寺山修司「レミング」東京公演レポ
2015.12.21 6:00

昭和のアングラカルチャーを牽引した作家・寺山修司の戯曲を、大阪の劇団・維新派の松本雄吉が脚色&演出、名古屋の劇団・少年王者舘の天野天街も共同脚本を務めた舞台『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』。初演からスケールアップした再演版を、東京で観劇した。

内容に関しては初演の際に紹介した特集(http://lmaga.jp/article.php?id=2199)を参照していただきたいが、この再演で最も注目されるのは、主要キャストを溝端淳平、柄本時生、霧矢大夢、麿赤兒の4人に一新したこと。結果としては、難解なパズルの正解が出たかのごとく、全員が見事なハマりぶりだった。

左から、溝端淳平、霧矢大夢、柄本時生(撮影/谷古宇正彦)
左から、溝端淳平、霧矢大夢、柄本時生(撮影/谷古宇正彦)画像一覧

現実と虚構の狭間で迷い子となるコック見習いのタロとジロは、寺山逝去後に生まれた溝端&柄本という若い俳優が演じることもあって、寺山の生んだ迷宮世界に困惑する若者たち・・・という構造がよりリアルに。映画女優の影山影子は、霧矢の「さすが元宝塚トップ」とうなる圧倒的歌唱力と存在感で、虚構の世界で生きる人種の光と影をいっそう鮮やかにした。そしてタロの母親は、麿の強靱な声と表情によって、この迷宮のラスボスのような怪物となって舞台を盛り上げる。

溝端淳平とその母親役を演じる麿赤兒(撮影/谷古宇正彦)
溝端淳平とその母親役を演じる麿赤兒(撮影/谷古宇正彦)画像一覧

全体的な感触としては、東京の都市生活者たちの孤独を、壁を消すことで露わにしたという印象の初演に対して、今回は“誰かの夢の中にいる”という感触の方が強い。その大きな要因となっているのは、再演で新たに加わった「少女」役を演じる、京都出身のシンガーソングライター・青葉市子の存在だろう。彼女の澄んだ歌声と、物語から一歩離れた所で漂っている姿が、この世界が現実の街か? 非現実の空間なのか? という謎を強める効果になっていたと思う。

天野天街が公演パンフの中で、レミングを「REMing」(REM=睡眠中に夢を見やすい時間)と記した通り、まさに時間も空間も思考もすべてがデタラメな、他人の奇妙な夢の中に放り出されたような世界に生まれ変わった『レミング』。3都市での公演を経て、より完成されるであろう上質のナイトメアは、1月に公演最終地・大阪に上陸する。

取材・文/吉永美和子

寺山修司生誕80年 音楽劇『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』

日時:2016年1月16日(土)・17日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
料金:8,500円(全席指定)
電話:0570-200-888(キョードーインフォメーション)
URL:http://lmaga.jp/event.php?id=6675

  • facebook
  • twitter
  • はてブ

エルマガジンが発行する本に掲載した“うまいお店“を簡単に検索できます。

関西で行われる展覧会やライブなどのイベント情報を探すことができます。