カウンセリングされる演劇家、京都で

2016.4.22 07:00

劇団・ハイバイの主宰で作・演出家の岩井秀人

(写真2枚)

現代日本の男たちの不幸話を集約した、劇団・ハイバイの舞台『おとこたち』。その近年の彼ら最高傑作の再演ツアーが、5月14・15日に「ロームシアター京都」(京都市左京区)で上演されるのを前に、主宰で作・演出家の岩井秀人に話を聞いた。

映画『桐島、部活やめるってよ』などで俳優として活躍する一方、「岸田國士戯曲賞(2013年受賞)」「向田邦子賞(2011年受賞)」と、演劇&テレビの脚本賞の最高峰をW受賞している岩井。彼の作品は、自らの引きこもり体験や不倫をする女性への取材を元に、居酒屋での笑い話のようなユーモラスな語り口で観せるのが特徴だ。

「現実に生きている人のえげつない人生って本当に面白いし、芝居にして共有したくなるんです。題材になった方も・・・僕自身がそうですけど、自分のひどい体験を人に笑ってもらえたら救われた感じになるというのがあって、演劇っていいようにカウンセリングしてくれるなあと」

左から用松亮、菅原永二、松井周、平原テツ。ハイバイ『おとこたち』東京公演より 写真/引地信彦
左から用松亮、菅原永二、松井周、平原テツ。ハイバイ『おとこたち』東京公演より 写真/引地信彦

『おとこたち』は「誰もが不幸な老後を送る可能性があることを、早めに考えておく方がいい」という動機で生まれた作品。4人の男たちが送る想定外の人生を老けメイク一切なしで演じ、それが衝撃のラストにつながる構造も話題となった。

「何人かの人に取材して、その中から特にひどい話を詰め込みました。酒で失敗した元テレビヒーローや、妻と不倫相手が連絡を取り合ってた話とかもほぼ実話で、創作部分は10%以下ぐらい。初演では「打ちのめされた」と言う人が続出したり、NHK『クローズアップ現代』の取材が入るなど、予想外にシリアスに受け止められました。人の悲劇を笑いながら、自分の老後についても同時に考えさせられるという。自分の人生を客観的に見つめられるのがいい舞台だと僕は思いますが、これはそんな作品になったのでは」

ネタ元になった人だけでなく、観る側もある種カウンセリングされた気分になるハイバイの舞台。誰にでもいずれ訪れる「老い」の問題を笑いながら直視して、存分に考えさせられよう。

取材・文・写真/吉永美和子

ロームシアター京都オープニング事業 ハイバイ『おとこたち』

作・演出:岩井秀人
出演:安藤聖、菅原永二、永井若葉、平原テツ、用松亮、松井周

日程:2016年5月14日(土)・15日(日)
会場:ロームシアター京都 ノースホール(京都市左京区岡崎最勝寺町13)
料金:前売3,300円、当日3,800円、学生2,500円
電話:075-771-6051(ロームシアター京都)

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