若手映画作家の登竜門、劇場公開へ

2015.3.11 17:41

飯塚俊光、加瀬聡、草苅勲、羽生敏博、吉野耕平の5監督(左から)

(写真3枚)

2006年より始まった若手映画作家育成プロジェクト『ndjc』。その2014年製作の短編映画5本が、3月16日〜20日より「シネ・リーブル梅田」(大阪市北区)で上映される。

こういったプロジェクトは全国にもさまざまあるが、『ndjc』の特徴は「35ミリフィルムでの撮影」を必須としている点。デジタル撮影が主流の今、若い作り手にとって35ミリフィルムで撮影できるのは貴重な経験。さらに講師による指導も行われ、映画の知識、技術の継承を目的としている。

そして先日、2014年度の選抜された5人の監督が来阪。マスコミ向けの座談会を開催。題材は、いじめ、現代社会における対人関係など珍しくはない。そのなかでいかに、自分らしく逸脱させるか。そのあたりについて、それぞれに尋ねてみた。

イジメられっ子が奇妙なゲームに挑む飯塚監督の『チキンズダイナマイト』。ある女の子と1週間付き合い、ミッションをクリアして立場の逆転を狙う主人公の奮闘が笑える。「大人になっても、イジメみたいなことはある。だからイジメられっ子が負けている感じにはしたくなかった。弱くても立ち向かうことでカタルシスを生み、明るいテイストを映画では表現しました」。

逆転の立場を狙う主人公の奮闘が描かれている
逆転の立場を狙う主人公の奮闘が描かれている

加瀬監督の『もちつきラプソディ』は、女手一つで娘を育てる決意をした女性が主人公。田舎の実家に帰り、久々にもちつきに参加するが、そこで姉3人と、溜まりにたまった感情がぶつかってしまう。「自分も女流家庭。今回は、もちつきの(相手の)女性が、(男性を)リードする形を描きたかった。僕の場合、奇をてらうことはしなかった。凡人なので(笑)。むしろスタンダードなドラマを描いてやろうという気持ちでした」。

図書館勤務の3人の男女が抱える闇を描くのは、草苅監督の『本のゆがみ』。気持ちのバランスを崩した妻を支える男性、オヤジと援助交際をする女性など、もの静かで清廉な印象の図書館員たちの”ゆがみ”が露わになる。「シナリオを書くとき、自己流でどう進んでいくかを考えていた。ただ、脚本の指導を受けたとき”自分を出し過ぎじゃないか”と言われました。”ゆがみ”のおさえ方に、模索がありました」。

また、『good-bye』は、ネットカフェで暮らすシングルマザーとふたりの幼い娘の物語。羽生監督は「NHKのドキュメンタリーを観て、この話を考えた」という。「ネットカフェのあの(部屋の)スペースはどこか牢屋のようにも見える。自分の中でそれが映画的に見えた。僕らの生活と隣り合わせにあるのに”見えない感覚”がある。とても現代的だと思います。親子を温かく見守るのではなく、しかし批判でもなく、中間の視点で描きました」。

『トイレのピエタ』(6月6日全国公開)で商業デビューを飾る松永大司監督ら、確実に成果が生まれているこの『ndjc』の取り組み。この5監督は今後の映画界を牽引する人材になれるかどうか。注目して各作品を観て欲しい。

取材・文/田辺ユウキ

「ndjc2014完成作品 期間限定ロードショー」

日時:2015年3月16日(月)~20日(金)・18:40~
会場:シネ・リーブル梅田(大阪市北区大淀中1-1-88)
料金:一般1,200円、学生・シニア1,000円(5作品まとめて)

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