですよね。実は、この2組の追走劇をじっと見つめながら、ときに介入してくるやくざの一団も登場して、ここもメインは男2人で、つまり2人組が3組絡み合って展開される三つ巴戦なんです。

──なるほど。また、その3組がそれぞれに想いを抱いていて、ただの抗争劇で終わらない深さや痛みを感じます。

今回、脚本の共同執筆を守屋文雄さんにお願いした狙いはそこでした。僕がひとりで書くと、ブラック・ユーモアに走り過ぎて登場人物を突き放してしまうのですが、守屋さんの描く人間には「情」があって、そこに想いがこもるんです。

留学生犯罪集団・関西支部長の妻を演じた安藤サクラ © リチャード・ウー、すぎむらしんいち・講談社/映画「ディアスポリス」製作委員会
留学生犯罪集団・関西支部長の妻を演じた安藤サクラ
© リチャード・ウー、すぎむらしんいち・講談社/映画「ディアスポリス」製作委員会
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──登場人物の話でついでにというと失礼ですが、留学生犯罪集団「ダーティ・イエロー・ボーイズ」の関西支部長の妻を演じていた、安藤サクラさんの関西弁には感心しました。

そうなんです。彼女には大阪弁、それも西成あたりで話される言葉を勉強してきてくれとは言ったのですが、あれは相当やってきてくれたと思います。僕らも現場で感心しました。

──そして、支部長が誰かと思ったら宇野祥平さんで・・・。

あれは言わば出オチなんで(笑)。

──ハードな局面にああいうとぼけた感じは効きますよね(笑)。資料などを見ると『夏の終り』や『私の男』など、文芸作品を撮ってきた熊切監督がそのイメージを覆して、なんて書いてあったりしますが、何を言ってるんだと思います。

確かにこれまでも撮ってきていますし、こういうプログラム・ピクチャー的な作品が好きなんですよね。特に今回は、アメリカン・ニューシネマや探偵モノのテイストなど、自分がやりたいことが存分にできた手応えがあります。もちろん、文芸モノも大切に撮っていこうとは思っていますが、できればこういったプログラム・ピクチャー的感覚の作品を交互にやっていきたいというのが本音ですね。

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映画『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』

2016年9月3日(土)公開
監督:熊切和嘉
出演:松田翔太、浜野謙太、須賀健太、安藤サクラ、柳沢慎吾
配給:東映 PG-12
URL:http://www.dias-police.jp

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