原監督、新作アニメは「仕事がなくて」

2015.5.1 12:30

実際の絵コンテを見せながらシーンを説明する原監督

(写真2枚)

ガロ三人娘のひとり、故・杉浦日向子の代表コミック『百日紅(さるすべり)』が長篇アニメ映画として甦った。原作は、絵師の葛飾北斎を軸に、娘で助手のお栄と、その周囲の人々との何気ない生活を描いた短篇集。手掛けたのは、『クレヨンしんちゃん』『河童のクゥと夏休み』などで知られる原恵一。アニメーションの世界で絶大な人気を誇る監督だ。

その公開を前に、原監督をゲストに迎えたトークイベントが大阪「ロフトプラスワン WEST」でおこなわれ、メイキングや本編からの抜き出し上映アリの、濃ゆくて深〜い時間(ナント3時間半以上!)となった。

「僕自身の作品もそうだけど、市井の人々を描いてる作品が好きなんだ」。サザエさんやドラえもんも大好きだという監督は、「杉浦日向子は20代後半に『風流江戸雀』でハマって、絵柄も素晴らしいし、ストーリーもいい。もし若い人で読んだことない人がいたら絶対読んで!」と絶賛。2005年に杉浦が亡くなった時は相当落ち込んだという。

映画『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』<br />© 2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
映画『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』 © 2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

今回の映画『百日紅〜Miss HOKUSAI』は、意外にも仕事がなくて困窮したことが、製作のきっかけになったという。「『カラフル』(2010年)の後、全然仕事がなくてさ。これはヤバいと思って、Production I.G代表の石川(光久)さんに、『合葬』(杉浦の1984年作品)をやりたいって売り込みに行ったら、杉浦作品なら『百日紅』、尺90分、ギャラこんくらいならやってもいいよって。もう即決!」。90分というコンパクトな尺にプレッシャーを感じながらも、緻密な計算を重ねた末、1カットも欠番(画を捨てること)を出さずに完成!「欠番無しなんて僕史上初めて! 自分を褒めてあげたい(笑)」と過去に葬り去った膨大な捨てカットの数々を振り返った。

尽きない話はどんどん深まり、キャスティング秘話から、原作と今作との比較、さらには葛飾北斎やお栄が実際に描いた浮世絵や、大事なところ丸見え! の過激な春画が投影されたり、自身の作品からのセルフリメイクシーンが参考映像として上映されたりと、ファンにはたまらない一夜となった。5月9日より、「大阪ステーションシティシネマ」ほかで公開される。

取材・文・写真/hime

映画『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』

2015年5月9日(土)公開
原作:杉浦日向子「百日紅」
監督:原 恵一
出演(声):杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、立川談春、ほか
配給:東京テアトル

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