2人の艶歌にユニバースが微笑んだ夜
2016.1.29 11:44

rootsshow仮_top

1972年生まれの同い年で誕生日も1日違い、ソロ・デビューした年(2001年)も同じというアン・サリーと畠山美由紀。親友でもある彼女たちが音楽的ルーツとなった古今東西の楽曲を取り上げる年1回のジョイント・コンサート『ふたりのルーツ・ショー vol.5』が1月、5年目にして初めて大阪で開催された。

取材・文/吉本秀純 写真/わたなべよしこ

会場となったのは、レトロと未来が交錯するナニワの名スポット=味園ユニバース。これまでのベスト・セレクション的な選曲で臨まれたライブは、洒脱なジャジー・ポップスやブラジル音楽の名曲からアジア歌謡や演歌までも映えるロケーションのマジックも相まって、素晴らしき新春の夕べの音楽会となった。

ショーロ・クラブの笹子重治(ギター)、織原良次(ベース)、黒川紗恵子(クラリネット)による軽快な伴奏に乗せて2人が登場すると、まずは交互にリードを取りながらジョニ・ミッチェル『Help Me』を。続いてもデュオで松田聖子の『SWEET MEMORIES』を情感豊かに聴かせると、司会を務める中原仁に導かれてステージ上のテーブルに座ってのトークに移り、通常のライブとは異なるアット・ホームな雰囲気で幕を開けた。

関西初開催となった『ふたりのルーツ・ショー』
関西初開催となった『ふたりのルーツ・ショー』画像一覧

前半はお互いが2曲ずつ歌う形式で、先攻のアンがテレサ・テン『何日君再来」からブラジルのノヴォス・バイアーノス『A Merina Danca』で異国へ誘うと、畠山はPort of Notes(彼女が活動するアコースティック・デュオ)を彷彿させるエヴリシング・バット・ザ・ガール『Each And Every One』からシャーデー『Kiss Of Life』と、英国ジャジー・ポップの名曲を立て続けに披露した。

それを受けてのアンは、会場に来ているギターの笹子さんの娘さんに「お父さんに胸毛が生えたような感じで演奏してもらいます」と説明したと前置きして、グロリア・エステファンによるキューバ音楽色の強い名曲『Con Los Anos Que Me Quedan』を情熱的に披露。続いても「違った毛質の胸毛な感じの曲を」と、しばたはつみが75年に発表した和製レア・グルーヴの必殺曲『シンガーレディ』をグルーヴィーに熱唱し、キャバレー時代の華やかなりし70年代の「ユニバース」へと場内をしばしタイムスリップさせてくれた。

アン・サリー
アン・サリー画像一覧

穏やかな中にも徐々に熱気を帯びてきたところで、畠山がハル・デヴィッドによる歌詞の良さにも言及しながら取り上げたバート・バカラックの名曲『Alfie』に続き、一転して激しいジプシー・スウィング調の伴奏を伴ってローリング・ストーンズ『黒くぬれ!』をワイルドに響かせると、ステージ上で2人揃って白いヴェールを被り、サンバ色を強めた伴奏とともにシュガーの『ウェディング・ベル』を。発売当時(1981年)には小学生だった両者のガール・ポップ原体験(?)までユーモラスに遡って前半を締めた。

畠山美由紀
畠山美由紀画像一覧

後半は、テーマに沿って1曲ずつ歌うスタイルに変わり、最初のテーマ「2人の歌謡ショー」では司会による「演歌の花道」的な前説も伴ってアンが『矢切の渡し』、畠山が八代亜紀『おんな港町』を艶やかに熱唱。続く「笹子ギターとのデュオ」では、アンが歌詞の内容の厳しさにも驚かされたという『Danny Boy』をカントリー~アイリッシュ・トラッド的な歌とギターでじっくり聴かせると、畠山は10代の頃にラジオで耳にし、ブラジル音楽に精通したショーロ・クラブと出会った際に誰の曲かが判明したという、思い入れ深いドリー・カイミ『Cantador』を。

「日本のポップスの巨匠」では、アンによるシュガーベイブ『蜃気楼の街』に続いて、畠山が「こんなに狂おしい歌詞は、なかなか書けるものではないと思います」と松本隆の歌詞の秀逸さに言及しつつ薬師丸ひろこ『探偵物語』を取り上げて日本語ポップスの系譜に接続すると、お互いのオリジナル曲としてアンが『あたらしい朝』、畠山が『歌で逢いましょう』をピックアップ。多彩なルーツを踏まえて聴くことで、それらのエッセンスが2人のオリジナル楽曲の中にしっかり溶け込んでいることが改めて豊かに実感できたことも印象的だった。

デュエットでも魅せたアン・サリー(左)と畠山美由紀
デュエットでも魅せたアン・サリー(左)と畠山美由紀画像一覧

本編のラストは、再びデュオで矢野顕子『ひとつだけ』、キャロル・キングによる不朽の名曲『You’ve Got A Friend』を聴かせ、アンコールではアン・サリーが2003年に発表したアルバム『moon dance』でも取り上げ、キャバレー時代のユニバースでもきっと奏でられていたであろう服部良一・作曲の『蘇州夜曲』を情緒豊かに。歴史深いロケーションとも絶妙にシンクロしながら、ジャンルや時代を超えて尽きない「名曲」と「うた」の持つ力を再認識させられた全22曲だった。

『祝!5周年! ふたりのルーツ・ショー vol.5』

出演:アン・サリー(vo)、畠山美由紀(vo)、笹子重治(g)、織原良次(b)、黒川紗恵子(Clarinet)、中原仁(MC)
日時:2016年1月10日(日)・17:00〜
会場:味園ユニバース(大阪市中央区千日前2-3-9)
URL:http://www.shimizuonsen.com/

セットリスト
M-01「Help Me」(デュエット)
M-02「SWEET MEMORIES」(デュエット)
M-03「何日君再来」(アン・サリー)
M-04「A menina danca」(アン・サリー)
M-05「Each and Every One」(畠山美由紀)
M-06「Kiss of Life」(畠山美由紀)
M-07「Con Los Anos Que Me Quedan」(アン・サリー)
M-08「シンガーレイディ」(アン・サリー)
M-09「Alfie」(畠山美由紀)
M-10「Paint it Black」(畠山美由紀)
M-11「ウェディング・ベル」(デュエット)
M-12「矢切の渡し」(アン・サリー)
M-14「Danny boy(笹子とのデュオ編成)」(アン・サリー)
M-15「Cantador(笹子とのデュオ編成)」(畠山美由紀)
M-16「蜃気楼の街」(アン・サリー)
M-17「探偵物語」(畠山美由紀)
M-18「あたらしい朝(オリジナル曲)」(アン・サリー)
M-19「歌で逢いましょう(オリジナル曲)」(畠山美由紀)
M-20「ひとつだけ」(デュエット)
M-21「You've Got A Friend」(デュエット)
E-01「蘇州夜曲」(デュエット)

  • facebook
  • twitter
  • はてブ

コメント

  • Facebook
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

エルマガジンが発行する本に掲載した“うまいお店“を簡単に検索できます。

関西で行われる展覧会やライブなどのイベント情報を探すことができます。