“秀吉伝説”に利用された? 「墨俣一夜城」の実体…ドラマは新説【豊臣兄弟】

4時間前

『豊臣兄弟!』第7回より。蜂須賀正勝との交渉から戻ってきた小一郎(写真左、仲野太賀)と兄・藤吉郎(写真右、池松壮亮)(C)NHK

(写真10枚)

豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。2月22日放送の第7回「決死の築城作戦」で取り上げられた「墨俣城」築城は、実は本当に秀吉がやったのかどうかが曖昧な事実。その辺りの事情を探りつつ、戦国の女性に実は必須だった才能についても考えてみた。


■ 上の空で追い返される小一郎…第7回あらすじ

木下藤吉郎(豊臣秀吉/池松壮亮)と寧々(浜辺美波)の祝言の日、2人はふとしたことから言い争いを始めるが、直(白石聖)が「中村に帰る」と言い出したために落ち着いて、祝言は無事おこなわれた。これは小一郎が立てた作戦だったが、直は芝居ではなく、本当に心変わりをしたと小一郎に告げる。

小一郎は藤吉郎とともに墨俣の攻略に赴くが、直のことで頭が一杯なことを藤吉郎に見抜かれ、追い出されるように直の元に帰された。

『豊臣兄弟!』第7回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第7回より。故郷・中村に帰ると言う直(白石聖)を引き止める小一郎(仲野太賀)(C)NHK

直は小一郎が墨俣に出かけた頃から病に倒れ、生死の境をさまよっていた。小一郎は寺に大量の銭を寄進して一心に祈り、その甲斐があって直は目覚めた。小一郎は、これまで直に心配をかけていたことを詫び「お主がわしの帰る場所なんじゃ」と告白。直もまた、小一郎に嫌われる前に逃げ出そうとしていたと本心を明かした。

その頃墨俣では、藤吉郎が蜂須賀正勝(高橋努)を口説き落とすのに成功し、墨俣の攻略に一歩近づいた。

■ 「墨俣一夜城」って本当?今回は新説を反映

豊臣秀吉が実現した驚きのアイディアの一つとしてよく挙げられる「墨俣一夜城」。美濃の国境付近にある墨俣に、たった一晩で城を築いて、斎藤家攻略の大きな足がかりにした・・・という伝説だ。

数十年前までは割と真面目に信じられていたフシがあるけれど、近年の研究では「さすがに一晩で城は建たない」という結論に。ちなみに、現在ある墨俣城は、大垣城の天守を模して、平成になってから作られたものだ。

『豊臣兄弟!』第8回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第8回より。暗闇のなか逃げる小一郎(写真左、仲野太賀)たち(C)NHK

ということで、実際は「城」というよりは「砦」ぐらいの簡素なものだったのではないか・・・と言われている墨俣城(砦)。信憑性が割と高めの古文書『信長公記』には、斎藤家と戦うために「洲股要害」を築いたという記述があるという。

江戸時代に入ってから、いろんな作家が秀吉の伝記を創作していくなかで、重要拠点ながら誰が建てたか不明な洲股(墨俣)要害が、秀吉の超人ぶりを誇張するためのネタにされたのではないか・・・と推察される。

『豊臣兄弟!』第7回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第7回より。川並衆の棟梁・蜂須賀正勝(写真左、高橋努)に協力してもらえるよう交渉する藤吉郎(写真右、池松壮亮)(C)NHK

また、今回で秀吉と出会い、墨俣城作戦に協力することになった蜂須賀正勝(小六という名前の方が知られているか)。割とこれまでのフィクションでは、秀吉は織田信長(小栗旬)と出会う前に正勝の家来だった時期があり、この時点で顔見知りだった・・・という説が有力だった。

さらには、秀吉の父が、正勝の父に仕えていたという説もあったりして、どの説をチョイスするかは、脚本・八津弘幸にとってはかなりの腕の見せ所だっただろう。ちなみに正勝と前野長康(渋谷謙人)が義兄弟だったというのは、本当の話のようだ。

『豊臣兄弟!』第7回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第7回より。織田家家臣・前野長康を助けに来た川並衆の棟梁・蜂須賀正勝たち。写真左から、前野長康(渋谷謙人)、小一郎(仲野太賀)、藤吉郎(池松壮亮)、蜂須賀正勝(高橋努)(C)NHK

ということで、一定の年代以上の人にとっては「あれ? 知ってる話と違う・・・」となるような最新の説を反映しながら、史実と伝承の隙間を縫うような感じで、令和大河一発目の墨俣城伝説を築き上げようとしている『豊臣兄弟!』。

城を作るのは確かに一晩では不可能なはずだけど、それでも「一夜城」の伝説が生まれたのには、どんな理由があったのか? この続きとなる来週は、そのお手並みを拝見するということになりそうだ。

■ 戦国時代の女性の“必須スキル”は…

そして今回、墨俣城実現の根回し以上に視聴者をやきもきさせたのは、秀長と直の関係と、直の病状だろう。秀長に迷いが生まれると、なにかと強い言葉をかけて彼を覚醒させてきた、まさに正ヒロイン、これぞ戦国の女と言うべき姿を見せてきた直だけど、ここにきて「秀長が無事に帰ってきてくれるかどうか」というプレッシャーに苛まれて、心身ともに衰弱していたことが判明してしまった。

『豊臣兄弟!』第7回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第7回より。熱で寝込む直(白石聖)を心配する小一郎(仲野太賀)(C)NHK

戦国大河では、これまでいろんな女性が描かれてきた。みずから戦闘に参加する武将の妻もいれば、「戦は嫌です」と平和を訴える現代的な姫君もいるし、武力ではなく知恵をフル回転させて大大名たちに対抗した城主もいる。

彼女たちは、なんだかんだで愛する人がいつ死ぬかわからないという戦国の定めを、ごく当たり前に受け入れていたことに、今週の直を見て今さらのように気付かされてしまった。

『豊臣兄弟!』第6回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第6回より。小一郎(仲野太賀)を心配する直(白石聖)(C)NHK

たまに村が野党に襲われることがあっても、さほど身内がしょっちゅう戦いに赴いている様子がなかった直にとっては、身近な人が死体となって帰って来るということは、フィクションのような出来事に思えただろう。

しかし、秀長を侍として戦国の真っ只中に送り込んだことで、家族や愛する人の無事をただ祈るしかできることがないという、辛さやストレスを抱えつづける女性たちと同じ立場に、直も一緒に飛び込んでしまったということになる。

■ 当時の悲喜を追体験…直は退場不可避?

そして「ただ無事を祈って待つ」というのは、実は非常に才能がいることではないか・・・と、直以外の女性たちを見ていると考えてしまった。

『豊臣兄弟!』第7回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第7回より。祝言を挙げる藤吉郎(池松壮亮)と寧々(浜辺美波)(C)NHK

たとえば、今回めでたく秀吉と結婚した寧々は、多少の揺らぎはありつつもその現実をしっかり受け止めて、秀長に気持を率直に伝えることができていた。また、兄弟の母・なか(坂井真紀)は、今回直には弱音を吐いていたけど、基本的に「2人が一緒なら大丈夫」と鷹揚に構えている。これこそが、戦国のビッグマザーにふさわしいメンタルだろう。

今回は秀長が「僕は死にましぇん!」(by『101回目のプロポーズ』)とばかりに直を励まして、思いを確かめあったことで直は浮上できた。

『豊臣兄弟!』第7回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第7回より。熱が治った直(白石聖)を抱きしめる小一郎(仲野太賀)(C)NHK

来週はいよいよ夫婦となるみたいだけど、この先に秀長の正室・慶(ちか/吉岡里帆)が控えていることを考えると、直は途中退場・・・最悪の事態にはならないまでも、いったん秀長の元を離れるという可能性は、どう考えてもかなり高い。オリジナルキャラクターゆえの歯がゆさである。

そして、直が秀長の元を離れるとしたら、この「待つ」ことの資質が、兄弟周辺のほかの女性たちと比べて不足していることが、なんらかの原因になるんじゃないかと勝手に推察する。

従来の戦国大河よりも、女性たちにできるだけ焦点を当てていくという『豊臣兄弟!』。当時の女性たちが感じてきたリアルなしんどさと、それと同じぐらいの喜びを、私たちは彼女たちを通して体感することになるのだろう。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。3月1日放送の第8回「墨俣一夜城」では、ついに墨俣に砦を気づく作戦が実行され、斎藤龍興(濱田龍臣)の軍と激突するところが描かれると同時に、のちに秀吉を支える軍師・竹中半兵衛(菅田将暉)が初登場する。

文/吉永美和子


  • LINE

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本