京都ならでは……斬新すぎる「日本画展」開幕、戦後に着目した”型破りの表現”

13時間前

『特別展 日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970』より(Lmaga.jp)

(写真8枚)

戦後の京都で生まれた「斬新な日本画」に焦点をあてた特別展が、2月7日より「京都市京セラ美術館」(京都市左京区)でスタート。描くだけでなく、麻袋や下駄を使った立体的な作品など、「伝統美」の枠を越えた驚きの日本画を鑑賞できる。

■ 近代日本画の価値観が大きく変わった「戦後」に着目

麻袋が貼り付けてある、大野俶嵩『緋 No.24』、昭和39年、京都市美術館、全期間展示

これまで近代日本画の研究を続けてきた同館が、今回は既存の価値観が大きく変わった戦後に着目。1940年代以降に京都で結成された3つの美術団体を中心に、新たな表現を模索した30人以上の画家たちによる、約150点の作品を紹介する。

画風の変化に注目(手前から)秋野不矩『少年群像』、昭和25年、浜松市秋野不矩美術館、前期展示、秋野不矩『砂上』、昭和11年、京都市美術館、全期間展示

「なぜ京都で日本画の反骨的創造運動が起こったのか」という問いについて、学芸員の森光彦さんは「戦後は『日本画滅亡論』が唱えられ、特に伝統的な日本画の中心地・京都では手法などがアップデートされない日本画について、新たな表現を求めるアンチテーゼが起こりやすかった」と分析する。

「だるい」の文字も見える…(手前から)野村耕『スクラップ』、昭和40年、京都市美術館、野村耕『存在の露呈』、昭和40年、京都市美術館、いずれも全期間展示

森さんによれば、伝統的な日本画は、墨や岩絵具での抑えられた色づかいが多く、薄塗りで輪郭線のある花鳥風月や穏やかな風景を描くのが主流。だが、同展では敢えて「これが日本画?」「何を描いているのか分からない」と驚かれるような「主流から飛び出して行った画家たち」の作品を通して、現代に繋がる前衛的な表現の模索や進化を鑑賞できるのが醍醐味だ。

■ 「これは絵画としてありなの?」論争乗り越え展示へ

『特別展 日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970』展示風景

その中心となる美術団体が紹介され、1948年創立「創造美術」の章では特に、同じ画家による戦前(あるいは戦時中)と戦後の作品が並び、画風の変化の見くらべがおすすめ。例えば、秋野不矩による息子をモデルにした『少年群像』は、隣に展示された『砂上』と比べると、伝統美の象徴である余白がなく、色むらを出すことで人間の野性的な生命力を表現したといわれる。

「何かやろう」という20代の若いエネルギーが集結した1949年創立「パンリアル美術協会」の章では、斬新さが加速した作品が続々。実験的な新画材も使われ、同展のキービジュアルでもある大野俶嵩の『緋 No.24』は、赤の色面に大きな麻袋が貼り付けられ、インパクト大。物が飛び出した立体感について、「これは絵画としてありなのか?」協会内でも論争が起こったそう。

下駄を使った作品、岩田重義『精』、昭和35年、全期間展示

さらに、1959年創立「ケラ美術協会」の章では、森さんが「1960年代の若者のにおいを感じる」と話すように、下駄やバッテリーのロゴ、卵パックを使った作品も。かつての「高価な墨や岩絵具で、上品に描かれた日本画」よりも、若年層でも手が届く身近なモチーフや画材で、現代的なものをどう日本画に写し取るかの模索も見受けられる。

森さんは「全体的に西洋絵画の影響も感じますし、写実性だけでなく観念的なもの、画家自身の内省的・心のうちを表現したものなど、解説するのもひと苦労なほど自由な作品が多い。ぜひこの枠にとらわれない多様性を、お子さんや若い学生さんたちにも見てほしい」と呼びかける。

『特別展 日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970』展示風景
Tシャツやトートバック、雑貨などオリジナルグッズも販売される

『日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970』は「京都市京セラ美術館」新館 東山キューブにて、5月6日まで開催。前期・中期・後期で一部に展示替えあり。料金は一般1800円ほか。また、無料の関連企画展『77年後のリフレクション KYOTO 2026』が「藤井大丸」(京都市下京区)にて、5月6日まで開催。作家8名のリレー形式での展示となる。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文・撮影/塩屋薫

  • LINE

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本