小吹隆文撰・週末アート、7/6〜

2016.7.6 23:00
(写真4枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、20世紀の考古学で最大の発見といわれる兵馬俑、ヨーロッパ近代絵画の超名画、独自の抽象絵画を究めた女性作家の展覧会を紹介。

兵馬俑を中心に始皇帝と秦の実像に迫る
『特別展 始皇帝と大兵馬俑』
@国立国際美術館(大阪市北区)

紀元前221年、秦国の王・嬴政(えいせい)は史上初めて中国大陸を統一し、「始皇帝」を名乗りました。彼は度量衡や貨幣を統一するなどの統一事業を行い、現在まで連綿と続く「中国」の概念を確立。同時に帝都・咸陽の宮殿や自らの陵墓を造らせ、陵墓の近くに約8000体もの陶製の軍団「兵馬俑」を埋めさせて、死後も自分を守る軍団としました。

兵馬俑(右から)跪射俑/軍吏俑/将軍俑/歩兵俑/立射俑 秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵 ©陜西省文物局・陜西省交流中心・秦始皇帝陵博物院
兵馬俑(右から)跪射俑/軍吏俑/将軍俑/歩兵俑/立射俑 秦時代・前3世紀 秦始皇帝陵博物院蔵 ©陜西省文物局・陜西省交流中心・秦始皇帝陵博物院

始皇帝と秦王朝の実像に最新の研究成果を踏まえて迫る本展では、秦が小国から巨大帝国に至る軌跡を数多くの出土品で紹介。特に兵馬俑は、発掘現場と同じ見下ろす角度と、1体ずつ間近で鑑賞できる2通りの展示が行われ、約60体の兵馬俑レプリカが並ぶ記念撮影スポットも用意されるなど、かつてない充実ぶりです。

2016年7月5日(火)〜10月2日(日)
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全米屈指の美術館が誇る名作絵画
『デトロイト美術館展  大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち』
@大阪市立美術館(大阪市天王寺区)

アメリカ・ミシガン州のデトロイト美術館より、近代ヨーロッパ絵画の名品52点が来日します。

フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》1887年 City of Detroit Purchase
フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》1887年 City of Detroit Purchase

1885年に創立した同館は、自動車産業の有力者の支援もあり、約65,000点・時価総額85億ドルとも試算されるコレクションを構築しました。しかし、近年のデトロイト市の財政破綻により、コレクションを売却して債務処理を行う計画が浮上。美術館とコレクションを守り抜こうとする運動や、国内外からの資金援助もあって、何とかその危機を免れました。今回の展覧会では、モネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、マティス、モディリアーニ、ピカソなど、フランス印象派から20世紀フランス・ドイツ絵画に至る名品が一堂に集結。洋画ファン必見の機会です。

2016年7月9日(土)〜9月25日(日)
展覧会情報はこちら

 

一画家が残した豊かな画業をたどる
『辰野登恵子の軌跡 イメージの知覚化』
@BBプラザ美術館(神戸市灘区)

1970年代から2010年代にかけて活躍し、一昨年に急逝した画家・辰野登恵子(1950〜2014)。彼女の40年にわたる画業を振り返る展覧会が行われています。

《WORK89-P-21》1989年(前期展示)
《WORK89-P-21》1989年(前期展示)

辰野は1970年代に、タイルの壁などから着想した格子やストライプが連続する作品で脚光を浴びます。1980年代に入ると、アラベスク、矩形の連鎖によるダイヤ形、方形、形、雲形など、様々な形が連続する画面へと移行。1990年代以降は、豊かな色彩と質感に、立体性と重力感が加わった平面構成に取り組み、絵画でしか表現できない世界を追求し続けました。彼女は東京を拠点に活動していたため、関西でまとまった数の作品を見られる機会は稀でした。その意味でも本展は極めて貴重な機会と言えるでしょう。

《Pink Line-Purple Line》2004年(後期展示)
《Pink Line-Purple Line》2004年(後期展示)

前期:2016年7月5日(火)〜8月7日(日) 後期:2016年8月9日(火)〜9月19日(祝・月)
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