井上雄彦「まさかこんな目に合うとは」

2015.3.20 19:20

会見に出席した漫画家、井上雄彦

(写真3枚)

「サグラダ・ファミリア」で知られる建築界の巨匠、アントニ・ガウディ。そして、かつて一大バスケブームを起こした「SLAM DUNK」など国民的人気マンガの作者、井上雄彦。そんな2人の奇才のコラボ展が、ついに関西でも3月21日からスタート! 内覧会には井上雄彦も出席、会見が行われました。

「1992年のバルセロナオリンピックで初めてスペインを訪れたときにガウディ建築と出合うのですが、その時はいち観光客なので、感想も通り一遍の『なんてすごい建物なんだ』って。それから29年経って、このような不思議なご縁で、まさか”ガウディ×井上”的な、こんな目に合うとは思ってもみませんでした(笑)」

今回、井上が描き上げたのは、ガウディがどのように成長し、形成されていったのかという人間性に迫る部分。制作のため実際にスペインに1カ月間滞在した井上は、改めてガウディという存在に圧倒され、何を伝えるべきか悩んだそう。

「目の前がサグラダ・ファミリアというアパートで暮らしていたんですが、最初はあまりの大きさとディテールの細かさにスケッチをする気も起きなかったんです。地理的にも時代的にも、そして文化にも違いがあるし、僕とガウディの距離をすごく感じて。でも本当にそうなのかなと。僕は彼の『カサ・ミラ』が1番好きなんですが、まるで子どもの頃の砂遊びみたいに時間を忘れて(ものを)作るような、そういう喜びが溢れているように感じるんです。自然の節理や建築の理論をきちんと学ぶ一方で、そういった僕ら全員が持っているはずの創造のモト、喜びみたいなものを絶やさずに持ち続けた人なんじゃないのかなと。見えない壁を隔てた全く違う存在じゃなくて、みんな同じところから出発していて、僕が伝えなきゃいけないのはそこなんじゃないのかなと」

スペイン大使館の方と2ショットを撮影するお茶目な井上先生!
スペイン大使館の方と2ショットを撮影するお茶目な井上先生!

展示の最後には、自身で手漉きも行ったという巨大和紙に描き上げた墨絵も登場し、井上マンガが美術館ではこうなるか! という迫力満点の作品も。しかし彼の中では、美術展でも普段のマンガ制作でも、根本は変わらないのだとか。

「漫画は伝わらないとほぼ意味がないので、より分かりやすくっていうのに対して、美術展だと受け取り手によってもっと解釈に幅があってもいいとか、そういう表現の違いはあります。でも、モノを作るときの自分の中での出発点は同じ。僕は漫画家ですから、漫画で培ったものが自分の武器。僕がやる限り(美術作品ではなく)漫画です!」

最後に改めてガウディの魅力を問われ、井上はこう語る。

「自然に備わっている理(ことわり)には間違いが無いっていうことを、ガウディは完全に信頼していて。そこを外れた何か傲慢なことをするのではなく、忠実に作るっていうのをどんどん深めていったことが、僕が思う彼の1番の魅力ですね」

ほかとは違う偉大な存在というイメージが強いガウディを、実は我々とも同じ人間なのだと、井上らしい人間味あふれる生き生きとしたタッチで表現した本展。約40点の書き下ろし作品のほか、神戸でしかお目にかかれない、壁に描いた落書きチックなイラストもあるので、訪れた際はぜひ探してみて。

「特別展 ガウディ×井上雄彦 ーシンクロする創造の源泉ー」

期間:2015年3月21日(土)〜5月24日(日)
時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
料金:一般1,500円、大学生1,000円、高校生・65歳以上750円、中学生以下無料
電話:0570-063-050(10:00〜20:00/ローソンチケット内)

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