BASI×上田誠_関西クリエーター対談・前編

2012.11.13 00:00

質問2.関西に在住していることが、作品に反映されていると思うことは?
「京都からは京都の風土や思想から生まれた演劇が出てくる」(上田)
「天候や環境でも、出てくる言葉は変わってくるんです」(BASI)

上田 「さっきの話の繰り返しになりますけど、演劇は特に、その土地の文化を含んだ物が出てくる表現だから、何かしら反映はされているでしょうね。イギリスからはイギリス、インドからはインド、京都からは京都の風土や思想から生まれた演劇が出てくる、という」

BASI 「よく韻シストは“ゆるい音楽”と形容されるんですけども、それは自分が育った街(岸和田)が自然豊かで、すごくゆっくり時間が流れている所だったので、その影響はあると思います」

上田 「東京のミュージシャンの方って、よく“先へ進む”とか“新しい所へ”って言葉を使いますよね? それって東京が割と新しい街なんで、多分そういう言葉が出てくると思うんですよ。でも他の土地に住んでる人って、そこまで前へ前とは、思ってないんじゃないですかね? たとえば沖縄のミュージシャンが“もっと新しい世界に!”とか歌ってたら、多分違和感があると思うんです(笑)」

BASI 「厳密に言うと、天候や環境でも、出てくる言葉は変わってくるんですけど・・・でも東京に住んだら、リズムも選ぶ言葉も、今とは全然違うものになるだろうなと思います。すごくピッチの早い音楽ができて、リスナーも“正座して聞こかなあ”ってなるかも(笑)」

上田 「(ライターが「関西からヒットした楽曲は“一生一緒にいてくれや”とか、現状に満足した曲が多い」と口を挟んだのを聞いて)あー、そうそう確かに!(笑)ウルフルズだって“ここままずっと死ぬまでハッピー”とか歌ってましたしねえ」

BASI 「現状維持、みたいな(一同笑)。そうですね、それ意識するとホンマにそうですね。あんまり考えたことなかったけど、勝手にそうなってるんでしょうね」

上田 「もちろん東京の言葉がこっちに入ってきたり、アーティスト同士の影響とかもあるんでしょうけど、でも土地から受ける影響って、絶対に・・・」

BASI 「ありますね」

上田 「作品に反映というのとは少しズレますけど、昨年『ロベ ルトの操縦』という作品で全国を巡演した時に、特に東京での反応が印象的だったんです。当 時は震災のすぐ後で、東京から逃げる逃げないみたいな話があって。多分お客さんも、東京に 住み続けながらも心のどこかで、どっか遠い所にピョーンと行けたら気持ちいいだろうなあ・・・という不埒な想いが、DNAレベルであったと思うんですよ。それで、走って走って最後に逃げ切る人たちの話にすれば、体の奥深くにシンクロするんじゃないかという色気は、作ってる時からありました。それも一つの、作品と土地の関係を考えさせられた出来事でしたね」

まだまだ続く、上田誠×BASIの関西クリエーター対談、後編はこちら!

profile
上田誠(うえだ・まこと)
京都を拠点にする活動する劇作家・演出家。1998年に劇団[ヨーロッパ企画]を結成。最近は「人間と地形の絡みを観察する、企画性の高いコメディ」という独特の芝居に取り組み、演劇以外のジャンルのクリエイターからも注目を集めている。今夏放映された『ドラゴン青年団』で、初めて全国ネットの連続ドラマの全話を担当した。ヨーロッパ企画の最新公演、第31回公演『月とスイートスポット 』は11月9日からスタート。

BASI(ばし)
岸和田を拠点に活動するMC。1998年にヒップホップバンド・韻シストを結成し、03年にメジャーデビュー。日常感を大事にしたリリックと、ゆるやかなムードのサウンドで、全国的な人気を博す。11年にインディレーベル[BASIC MUSIC]を設立し、ソロデビューを果たす。同年10月に1stアルバム『RAP AMAZING』、12年4月には2ndアルバム『VOICERATION』をリリース。最新作は12インチアナログ「スタンダード」(9月発売)。

ヨーロッパ企画

BASI

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