神戸文化ホール開館50周年フィナーレ 鈴木浩介・美弥るりか出演で神戸を描く『流々転々』

開館50周年記念事業として「神戸文化ホール 中ホール」で上演『流々転々 KOBE 1942-1946』約900席のホール、初日は満員御礼(撮影:井上嘉和)
2028年以降三宮に新・神戸文化ホールとして移転予定の「神戸文化ホール」(神戸市中央区、1973年開館)。2023年から続いた50周年記念事業のフィナーレを飾る舞台『流々転々 KOBE 1942-1946』が2月15日に千秋楽を迎えた。

ドラマや映画、舞台など幅広く活躍する俳優の鈴木浩介。 宝塚歌劇団星組、月組で男役スターとして活躍し、退団後は女優やアーティストとして活動の幅を広げる美弥るりか。この2人と、関西を拠点に活躍する俳優・ダンサーらが神戸に集結し、戦時下の神戸が舞台の物語を作り上げた。舞台写真とともに、鈴木浩介、美弥るりか、演出の小野寺修二、チーフプロデューサー・岡野亜紀子によるアフタートークをレポートする。



原作は俳人・西東三鬼の短編小説『神戸・続神戸』。物語の舞台は、かつて神戸・トアロードに実在した国際ホテルで、東京から流れ着いた鈴木浩介演じる「男」と、美弥るりかが演じる波子(美弥は絹代と2役を演じた)をはじめ、娼婦、学生、外国人らそれぞれ事情をもった、クセの強い宿泊者らが交錯する。

タイトルにもある「1942-1946」。1942年というと、太平洋戦争戦時下で、アメリカ軍による日本本土空襲がはじまった年。一見穏やかに見える、ハイカラな神戸での暮らしに、徐々に忍び寄る戦争の影…何があったのかをはっきりと状況を説明するような台詞などはごくわずかで、巧みな身体表現でみせることで、日常が壊れていく、何とも言えない気味の悪さ、恐ろしさを強烈に感じさせた。



◆ 満員御礼で迎えた初日…鈴木、美弥、小野寺「神戸での創作の感想は…?」
初日上演直後のアフタートークには、鈴木浩介、美弥るりか、演出の小野寺修二、チーフプロデューサーの岡野亜紀子が登壇。
初日の感想を聞かれた鈴木は「無事に最後までいけました、みんな必死でここまできました。映画やドラマはそれぞれ良さがあるけれど、小野寺さんは舞台の魅力を120%引き出してくれるので、美弥さんと一緒に丁寧に物語を作ってきた。演じながら、客席からの大量の『?』を感じてました。『あれなんなの?』を家に帰って考えるのも、舞台の楽しみのひとつですよね」と笑う。

美弥は「役者として、光栄な機会を噛みしめながら過ごしてきました。今日は温かい拍手をお客さんからいただいて、胸がいっぱい。浩介さんと初共演でしたが、『こんな天才が!?』とはじめてお会いした日を強烈に覚えています。鳥肌が立って、ワクワクして、自分も成長したいと思って。神戸で毎日トアロードを歩いて劇場に通った日々が終わってしまうのがさみしすぎる…」と、宝塚歌劇団在籍時から慣れ親しんだ神戸との別れを惜しんだ。
今回は、東京(鈴木・美弥)と神戸で別々に稽古を行い、最後に神戸に集まって合わせる、という形になったそうで、小野寺が「特にお2人(鈴木・美弥)は緊張しただろうと思います。神戸でみんなで集合できるのが待ち遠しかった。ギリギリでしたが、もしあと1カ月お稽古をできたら…。原作は20篇の読み物で、そこに近づけるためにあえて話を分かりやすくしていない。結果複雑になったのは、そういう思い入れもあるからです」と話すと、岡野は「緻密に組み立ててくださって、感無量でした!」と演出の手腕を称えた。

「『神戸を見せたい』とお話をいただいたので、2023年からリサーチやワークショップをして、できるだけ神戸に足を運んだ。例えば新開地には、人間くさい、素晴らしい人たちがいっぱいいらっしゃった。神戸はおしゃれなイメージがあったけど、それまで『表』のごく一部しか見ていなかったことに気づきました」と小野寺。街を歩き、リサーチを重ねることで、神戸の街が持つ多様性を徐々につかむことができたようだ。

また翌日の公演に向けての抱負を聞かれ、鈴木は「初日に観たもの、中日、千秋楽と、全然違うのが舞台の面白さ。今回3公演のみなので、それを短時間で堪能できてしまいます。残りのステージをみんなと一緒に前に進みたい」、美弥は「これから関西に来ると、必ず思い出してしまうような濃い時間を過ごしています。精いっぱい心を込め、神戸への想いを込めて一瞬一瞬を大切にしたい」と意気込んだ。

◆ 新ホール移転を前に「潮目が変わった?」神戸文化ホール岡野亜紀子に聞く

「今回、2025年に戦後80年、震災後30年という節目を迎え、その年度に上演するのにふさわしいテーマとして、長年温めてきた西東三鬼『神戸・続神戸』の舞台化に挑戦しました。私もはじめは変わった名前の作家という印象でしたが、原作はとにかく面白い。さまざまな方面で活躍するスタッフやキャストを説得して、神戸でこうして制作することができたのは、その原作の魅力のおかげ」と話すのは、同ホール事業部長で本作のチーフプロデューサーの岡野亜紀子。
「神戸の文化振興というと、かつて華々しい時代もありましたが、阪神淡路大震災で大きなダメージを受けてからは、なかなか文化的なものに予算がつかない状況が続きました。ただ、ここ十年くらい三宮にホールが移転することも含め、潮目が変わってきたと感じます。神戸全体のムーブメントの中で、プロデュース公演で街ごと盛り上げていきたい、という思いがありました」と、舞台上演のみならず、街歩きイベント、リーディングライブ、トアロードの名店を巡るツアーなどホール外の関連企画も多数実施した。

「神戸の人は、神戸の内側で盛り上がる感じがあって。同じ関西でも大阪や京都と比較して、良くも悪くも執着しない、グイグイいかない、恥ずかしがり屋が多いのかもしれません。これから2028年のホール移転へのロードマップとして、もっと神戸の外へもアピールするための企画力、発信力を鍛えて、神戸からかき回していきたいですね」。新ホールへの移転も見据え、さらに神戸文化ホールが面白くなりそうだ。
取材・文/Lmaga.jp編集部
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