「辞めた方がいい・・・」の末に掴んだ、植村花菜が歌いたいこと

9月30日に初のベスト盤『The Best Songs』をリリースした植村花菜。苦節の5年を経て、2010年に「トイレの神様」が大ヒットを記録、社会現象を巻き起こした彼女。楽曲そのものの良さはさることながら、そのブレイクの裏には、シンガーソングライターとしての心構えに大きな変化があったという。デビュー10周年記念となるこのベスト盤を機に、ブレイク前夜、ブレイク後、そして今の心境について語ってもらった。
写真/Ayami
「私が書きたいのは、こんな曲じゃない」
── 最近ではご結婚、ご出産などもありましたが、デビュー10周年を振り返っていかがですか?
楽しかったですね。もちろん、苦しいことも悔しいこともあって、何度ひとりで泣きながら夜を明かしたか分からないくらいですけど(笑)。でも、総合的に見たらすごく楽しい10年でしたね。
── 今回のベスト盤は全32曲・2枚組の大ボリュームですが、最後に収録された新曲『なんてことない日々』。これが、今の植村花菜さんのシンガーソングライターとしてのひとつの到達点かなと思っていて。せっかくの機会なので、これまで探ってきたシンガーソングライター像についてお聞きできればと。
はい、喜んで。
── 2005年5月にシングル『大切な人』でメジャーデビューしたわけですが、そこから『トイレの神様』まで5年を要しました。この10年間を楽しかったと振り返られる今だからこそ、苦しかったことや悩んだことも言えるかな、と思うのですが。
いっぱいありますよ。1枚目のアルバム『いつも笑っていられるように』を2006年に出して、2枚目、3枚目も、自分としては最高の作品だと思ってリリースするわけじゃないですか。でも、なかなか思う通りにはいかないし、曲のせいなのか、歌詞のせいなのか、それとも違うなにかなのか、自分でも何が正解なのか分からなくなってきていて。
── 転機のきっかけとなったのは、やっぱり『トイレの神様』ですよね。
そうですね。『トイレの神様』が収録された『わたしのかけらたち』という2枚目のミニアルバムが「メジャーで最後のアルバムになるかもしれない」ってところまで来てたので。『わたしのかけらたち』を作る前ぐらい、デビューして4年目くらいかな、ホントにすごく辛くて、曲が全然書けなくなっちゃったんですよ。なんとなくのメロディ、なんとなくの歌詞、いろいろ経験させてもらったから、なんとなくの曲は書けるんですね。でも、「私が書きたいのは、こんな曲じゃないんだ」という曲しか、自分には浮かんでこなくって。
── なにが書きたいのか、自分でもまだ分からなかったと。
そうでしたね。自分が何を書きたいのかも分からない。だけど、今書いてるものじゃないというのは分かるんですよ。でも〆切はどんどん迫ってくるし。そういう音楽的なスランプだけでなく、プライベートもうまくいかない1年で、辛いことがいっぺんに降ってきた感じで。そんなとき、本気で「辞めた方がいいのかな・・・」って考えたときがあって、心底ゾッとしたんですね。
── それぐらい追い詰められていたと。
そのとき、自問自答したんですよ。子どものころから歌手になると決めて生きてきて、ずっと一生懸命頑張ってきたのに、ここで辞めて後悔しないかと。そのとき、もう1回音楽をゼロから真剣に向き合ってやろうと思って。メジャーという形じゃなくても、バイトしながら都内のライブハウスとか回ったり、昔みたいな活動になったとしても、音楽と離れるわけじゃない。
私はなにがやりたいのか、音楽がやりたいんだ。自分が大好きな音楽を一生やるんだって決めて。だったら、このメジャーとして最後になるかもしれないアルバムを自分らしい作品にできるかどうかで、来年からの私のシンガーソングライター人生が変わってくると。だから、なんとしても、植村花菜しか作れないアルバムを作るんだと心に誓って。

── とにかくひとつ、植村花菜の音楽をカタチとして残したいと。
そうです。絶対カタチにしてやるという気持ちで。そんななか、『わたしのかけらたち』のプロデューサーの寺岡呼人さんと雑談していたとき、おばあちゃんの話、トイレの神様の話をしたら、「それ、すごくイイ話だから曲にしてみたら?」ってなって。「トイレの神様なんて曲にできますかね?」「きっとできるよ、チャレンジしてみて」って。
最初はこんなん曲にできるかなって思ったけど、おばあちゃんとの思い出を書いていくうちに、これは私にしか書けない曲だと。思い出も全部私のものやし、植村花菜しか歌えないものやし。『トイレの神様』ができたとき、「私が書きたかったのはこれなんや!」って気付いたんですよ。自分がホントに書きたいモノというのが、すごくハッキリ分かって。基本のテーマは19歳に曲を作り始めたときからずっと変わってないんですけど、でももっと具体的になってきて。いろんなことがすごく転機になる曲でしたね。
── 売れるだけでなく、いろんな意味で大きかったと。
大きかったです。すごく、大きかったです。反響もですけど、自分のなかではシンガーソングライターとしてどうあるべきか、どういうものを書きたいのかっていうのを教えてくれた曲やから。いろんな人が名前を知ってくれたことも、ずっと応援してくれてるファンのみなさんに少しは恩返しできたかなってこともうれしかったし、たくさんいいことあったけど、自分としては「植村花菜というシンガーソングライターが、今後どう音楽を紡いでいくべきか」というのを教えてもらったのがすごく大きかったですね。
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