元宝塚 紅ゆずるが「姫」だけにとどまらない役で、懐かしい大阪の劇場へ帰ってくる

『姫が愛したダニ小僧』では、老婆役として車椅子での登場もあり
宝塚歌劇団星組トップスターとして伝統の枠におさまらない幅広いステージを届け、2019年に退団後も舞台や映像のオファーが絶えない紅ゆずる。大阪出身の彼女が、大阪国際文化芸術プロジェクトの一環として上演される『姫が愛したダニ小僧』(1月9日~18日)に主演する。「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)での開幕を目前に控えた紅に、年始の単独インタビューを敢行。
劇作家・後藤ひろひとが手掛け、1998年に初演、2005年に再演された本作で、自ら「すみれ姫」と名乗る老婆として登場する紅。「姫」はかつて恋に落ちた「ダニ小僧」に再び会えるのか――。奇想天外なファンタジーに挑む想いや、お正月の意外な気分転換など、明るく語った。
取材・文/小野寺亜紀
■ 2026年幕開けの意外な過ごし方
――年末は詩楽劇『八雲立つ』(12月29日~31日)にご出演でしたが、お正月はどのように過ごされましたか?
元旦から4日までお休みをいただき、久しぶりにゆっくりお正月を過ごしました。大阪の実家に少し帰り、家族と一緒にテレビで歌舞伎を観たりして。私は歌舞伎が好きで、その世界に浸っていると居心地がいいというか、鳴物の音に落ち着くんです。それに本を読むのが好きなので、気になっていた(発明家の)ニコラ・テスラについてずっと調べていました。
――なぜニコラ・テスラに興味があったのでしょう?
エジソンとニコラ・テスラは「電力戦争」を繰り広げ、彼は勝ったのですが、孤独な最期を迎えたそうです。「彼の何があかんかったのやろう?」と、いろいろ調べたくなって。もちろん今は『姫が愛したダニ小僧』の台本も手放せないのですが、気分転換に彼についての本を読んでいました。
――お正月から知的なセレクトですね。
全然知的ではないですよ(笑)。エジソンは「1%のひらめきと、99%の努力」と言っていましたが、ニコラ・テスラは「99%の直感と、1%の努力」みたいなことをおっしゃっていて、真逆なんです。彼は、顕在意識が強く働いている間はなかなか良いものが浮かばず、潜在意識が優位になる寝る直前の3分ほどにひらめいたことを一気に書き出し、それをつなげていき、20世紀最大の発明をしたと言われています。
私も寝る前に、いいひらめきがないかなと! 直感力をアップさせるために、日頃どんなことをすればいいのか探っています。
――それはお仕事にもつながりそうです。
やっぱり芸術は、人の心に訴えかけるものなので。たぶん今の仕事をしていなければ、そういうことも調べないと思います。

■ 宝塚を卒業した2019年以来のシアター・ドラマシティ
――お休みの後、劇場入りをされて現在『姫が愛したダニ小僧』の舞台稽古中です。いよいよ1月9日に開幕しますが、今の心境は?
まず「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」が、6年以上前の『鎌足−夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し−』以来で、久しぶりなんです。
――星組トップスターのときに中臣鎌足を演じられた、日本物のお芝居ですね。
舞台から客席を見る景色が変わっているというか、感覚が違うように思えて。男役ではないので、きっと自分の見せ方が変わっているからだと思います。今回、私は最初「老婆」なのですが、老婆の役なんて初めて。そこから一気に変身し、若すぎるぐらいの「姫」になります。15、16歳ぐらいなので、かなりキツイです(苦笑)。さらにもう一段階衣装替えがあります。

――3段階も変化があるとは、大きな見どころですね。
私は宝塚の現役中も、すごく若い役をやることが多くて。たいてい子ども時代は下級生が演じ、大人になってから主演の人が登場することがほとんどですが、『鎌足――』の時もそうですし、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』も16歳から演じていました。
――そうでしたね!
なぜか「若い役をさせられがち」なんです(笑)。視覚的にもお客様を楽しませられたらと思い、自分でアクセサリーを探しに行きました。もちろん衣裳スタッフの方が用意してくださるのですが、宝塚では自分でアクセサリーを準備していたこともあり、どうしても自分でやらないと気が済まないところがあって。選んできたものを、「もしよければ、パーツを分解していただいても構わないので、使ってください」とお渡ししました。それが衣裳をはじめ、さまざまなところで活かされています。「老婆」の時は、ノージュエリーです!
■ 笑いと感動が交差する名作の世界へ

――後藤ひろひとさんとは、2025年2月上演の『FOLKER』以来、早くも再タッグとなります。
ありがたいなと思います。最初に『姫が愛したダニ小僧』の台本を読んだとき、爆笑しました! これはネタバレになるのであまりお伝えできないのですが、大阪の方はこの舞台に盛り込まれている演出に驚きながら、きっと楽しく盛り上がってくださると思います。演じる私たちも毎日スリリングですが、心を強く持って臨みたいです。
――それは楽しみです。『FOLKER』は死刑囚のフォークダンス・チームが登場する舞台でした。
前回は、それまで一度も演じたことのないタイプの役で、正直どうしたらいいのかもわからなかった。でも今回は、みんなで舞台を作り上げていく感覚があって。新しいメンバーもいらっしゃいますが、知っている方が多いというのは、私にとってすごく大きいです。

――『FOLKER』で共演された男性ブランコの平井まさあきさん・浦井のりひろさん、梅澤裕介さん(梅棒)もご出演されます。
とても安心感があります。実は、かなりの人見知りなんです。信じてもらえないんですけど(笑)。こうやってお話を聞いてくださる雰囲気だと話せるんですが、距離を感じると、こちらからはなかなか話しかけられなくて。
――そうなのですね。前回は死刑囚のお役でしたが、特に大変だった点は?
周囲を最初は強く拒む人物だったので、役を引き出すために、あえて皆さんと距離を置いていた時期もあって。稽古中は本当にしんどかったです。最終的に皆さんと仲良くなれましたし、舞台に上がれば全然大丈夫でしたけど、稽古中はやはり模索しました。
(セットの構造から)「見切りを気にしなくていい」と言われたことも衝撃でした。見切りを気にしない演劇なんて、今まで経験がなかったので。「誰に、どうやって芝居をしたらいいんだろう?」と、ずっと手探りでしたね。しかも大王(後藤)が信頼している役者さんたちは、すぐにそれを受け入れ、進んでいかれるので戸惑いました。

――今回は一転して、ファンタジーの世界ですね。
私はそのファンタジーの世界に浸っていていい役で、無知でピュアな女性です。幼いときに出会った「ダニ小僧」をひたすら想っているのですが、それが恋なのか愛なのか、本人もわからない。私は恋よりもうひとつ深い想いが、愛だと思うんですね。「すみれ姫」がお城以外で初めて心通わせた人が、「ダニ小僧」だったと思うから、恋だと勘違いしているのかも。そのくらいの感覚でいいと思っています。人としてのつながりはしっかり伝わってほしいけれど、ラブストーリー一色ではありません。
――作品全体の魅力はどんなところに?
状況そのものがとにかくおもしろいんです。「ダニ小僧」を一緒に探す愉快な仲間たちは、同じ方向を向いているけれど、それぞれ個性が強すぎて、まとまっているようでまとまっていない。そのバラエティの豊かさなども魅力だと思います。
――最終的に、観客にどのような舞台を届けられたらと思いますか?
何も考えずに、ただ楽しんでほしいですね。「何も考えない」というのがポイント。ミステリーのような部分も最後はすべて忘れて、ただ物語の状況を楽しんでいただけたら。お正月明けにぴったりの舞台です。観るというより、一緒にその空気を作ってもらう感覚で、スリルも含めて楽しんでいただけたらうれしいです。
◇ ◇
『姫が愛したダニ小僧』は「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」で1月9日~18日に上演。全席指定7000円。チケット発売中。
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