「全部逆、教えたったー!」松下洸平の家康、腹読めずともカワイイ【豊臣兄弟】

3時間前

『豊臣兄弟!』第5回より。織田信長と「清洲同盟」を結ぶ松平元康(のちの徳川家康/松下洸平)(C)NHK

(写真10枚)

豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。2月1日放送の第5回「嘘から出た実(まこと)」では、信長、秀吉と並んで「三英傑」と称される徳川家康が、ついに豊臣兄弟と初対面。今回の家康像を紐解くとともに、現在兄弟が調略に動いている大沢次郎左衛門の状況についてもまとめてみた。

■ 重大任務、鵜沼城を調略せよ…第5回あらすじ

織田信長(小栗旬)は犬山城を攻略するために、鵜沼城城主・大沢次郎左衛門(松尾諭)を味方にするよう動いていたが、低い身分から斎藤道三(麿赤兒)に取り立てられた恩がある彼は、決して耳を貸さなかった。

小一郎と兄・木下藤吉郎(豊臣秀吉/池松壮亮)は義兄・弥助(上川周作)を使って、次郎左衛門は織田と通じているという噂を流す。それを真に受けた斎藤龍興(濱田龍臣)は、妻・篠(映美くらら)を人質として差し出すよう命じた。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。美濃で噂を流すよう義兄たちに伝える小一郎。写真左から、義兄・弥助(上川周作)、義弟・甚助(前原瑞樹)、小一郎(仲野太賀)(C)NHK

そこに小一郎と藤吉郎が来城し、どうせ謀反を疑われているなら、本当に織田家に仕官するよう誘う。龍興に疑問を抱く次郎左衛門は、藤吉郎が愛する女性のために必死になる姿にかつての自分を投影し、さらに道三が信長と自分が似ていると言っていたことを思い出す。

次郎左衛門は、藤吉郎を人質として鵜沼城に残して信長の元へ。しかしそこで暗殺用の武器が発見され、次郎左衛門と秀長は窮地に立たされる。

■ 「全部逆、教えたったー!」腹読めない、松下洸平の家康

これまでチラ見せ程度の登場だった松下洸平の徳川家康が、ついに信長と同盟を結んで、ドラマのメインルートに合流した。信長と家康の「清洲同盟」は、このあと信長が死ぬまでつづき、途中で反故にされることがなかった数少ない軍事同盟の一つとなっている。

前回の戦国大河『どうする家康』(2023年)は、信長の家康への愛が重くて複雑な関係となったけど、今回の小栗信長は家康にさほど執着はないようなので、そこは平穏に見られることになりそうだ。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。織田信長に木下藤吉郎が呼ばれ、のちの戦国の三英傑が揃った瞬間。写真左から、松平元康(のちの徳川家康/松下洸平)、織田信長(小栗旬)、佐久間信盛(菅原大吉)(C)NHK

そして徳川家康のキャラ付けは、この三英傑のなかでは比較的自由度が高い。根っからピュアな性格だったのにだんだん腹黒くなっていくパターンもあれば、最初から得体の知れなさが垣間見える場合もある。泰然としているかと思えば、割と感情の起伏が激しい性格になることも。

そんななかで松下版の家康は、本人のインタビューいわく「腹の底が見えないけど、ユーモラスでチャーミング」なキャラクターになるとのことだ。

確かに今回の、秀吉に大真面目に嘘のアドバイスをして、そのあと「全て逆のことを言うてやった!」と石川数正(迫田孝也)とはしゃぐところ。「いい根性してんなあ」と言いたくなる一方、それがただの意地悪というより、ちょっとしたイタズラみたいに見えてしまうのが、松下の演技というのもあるけど、本人の人柄が反映されている気もする。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』より。松平元康(のちの徳川家康/松下洸平)(C)NHK

そして一つ気になるのが、彼の嘘のなかに「信長殿を信じること」というのが、サラリと入っていたことだ。

これは裏を返すと、この段階で家康は信長を信じ切ってはいないという証(あかし)。『どうする家康』の松本潤版家康は、妻子を駿府に残していたこともあり、今川に大きな未練を残したまま同盟を結んでいたけど、松下版家康もまた、信長を信頼して同盟を結んだわけではないという本音を、うっかりポロってしまったわけだ(この抜け具合が確かにチャーミング!)。

本人は秘めたつもりの腹の内が、どこかでドラマを・・・あるいは歴史を動かすポイントになるかもしれない。

■ 嘘を鵜呑み…秀吉の「本気100%」で大逆転

この家康の嘘に対して、秀長は違和感をちょっと感じ取ったようだけど、秀吉はすっかり間に受けてしまった。そうして秀吉は、大沢次郎左衛門との交渉を「信長を信頼する」「誰にもできないことをやる」「己を信じて突き進む」「最後は熱意の勝負」という家康のアドバイスを鵜呑みにして挑んだ。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉/池松壮亮)を手当てする寧々(浜辺美波)(C)NHK

妻を人質に送らねばならぬほど龍興からの信頼を失った大沢殿に「うちの殿に仕えて損はない」と必死に訴え、諜報活動がバレても「好きな女をめとって出世したい!」と本気100%で訴えた。

この命がけの交渉が秀吉の出世ルートを開くわけだが、もし、家康が嘘じゃないアドバイスを送っていたらどうなっただろう。斬られる・斬られない以前に、ほかの人たちと同じように正攻法で「どうせダメだろうなあ・・・」と思いながら交渉しようとして、間違いなく「帰れーーーー!」と言われていたはずだ。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。織田信長のもとへ斎藤家家臣・大沢次郎左衛門(写真左、松尾諭)を連れてきた小一郎(のちの豊臣秀長/写真右、仲野太賀)(C)NHK

まさか家康も自分の心にもない助言が、豊臣兄弟の交渉術の大きなピースをはめることになるなんて想像できなかったはず。そういう意味で家康も、兄弟の人となりを作った1人と言えるだろう。

■ 「美濃のマムシ」斎藤道三って?現在は…

ここで大沢殿が仕えている、斎藤家の状況について説明しておこう。明智光秀が主役の『麒麟がくる』(2020年)を見た視聴者なら記憶に新しいだろうけど、美濃国一帯を治める斎藤家の初代は、わずかな登場ながらも「本人降臨」とSNSをザワつかせた、麿赤兒演じる斎藤道三だ。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。美濃を治めていた戦国大名・斎藤道三(麿赤兒)(C)NHK

「戦国三大悪人」の1人と言われるほど悪どい乗っ取りを重ね、油売りから一大名に出世。豊臣兄弟に継いで、究極の下剋上を果たした人物と言えるだろう。

しかし道三は、DAIGOがサプライズで演じた嫡子・義龍と対立し、最終的に義龍に討たれる(このとき牢人となってしまうのが明智光秀)。その義龍もわずか5年後に病死したため、現在は道三の孫に当たる龍興が当主だ。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。家臣に詰め寄る美濃の戦国大名・斎藤龍興(濱田龍臣)(C)NHK

龍興も今川義元(大鶴義丹)と同じく、ただただ信長に踏み台にされた暗君扱いされる時代がつづいたけど、最近は信長レジスタンスとしての評価が上がってきている。

とはいえこの第5回の段階では、良くも悪くもスケールがデカかった祖父の威光を疎ましく思い、特に道三に取り立てられた大沢殿への当たりがキツイという印象だった。

結局彼の寝返りが、斎藤家崩壊の一歩となってしまうのだけど、その最大の要因となるのが、糟糠の妻を人質にすることを要求されたためだとは・・・出世とか復讐とかのためではなく、夫婦関係を脅かされたのが謀反の理由になるのは、ちょっと珍しいケースではないか。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。鵜沼城城主となった頃の斎藤家家臣・大沢次郎左衛門(松尾諭)と妻・篠(映美くらら)(C)NHK

とはいえ「美濃のマムシ」に重宝されて成り上がった人物なのだから、信長サイドとしては「織田に着く」と言われても、「寝首をかかれるのでは?」と恐れを抱く者も多いだろう。果たして大沢殿に濡れ衣を着せようとしたのは、斎藤側か? 大沢家の誰かなのか? それとも・・・信長?

第1回で斎藤側のスパイを見つけ出すという、キレッキレの名推理を見せた秀長君、今回もズバッと真犯人を探し当ててほしい。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。妻・篠(映美くらら)と過去を懐かしむ斎藤家家臣・大沢次郎左衛門(松尾諭)(C)NHK

ちなみに、大沢次郎左衛門が「つぶて打ちの名人」ということに、SNSでは「武器が石ってw」みたいな、にわかには信じがたいという雰囲気のコメントが見受けられたけど、実はこの時代投石は非常に有効な「兵器」。刀よりも石つぶてで死んだ人の方が多いという統計もあるので、実戦では刀の名人よりも大きな戦力になり得るのだ・・・ということを、注釈としておきたい。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。2月8日は「衆院選開票速報2026」放送のため休止。2月15日放送の第6回「兄弟の絆」では、秀長が大沢次郎左衛門の無実を証明するために奔走する様子が描かれるとともに、信長の過去の因縁が暴かれる。

文/吉永美和子

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