三島監督「中谷美紀さんは360度完璧」

2015.2.9 18:40

メガホンをとった三島有紀子監督

(写真2枚)

神戸を舞台に、祖母から受け継いだ洋裁店を営む二代目店主が、服を通じて自分自身や周囲との関わりを見つめなおしていく映画『繕い裁つ人』。そのメガホンをとった三島有紀子監督に話を聞いた。

三島監督は『しあわせのパン』(原田知世、大泉洋)、『ぶどうのなみだ』(大泉洋、安藤裕子、染谷将太)など、その土地での人間の「営み」を丁寧に撮ってきた。今回は「衣」の物語だ。

「中谷美紀さん演じる市江は、こだわりが強くて最高の(洋裁の)技術を持ち、全身全霊で服を作る。しかも相手が何を大切にしているかを、多くを語らずに服にこめていきます。その”語らず”というのがポイントだと思います。服を介して人とコミュニケーションをとる。彼女が作った服を着た人たちが、どういう気持ちになり、どうなっていくか。そこが重要なファクターですよね」

市江の服に目をつけるのが、デパートに勤める青年・藤井(三浦貴大)。彼は、市江にブランド化の話を持ちかける。彼女は決して首を縦にはふらない。自分の好きな仕事をやり、スタイルを崩さない市江の姿勢は、少しずつ疑問をもたれていく。そこで彼女の葛藤がはじまるが、一方で、観る者によっては「自分の好きなことだけをやっているのは素晴らしいこと。彼女に対する周囲のうらやましさもあるのでは」と、それぞれの仕事への接し方についていろんな考えが浮かぶかもしれない。

「私もフリーで(映画作りを)やってきましたが、そういう人は、頑固でもありますし、自分のこだわりを貫く強さもある。市江は、周りとはどこか違う雰囲気もありますよね。覚悟を持ってやっている自分の仕事に対し、市江の頑固さは、どこか自分にも重なる部分がありました」

自分の好きな仕事をやり、スタイルを崩さない市江を演じる中谷美紀
自分の好きな仕事をやり、スタイルを崩さない市江を演じる中谷美紀

芯をもって生きる市江を、静かな好演でみせた中谷美紀。三島監督は、以前より彼女の主演映画を撮りたかったという。

「中谷さんには湖面のように美しいイメージを抱いていて、360度完璧という印象があったほど。そんな中谷さんの主演映画を撮りたいと、ずっと思っていました。中谷さんが、市江という役を通じてあらわす、ほころびもぜひ観て欲しいです」

取材・文・写真/田辺ユウキ

映画『繕い裁つ人』

2015年1月31日(土)公開
監督:三島有紀子
出演:中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、 黒木華、杉咲花、中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子、ほか
配給:ギャガ
1時間44分
大阪ステーションシティシネマほかで上映
© 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

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