「全然飽きひん」震災から31年…神戸のライブハウスは『満月の夕』で眠らずに朝まで踊る

「阪神淡路大震災1.17のつどい」に「減災ボーイズ」らの姿も。「朝まで過ごせる居場所を作って、みんなで想いを共有して、31年目の1月17日5時46分を迎えたかった」と平林さん(2026年1月17日/東遊園地 Lmaga.jp編集部撮影)
神戸には、阪神・淡路大震災をきっかけに生まれ、今も大切に歌い継がれる2つの歌がある。ロックバンド・ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬氏とヒートウェイヴの山口洋氏が共作、数多くのアーティストがカバーする『満月の夕(ゆうべ)』。そして、当時神戸の小学校に勤務していた臼井真先生が作詞・作曲し、「神戸市歌」として行事などで歌われる『しあわせ運べるように』。今回は『満月の夕』とともに神戸で震災31年目をスタートした人たちの姿を紹介したい。

◆ 神戸のライブハウスで『満月の夕』の歌詞「眠らずに朝まで踊る」を実践

2026年1月17日5時46分、阪神・淡路大震災が発生して31年目の朝。「東遊園地」(神戸市中央区)で開催された追悼行事『阪神淡路大震災1.17のつどい』を訪れ、手を合わせる20名ほどの集団がいた。ライブハウス「太陽と虎」(神戸市中央区)に集い、深夜0時から朝まで夜通し『満月の夕』を歌い続けていたアーティストや観客たちだ。
震災発生直後から、仲間とともに被災地慰問ライブを行ってきた中川敬氏が、被災者たちとともに時間を過ごす中で「2月14日の満月の日の翌日、一気に書き上げた」(▶2025年掲載インタビューより)と話す、この曲の歌詞の一節「眠らずに朝まで踊る」。それをライブハウスで実践しようと『阪神淡路大震災から31年 「1.17 満月のつどい2026~眠らずに朝(5:46)まで踊る~」』が直前まで開催されていた。

このイベントで、みみみ食堂、みなとまちヨネダ、Hyuga、LOCANDA、イワタショウゴ、ケンオガタ(セックスマシーン)の6アーティストが『満月の夕』を披露し歌のリレーを行った。最初と最後は『満月の夕』を出演者とイベント参加者一体となってシンガロング。その間には、ライブ以外にも、ラジオで下津光史(踊ってばかりの国)の『満月の夕』をオンエアー、トークコーナーやアイアムアイのFILM LIVEを流すなど、休憩も挟みながら眠らずに朝まで歌い踊り続けた。

そのまま、演者と参加者みんなで連れだって歩いて東遊園地へ。地震発生時刻5時46分に黙とうをし、その後はそれぞれの1月17日を過ごす形に。参加者のひとりは「『満月の夕』一晩で10回くらい聴いたけど、全然飽きひんかった!もっと!と思うくらい。ほんまにええ曲やと思っていたけど、ますます好きになった」と話す。

◆ 震災の教訓を若い世代にも…方法模索する中で音楽を通じ、入りやすく
このイベントを企画したのは自称「減災ボーイズ」。メンバーは、ライブハウス「太陽と虎」を運営し、毎年神戸で開催される国内最大級のチャリティーイベント『COMING KOBE』の実行委員長でもある風次さん、上田佑吏さん。そして「人と防災未来センター」(神戸市灘区)の企画ディレクター平林英二さん。阪神淡路大震災の復興支援に対する神戸からの感謝の想いと、震災を風化させずに語り継ぐことを目的に開催する『COMING KOBE』はじめ、さまざまな取り組みを行っている。

風次さんは、震災を経験。1月17日にはやはり特別な感情を持っている。「大晦日から正月よりも、1月16日から1月17日に変わる瞬間のほうが『特別な日』という風に思っていて。毎年このタイミングで、ようやく年が明けた、一年を乗り越えたな、という気持ちが湧く感じですね」と話す。
「東遊園地から帰ってきた参加者から、ちょうどいいイベントでした、と声をかけてもらった。確かにこんな『つどい』はないかな…。追悼式典は当事者以外や、震災を知らない世代には間口が狭い、という人もいる。『満月の夕』を歌い継ぐことで、音楽を通じて入りやすく、いいバランスで想ったり考えたりを、楽しみながらできる夜になったんかなと思います」

◆ 震災の悲しみを、人はどう乗り越えていくのか…『満月の夕』とともに生きる
ガガガSP、BRAHMAN、あいみょん、二階堂和美など、さまざまな世代、ジャンルのアーティストたちがカバーするこの楽曲。今回のイベントでも、はじめてこの曲に挑戦したというアーティストもいたと言う。

平林さんは、「震災を経験しているかどうか関係なく、神戸にいる人間は震災があったことを無視できない。今回出演した若いアーティストたちもそう。この曲には多くの人が亡くなった震災の悲しみを、人はどうやって乗り越えていくのかが描かれている。だから、つつましく歌えばいいということでなく、歌詞の通り踊りながら歌ってもいいと思う。歌を通じて、震災を語り継ぎ、自分たちの日々の過ごし方を考えるきっかけになれば」と語る。

風次さんも「今回たどたどしい『満月の夕』も、しっかり自分のものにしている『満月の夕』も、アーティストみなそれぞれの歌ですごく良かった。作者の中川さんは、『満月の夕』は鎮魂歌じゃないねん、あの曲はダンスミュージックやからな!』と言ってました。私もそう感じていたので、生きてる事に感謝しながら、眠らずに朝まで踊りました。来年2027年の1月17日は土曜日、きっと眠らずに朝まで踊っていたいと思います」と話す。これからも『満月の夕』は歌い継がれていく。
取材・文・撮影/Lmaga.jp編集部
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