行定勲監督、壁ドン映画に抗う「恋愛ってもっと自由でしょ?」
舞台『ブエノスアイレス午前零時』の演出を手掛けた映画監督・行定勲が、大阪での千秋楽を終えて、「せっかく大阪にいるなら、お客さんと交流したい」と、自身の最新映画『真夜中の五分前』上映中の「梅田ブルク7」(大阪市北区)を訪問。ティーチイン(監督やキャストが質疑に応答するイベント)が開催された。

映画『真夜中の五分前』は10年前、日本のメジャー配給の元で「ベストセラー小説の映画化」という企画で立ち上がったが、脚本の段階で配給側との意見が合わず頓挫。それでも頭から離れず、6年前に再提案するも、また中断。最終的には、原作の設定を根底から変更して、中国との共同製作という形で実を結んだ労作だ。
「今は『壁ドン』やらなきゃラブストーリーじゃない、っていう流れでしょ。お決まりのキャスティングに、フォーマット通りのストーリー、ここでスローモーションの演出が入って・・・。それが金のなる木だから、そういう作品を要求される。だけど、ラブストーリーってもっと自由じゃない? だから、そうじゃないものを提案するんだけど、『それには、この予算は割けない』と言われてしまうんだよね」
そして、中国、台湾、韓国など、アジア圏の映画仲間と話すと、実はどの国も同じで、みんな自国の映画業界の今後を憂いていることが分かったという。「スターが出てるだけの、『映画としてはどうなんだ?』という作品ばかりが氾濫する各国の現状。例えば、中国映画でも、中国で大ヒットした映画は、日本には輸入されない。逆に、日本に入って来てるような中国映画は優秀な作品なんだけど、中国の人の多くは見てない・・・」と。

そんな問題意識を持ってる映画人同士で、「各国の少ない予算を持ち寄って作るのもアリじゃない?」と思い立ち、「海外で映画を作る!」という発想にシフト。ほどなく上海の映画チームからの招致があり、日中タッグが実現。そこで完成されたのが、三浦春馬主演の映画『真夜中の五分前』だ。
とはいえ、抗日デモが激化したことで、中国側から「中止」を突きつけられることも覚悟したという。「でも、上海のスタッフは『え、何が問題なの? そんなのは乗り越えられるから、それより映画作ろうぜ』って。これこそ、真理だなって思った。政治的にはいろいろあっても、映画くらいは隣国と手を組んで作らなきゃいけないと、気持ちが固まった」と。
結果、中国では4000スクリーンで上映されるという、期待以上の展開に! 「ヒロインに中国のリウ・シーシー、準主役に台湾のチャン・シャオチュアン(ジョセフ・チャンと言った方が分かる人も多いかも?)と、今や出演料1億円ともいわれる才能を得られたのも、素晴しい結果となった」。

観客からの質疑応答では、「2014年に見た映画で一番面白かった。今日で2回目」という女性もいたりと、渾身の作品に観客の満足度も高かった様子。行定監督は「人によって、いろんな解釈ができる作品だと思う。見終わった後にぜひ語り合って欲しい」と締めくくった。
取材・文・写真/hime
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